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これでいいかも?次世代の超コンパクト音声収録セット

叫び声から囁き声まで、舞台の音声収録は鬼門

Akiraxeです。自分はかれこれ20年以上にわたって舞台撮影、主に演劇を定期的に撮影してきました。一口に舞台撮影と言っても劇場の大きさや内容により、都度機材が変わったりしますが、以前は大きなビデオカメラを4台、ガンマイク(例えば業務でお馴染みのMKH416など)を汗だくになりながら舞台の数カ所に設置して、音響さんからいただくLINEとMIXするなどして多少大掛かりな撮影をしていたものです。

大きな劇場での撮影では、依然そのような撮影が求められることもあるかと思いますが、こと自分の最近の撮影では、収容人数100名前後の比較的コンパクトな小劇場が多く、機材も想像を超えるくらいコンパクトになっています。

今回はLUMIX S5/S5IIの2CAMのみ。ともに4K24p撮影

(以前、自分の個人YouTubeチャンネルで撮影スタイルを紹介しています。よかったらご覧ください。)

高画質・高画素のミラーレス一眼による動画撮影で、4Kはあたりまえ、最近では8K撮影なんてのも気軽に出来てしまう昨今、映像に関しては機材含めてコンパクトでシンプルな装備でも満足いく時代になったものの、現在でも悩ましいのが「音声収録」なのです。

舞台、特に演劇の撮影をした方であれば、音声収録がいかに難しいか実感していると思います。役者の叫び声、爆音とも言えるSEや音楽、一方でささやくような小さな声や物音。音のダイナミックレンジが非常に広い舞台の音声収録は一筋縄ではいきません。これまで自分はZOOM H5というXYマイク付きの音声録音機を舞台ツラに吊るして、H5のバックアップ記録(通常のレベルと-10dB下げた音を同時記録)でなんとかやってきました。

ただ、やはり役者の叫びから、ささやく音までしっかりと映像に収めるには限度がありました。音割れさせず収録するにも、とても小さな声が聞き取りにくくなる。小さな声を編集で持ち上げると、「サー」というベースノイズも目立ってくる。なにより撮影前のボリューム調整の見極めと、編集時の音声調整がものすごく骨の折れる作業でした。

そして最小で最大の機材現る?

 前フリが長くなってしまいましたが、先日とある演劇撮影で試した、超コンパクトな音声収録セットが予想を超えるパフォーマンスだったので今回のnoteにて紹介したいと思います。それがコレです。👇

「こんなんでいいの?」と若干心許なくなる感じですが、結果として必要十分でした。収録自体はZOOM F2(BT)という32bit float収録可能な超小型音声収録機。そのInputにDeity D4 Miniという、これまた超小型単一指向性マイクロフォンを入力。たったこれだけでかなりクリアで明瞭な舞台収録ができました。

ポイントはなんといっても「32bit float」です。これがなんなのか?という方は、友人のギュイーントクガワさんがとてもわかりやすい解説をしてくれているので、ぜひ参考にしてみてください。

ZOOM F2(BT)はボリューム調整はありません。つまり収録前のレベル調整は必要ないという事になります。代わりに32bit floatといった広大なデータに、広いダイナミックレンジの音声をすべて収録してしまい、編集時にノーマライズする事で意図通りの音声レベルに整音する、というものになります。映像で言えば、RAWやLog収録の考え方に似ています。

実はZOOM F2(BT)は1年以上前に購入したものだったのですが、メーカーの生産が遅れたため、届いた時点で使う機会を逃し、ほぼ新品状態のまま会社に眠っていたものでした。今回ふと思いつき、演劇の収録でどれくらいのパフォーマンスを得られるのか知りたくて思い切って使ってみました。

忘れかけていたF2BT(BTとはBluetooth内臓モデル、スマホから操作可能)

ZOOM F2(BT)に入力するマイクは悩みましたが、主に自分の屋外LIVE配信で使ってきたDeity D4 Miniという小型マイクなら、小屋の規模としてもちょうどいいのではないか?という事で今回の組み合わせになりました。Deity D4 Miniは単一指向性ながらスーパーカーディオイドで中央のみならず比較的広範囲に音を拾ってくれます。またLIVE配信時でも感じていた事ですが、思いのほか感度も良く、小さな声でも時にびっくりするくらい明瞭に拾ってくれているという印象もありました。

なお、ZOOM F2とDeity D4 Miniをできるだけコンパクトにまとめたかったので、以下のシューマウントとマジックアームを利用して舞台ツラのバトンから吊るしました。

なお、F2をどうやってシューにマウントしているのか?という質問をTwitterで何人かの方に質問されましたが、普通にF2の裏についているクリップをそのままシューにグっと押し込んで固定しています。

ボリューム調整もいらないので、ただ設置し、あとは客入れ前にRECして終わりでした。

客席の一番前方の頭上のバトンから吊り下げ、あとは何も考えずRECするだけ。

正直言えば、収録直前に「本当にこんなんでイケるのか?」という不安はありました。(万が一のためにバックアップの音声収録は別にしていました)不安は主に以下のつ

👉 不安ポイント(1)

Deity D4 Miniで、しかもピンジャック接続、持ち上げた際ベースノイズはそれなりに上がってくるかも?

👉 不安ポイント(2)

叫び声がえげつない、かつ舞台ツラに釣っているので、32bit floatもってしても音割れが起こるかも?

結論として、これらの予想はいい意味で裏切られました。まず、今回のお芝居に限っては、大きな叫び声や爆音でもまったく音割れせず、ささやきに近い声は、編集時にグっと持ち上げたとしても、ベースノイズは多少持ち上がってくるものの、予想をはるかに下回るものでした。え?もうこれでいいのではないか?十分ではないか?というかすごいのではないか?と心が躍りまくりました。

DaVinci Resolveでの整音

ZOOM F2(BT)で収録した48K 32bit floatをそのままタイムラインに並べてみると、通常の音声の波形はほぼ見えません。一瞬「レベル低っ!」って思うかもしれません。ただこれは仮の姿で、映像で言えばLogの画が眠い状態と一緒です。

無調整でタイムラインに並べた状態のF2BTの音声(WAV)
インスペクターでボリュームを上げると、何もなかったと思われる部分にもしっかりとした波形が!

一方で叫び声の部分など、比較的大きな声の部分は最初から波形がしっかり見えています。しかも波形がまっ平になったりせず(音が割れて潰れてしまっている状態)キザギザの綺麗な波形で表示されています。この状態から、部分的に音を持ち上げたり、下げたりしてノーマライズしていきます。

といっても、1時間を超えるようなお芝居で、いちいちその作業をしていると、かなり大変ですよね。あくまで「ある程度のクオリティーで良ければ」という事をお断りした上で、便利なのが、DaVinci Resolve18から備わった「Dialogue Leveler」です。小さい音声を持ち上げ、大きな音声は下げる、というノーマライズ作業をある程度自動でやってくれます。

Fairlightページでトラック全体にDialogue Levelerを適用。上げ下げをある程度自動で行ってくれる

今回収録した映像はすぐ次の週に配信に乗せなければならず、かなり急ぎ案件だったので、音声調整に時間をかけれらず、「Dialogue Leveler」をデフォルト状態で適用して書き出しました。もう少し詳しく言えば

1)エディットページにて、ZOOM F2(BT)の音声を+5dBアップさせた。

2)Fairlightページで音声トラックを+10dBまであげた上で、トラックエフェクトの「Dialogue Leveler」を適用

基本はこの2つだけで終わっています。(よっぽど聞きづらいセリフがあった箇所のみ、数カ所、エディットページのキーフレームで音を持ち上げています。)

トラックエフェクトは上記の部分の「Track Effects」にチェックすると有効になります

シビアに聴けば、音声がふわふわと不自然に上がったり下がったりする雰囲気は若干ありますが、個人的にはすごく気になるレベルではないのと、「聞きとりやすく」という観点だけで言えば必要十分に感じました。

最後に、1つだけ注意点を言うとすれば、ZOOM F2(BT)はもともとラベリアマイク用のもので音声はモノラルです。ただ今回のお芝居ではセリフメインですし、個人的にセリフは真ん中から聞こえてくるのが聞きやすいと思っていたので問題ありませんでした。舞台が音楽ものやライブなど、ステレオを求めるならF3等のステレオ対応収録機を検討したほうが良いかもしれません。

最後まで読んでいただきありがとうございます。もし今回の内容がご参考になりましたら、記事にスキいただけると、とても嬉しいです。

今回の収録セットまとめ


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