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圧縮RAW?X-OCNって知っていますか?

(画像出典元:SONY BURANO Web Siteより)

NikonがREDを子会社化した事で、動画圧縮RAWのカメラ内部収録にまつわる話題に再び注目が集まっています。ただ一口に「圧縮RAW」って言っても各社からいろんなものが出ていて、中には「それはRAWなのか?」「一部デモザイクってどういうこと?」といったような話も出てきたりします。

まず現状でカメラ内部で収録できている動画圧縮RAWとして挙げられるのは、RED社のRED CODEをはじめ、CanonのCinema Raw Light / Canon RAW、NikonのN-RAW、Blackmagic Design社のBlackmagic RAW、そのあたりかと思います。

現状で動画圧縮RAWを内部収録できていない何社かに関しては、外部機器を通して収録できるRAWがあり、クリエイターとって身近なのは先述したBlackmagic RAWかApple社のApple ProRes RAWの2つかと思います。そんな中、自分は「X-OCN」というフォーマットに以前から注目していました。

みなさんはX-OCNを聞いた事がありますか?今から約8年前になる2016年にSONYが開発した次世代の収録フォーマットです。話によれば、RAWよりはるかに小さい容量で16ビットシーンリニアを収録できる、それだけ聞くと夢のようなフォーマットです。

しかしながらそれほど話題にならず、自分の周りでも「X-OCNで全編撮ったよ」という話を聞いたことがありませんでした。もっともX-OCNはかなりのハイエンド機でしか対応しておらず、NETFLIX等では時々X-OCNで撮られていると聞いたことがありますが(NETFLIX納品フォーマットとしても記載されている)自分のようなビデオグラファーレベルに情報が落ちてくるわけもなく。

ところがここ最近、再びX-OCNの文字を目にすることが多くなってきました。直近ではDaVinci Resolveのアップデートで「X-OCNのトリムに対応した」というものがありました。そこでもう少し情報を掘っていくと、去年11月にSONYさんからX-OCNのホワイトペーパーがリリースされていました。その中の一部を抜粋します。

「2016年、ソニーは新しい収録フォーマットX-OCN(eXtended tonal range Original Camera Negative)をリリースしました。これはソニーのオリジナル圧縮RAWフォーマットです。(中略)X-OCNは、低データレートで16ビットのパワーで妥協のない画像キャプチャ性能を提供します。ソニー独自のアルゴリズムを利用して、カメラのオリジナル画像データを処理します。」(中略)10ビットおよび12ビットフォーマットをはるかに超える16ビットX-OCNは、カラーコンポーネントごとに65,536の色調グラデーション、または280兆を超える個々の色合いを記録します。これは究極のグレースケール表現であり、グレーディングの極端な繊細さのための巨大なパレットを作成し、カラリストや編集者にとってはるかに大きな柔軟性を生み出しています。

SONY X-OCNホワイトペーパーより(自主翻訳)

これを見て、X-OCNは結局、圧縮RAWなの?と思いました。これまでSONYはX-OCNのカメラ内部収録をせずPMW-F55/F5も初代VENICEもAXS-R7という外部収録ユニットで対応してきました。当初その理由としてSONY側は「レコーダーが別体になっていれば、次世代のカメラにも使える、ユーザーの投資のメリットが出る」と説明していました。自分はこの時、妙な勘繰りをした記憶があります。他に理由があるのではないかと。

出典:SONY VENICE Web Siteより

それが2021年発表のVENICE2や去年発表されたBURANOでX-OCNの内部収録対応していたのに気づきました。(BURANOはX-OCN LTのみ)

果たしてX-OCNとはどんなフォーマットなのか?圧縮RAWって書いてあるけど、REDのパテントに触れていたのなら、REDに提訴される可能性もあったろう、そういう意味では「圧縮」以外に何かしら処理が加わったフォーマットなのか?とか、素人ながらいろいろ考えてしまいました。

そこで、あらためて去年リリースされたホワイトペーパーを見てみると、

露出、色空間、LUT、ガンマをベイクインする(画像処理する?)代わりに、X-OCNはこれらのパラメータを設定(メタデータ?)としてキャプチャします。このプロセスは完全に非破壊的であり、元のセンサーデータの可能性を最大限にポストプロダクションに提供しますが、効率的なファイルサイズという利点があります。その結果カラリストや編集者に従来のビデオよりもはるかに大きな柔軟性を与えます。(中略)X-OCNは画像圧縮の一部としてウェーブレット変換を採用しており、視聴パフォーマンスに大きな柔軟性を提供することができます。あまり強力ではないラップトップコンピュータを使用する必要がある場合でも、階層的なデコード機能のおかげで、アプリケーションソフトウェアで1/2または1/4の解像度(またはサポートされている場合はさらに少ない)を選択することで、X-OCNクリップをリアルタイムでスムーズに再生できます。

SONY X-OCNホワイトペーパーより(自主翻訳)

読んでいくと、Blackmagic RAWにとても似たものを感じます。Blackmagic RAWの場合は「一部デモザイク」により、通常のRAWはソフトウェア側でデモザイク(ディベイヤ)するのに対し、ハード側(カメラ側)でその一部を負担する事で、ソフトウェア(DaVinci Resolve)での快適な再生環境を提供する、というものでした。そして各解像度にデコード品質を下げられる部分も同じです。現にBlackmagic RAWは、RAWと見ればかなりコンパクトな容量で収録できる上に動作も非常に軽く、RAWから作品を作りたい思っているクリエイターには理想的なフォーマットに感じました。

では、X-OCNはどうなのか?そもそもSONYのミラーレスユーザーにどこまで内部収録RAWを欲している人がいるのか?という話もありますが、あくまで機材ヲタの側面からあえてこの話題を掘ってみたいと思います。

まず、RAWに限りなく近い圧縮RAW?であるBlackmagic RAWとX-OCNの収録ビットレートを比較してみます。ただしメーカーから公開されているものは、解像度およびフレームレートがそれぞれ異なるので、あくまで目安として眺めていただければと思います。

※Blackmagic RAWはメーカー公表値のMB/sをMbpsに換算して表記

ビットレート(収録容量)だけ見れば、X-OCNもBlackmagic RAWに引けを取らずコンパクトに感じます。一方でX-OCNの動作の快適性やグレーディング耐性は使った事がないので分かりません。いずれにせよRAWと見た場合、互いにおどろくほどの軽さです。

X-OCNは16bitリニアであると書かれていますが、Blackmagic RAWは12bitです。ただ一部カメラで収録したBlackmagic RAWもDaVinci Resolveに展開した段階では16bitと表記されます。このあたりは、どこまで実階調が違うのか、どこまでにグレーディング耐性に影響するのかは正直わかりません。そもそもそんなにコンパクトにしているのになぜ16bitもの情報量があるのか?どこかで対数計算による階調の圧縮(リニア-Log化)がなされているのではないか?それを再度ソフトウェア側で単にリニアに展開しているのではないか?、これも完全なる素人の理解によるものです。どなたか、このあたりに明るい方がいれば、至極わかりやすく解説いただけると嬉しいです。

さて、これがBlackmagic RAWのように、ある意味都合のいいフォーマットだとすれば、FX9/6/3への内部収録や、それこそαシリーズ等のミラーレスレベルに落ちてくることはないのだろうか?そうなるとCanonやNikon(&RED)と並んで、面白い展開になるかもと勝手な妄想をしています。

とはいえ自分が愛用しているカメラはLUMIXのためX-OCNは遠い存在ですが、SONYユーザーはどう見ているのか、話題にものぼらないので、あえて機材ヲタの自分が記事に取り上げてみました。X-OCNって、どうなんでしょう?

今回も最後まで話にお付き合いいただき、ありがとうございました。


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