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Libecのモノポッド「TH-M」は何がいいのか?

LibecのTH-M、去年のInterBEEではかなり念密にハンズオンさせてもらい完全に導入予定でしたが、なんやかんやで時間が経ってしまい、実際に導入したのは今年に入ってから。その後もコロナ外出自粛の中で完全に使う機会を奪われ、ようやく最近になって使い始めたので、今回はTH-Mの利便性について独自目線でレポートしてみたいと思います。

前身のプロダクトにあたるLibec HFMP(ハンズフリーモノポッド)は一世風靡した国産一脚。当時で言えば「完全に自立する一脚」として注目を集めましたが、今でこそ様々なメーカーが自立型モノポッドを出しているので、特別めずらしいものではなくなったかもしれません。

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ただ、そんな中でも自分がLibec推しなのは、フットで踏みやすい大型ロックペダルはもちろん、一脚の根幹となる支柱の剛性が高いこと。太くしっかりした支柱は、テレビ局のペデスタルを彷彿させるべく、なにより持ちやすいし、リフトしやすい。この部分は他のメーカーと一線を画す部分だと思います。

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たとえば自分の場合はSachtlerのFSB6を搭載し、カメラもURSA Mini Pro4.6kといった、そこそこ重量級のカメラで普通に使っていたりします。それだけ剛性が高い、という事。

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また室内等で、ありえない狭い空間での撮影を強いられた時などは、HFMPは大きな武器になってきました。

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三脚では今一歩引けないって場面でも、HFMPであれば引きが取れるしかも安定する。という場面も多々ありました。

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・剛性が高いHFMPゆえに出て来た不満点

一方で、HFMPにはいくつか不満が上がったのも事実。目立った事を2つ言うとすれば

1)太くてコンパクトではない、縮めた時が長いので運搬に不便

2)支柱が回転してしまうので滑らかなパンが出来ない。

1)は正直、剛性とトレードオフと思うのですが、個人的に困っていたのは 2)の支柱が回転してしまう部分で、HFMP+フルードヘッドの撮影時に少しカメラをパンしたい、と思ってもクルっとカメラが回転してしまいます。

もっともメーカー側からすれば、ここは完全に想定外だったかもしれません。そもそもこれまで一脚にカウンターバランスが備わっているような大型フルードヘッドを載せて滑らかなパンやティルトをする人など居ただろうか?(いや、いたかもしれないけど)ところが、HFMPはその安定性や剛性の高さから、比較的大きなカメラや大型フルードヘッドを搭載する人も出て来て(まぎれもなく自分もそうなのだが)そうなるとやはりそのまま滑らかにパンしたくなってしまう。この「想定外」の顧客欲求が不満となって出て来てしまうというメーカーにとっては悩ましい図式。

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・待望だった「パーフェクトロックシステム」

そこで、その不満点に応えるべく改良を重ね発表されたのが、今回導入した「TH-M」という訳です。TH-Mは「パーフェクトロックシステム」機構を採用し、ある程度強い力を加えても支柱が回転しなくなりました

正直、パっと見HFMPとTH-Mの違いはさほどありません。というかほぼ見た目一緒のため、完全にマイナーアップデート版という印象ですが、「パーフェクトロックシステム」は個人的にはかなり大きな変更点です

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フットペダル部分をよく見てみると、TH-Mには複数の溝が並んでおり、これがストッパーとなって支柱の回転を防いでいるようです。

TH-M KIT付属のLibec純正ヘッドTH-X(60mmレベラータイプ)であれば、フットペダルロック時は完全に支柱がホールドし、滑らかなパンが狙えます。ただSachtler FSB6の場合は多少オーバースペックのようで、トルク3といった、かなり粘りを効かせた場合は残念ながら溝が耐えられず回転してしまいました。一方、トルク1では余裕で、トルク2でも、ゆったりしたパンであれば問題なくオペレートできます。

・ネジ径を問わないヘッド取り付け部のギミック

TH-Mは、その他にもちょっとユニークな変更箇所があります。それはTH-Mのヘッド取り付けネジが3/8から1/4と径が瞬時に変わるところ。3/8の中に1/4ネジが埋め込まれていて、径に合わせて3/8ネジが下に引っ込むというギミック。

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一脚で多いのはリバーシブル仕様の取り付け部材を表裏で付け替える、というものだが、地味に手間でした。ネジ径を意識しないで、そのまま搭載できるのはユーザーにとっては便利でしょう。(もっとも自分はKesslerのKwikreleaseで脱着を管理しているので、基本3/8があればOKなのだが)

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余談ですが自分は上記の写真のように、SILKのレベラーの上にKesslerのKwikreleaseを搭載し、そこにSachtlerのFSB6を搭載するという変態仕様にしています。ここは真似しなくてもいいかもしれません(苦笑)。

・自立型一脚と三脚では用途が違う

三脚に比べて結局倒れやすいので自立型一脚は使わない、という意見もチラホラ聞きます。これは個人的には若干違和感のある意見で、適材適所ではないか?と思うのです。「自立する」という部分が行き過ぎた誤解を生んでしまっている気がします。三脚的に使うのは当然リスクが高すぎます。

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そもそものメリットは、レンズ交換時や、DSLRでは多いNDフィルター交換時など、一瞬両手を使いたい場面で、少し一脚から手を離しても大丈夫、とか、フットでロックする事で自立するのでシュート時の安定感が増す、といったところでしょう。自立したまま一脚から離れた使い方をするのは絶対にオススメしません。何かの際にはすぐに支えられる距離に居て、しばしの間に手放ししたい場面で便利に使うのが吉です。
特にTH-Mはその剛性の高さ、安定性から、Sachtler FSB6+URSA Mini Pro4.6kという重量級のものでも安定感があります。

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もちろんこのセットだと自立するには難がありますが、それでもフットでロックする事で、狭い場所でもカメラをある程度固定して、そのまま滑らかなパンやティルトも可能です。
もっともDSLRや小型のシネマカメラとの組み合わせでは、時に現場の撮影スピードはかなり上がります。三脚であれば、3本の高さをそれぞれ調節し、脚を広げる、という4つの作業が、立てて高さを調節する、という1つの作業で終わり。ラン&ガン&スティディを可能にするのがLibec TH-Mという訳です。

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以下は初期型のHFMPを導入し始めの頃に撮ったGH5のテストフッテージ。GH5はあらかじめ強力な手ぶれ補正が備わっていますが、長焦点レンズではさすがに揺れが目立ってしまう。この時は35mm換算で概ね200mmから時に300mm程度の、かなり長玉で圧縮効果を狙って撮影した映像ですが、HFMPはかなり良いアシストをしてくれました。

・高所撮影にも利用価値大のTH-M

狭い場所でかつハイアングルを狙いたい、という場面で、三脚をむりやりすぼませて高さを稼ぎ、なんとか撮影する、という場面が時々ありました。こういう場面でもTH-Mの利用価値は大きいです。

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TH-Mを一番伸ばすと180cmくらいまで伸びます。ヘッドの高さを加味すれば、概ね2m程度の高さにカメラを持って行き、その状態でパーフェクトロックを利かせれば滑らかにパンすることもできます。太くてしっかりした支柱ゆえに、こういう場面でも安定感があるのです。

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100均等で売っている結束用のマジックテープをポケットに忍ばせておくのもよい。フェンスや手すり等にマジックテープで結束することで、かなり安定したオペレートが可能になります。

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・今後の現場でさらなる利便性が期待できるTH-M

「パーフェクトロックシステム」によって、単に「フィックス」をアシストさせる用途から、さらにそのままパンやティルトできる可能性が広がりました。たとえば個人的にまず試したいのは、BMPCC4KとOlympus12mm-120mm/F4とのレンズの組み合わせ。自分のようなBMPCC4Kフリークなら、この組み合わせがテッパンだというのは周知でしょう。かなりよく「止まる」レンズです。ただ常にハンディではなく、ここにTH-Mを加わえたら、時に大きくアシストしてくれるのではないか?と期待しています。

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TH-M KIT付属のLibec純正ヘッドTH-Xは、このセットで概ねカウンターバランスが取れます。ヘッド自体も軽いので全体として移動がとても気楽です。

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なお、 KIT付属の純正ヘッドはザハトラーやヴィンテン、マンフロットなどのプレートも使えます。

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・まとめ

冒頭でも述べた通り今となっては海外メーカー含め多種多様のモノポッドが存在し、またそれぞれ便利な部分があると思います。中でも一脚のメリットの一つに「携帯性」というのは確実にあります。そういう方向から言えば、正直なところ、Libec TH-Mに携帯性は求められないでしょう。

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むしろ自分は、TH-Mは「携帯する一脚」と思っていません。では、どこがいいのか?と聞かれても、なかなか一言では答えられないもどかしさがありました。だから今回の記事を書いた訳です。ある意味、自分にとっては唯一無二の脚で、1本持っていれば時に強力な武器になる、というのは伝わっただろうか?

このご時世で残念ながら自分の現場もまだ限定的ですが、今後TH-Mを使う機会があれば、気づいたことなどまたレポートしてみたいと思います。


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