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ここ最近の意識高い系動画はなぜ4:3比率なのか?

ここ最近4:3比率の動画をよく目にします。「意識高い系」と言ったのは決して悪い意味ではなく、表現を都度吟味している動画作品という意味。

昭和から平成の途中まで、地上波放送の画面比率は4:3でした。地上波がアナログからデジタルに完全移行した際にテレビ放送の画面比率もすべて16:9になりました。

そして現在はテレビからネット動画やサイネージと多岐に渡り、画面比率はあって無いようなものに。

そんな折、ここ数年は「シネマティック⚪︎⚪︎」に代表されるように、上下を黒帯で隠し、擬似的に2.4:1などシネスコサイズに仕上げる手法が流行りました。つまり、映画のように見せるために、少し意識高めの動画はより横長の比率にシフトしていったのです。

ところが最近はまた4:3の比率の動画が増えているように思えます。自分はなんとなくこの現象にもやもやしていて、逆に4:3で仕上げることに嫌悪感さえ持つようになっていました。流行りに乗れない天邪鬼なんだと思います。

ただ、それは単純に流行りという言葉で終わらせていいのか?なんだかんだで久々に見る4:3の映像が妙に良く見える時があるからです。

役所広司さんがカンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を取って話題になったヴィム・ヴェンダース監督の「PERFECT DAYS」。自分はすでに3回も劇場に足を運んでおり、ヴェンダース作品を通ってこなかった自分だからこそ、純粋な気持ちでこの作品にハマってしまいました。そしてこの作品も全編4:3(1.33:1スタンダード)でした。

自分は昔から映画館でアドシネが終わって本編が始まる時に、スクリーン両サイドの黒カーテンが開いて、スクリーンが広くなる瞬間がなにより好きでした。

この所作が最近のシネコンではなくなってしまい、PERFECT DAYSに至っては4:3のためスクリーンがフルに使われず両サイドが余っている状態。初見の時これにはガッカリしました。

それが本編に没頭するにつれ、次第に4:3の比率が心地よく、愛おしく感じてきてしまい、なにより映画自体が良かったのもあるのですが、見終わった後にこの作品が4:3であってよかったとさえ思ったのでした。とても不思議な体験でした。4:3は単に流行りではなく、表現の一つと理解した瞬間でした。
(ちょうどこの記事を書いていた際、偶然にもinaho Filmの伊納さんが映画の比率について秀逸な動画を公開しておりました。とても参考になります!)

そういえば当時のテレビ放送に限らず、小型映画と言える8ミリや16ミリフィルムも4:3でした。(一部Super 16等を除く)そう考えると「よりパーソナルな感覚になれるものが4:3比率」とも思えます。

学生時代、卒業制作で撮った16mm作品「デーゲーム」より

ただ、ここ最近4:3比率の動画が増えてきた理由はいくつかあると思っています。それを自分なりに考察すると主に3つあり

  1. 横長や縦は既視感が増してきた → 飽き

  2. 写真の横構図である3:2の比率に近い → 表現

  3. ブラウン管時代を彷彿させる → 懐かしさ・記憶色

スクエア、という比率は近いようで、またそれは違う表現のように思えます。

先日、System5のLIVE配信で井上卓郎さんが、BlackmagicCinemaCamera6Kで全編3:2オープンゲートで撮った作品を流していたのですが「ここ最近はなぜかシネスコとかより3:2とかの方がよりシネマな印象を受るんですよね?」と話していて、自分も卓郎さんの作品を見て同じ事を感じたので、今回の記事を書くきっかけになりました。

オープンゲート6Kでフルサイズ3:2比率で撮影できるBlackmagic DesignのBMCC6K

自分にとって、結局シネマっぽい、映画っぽいとはどういう状態か?自宅の湯船に深く浸かりながらぼんやり考えていたのですが、ビデオ/フィルム、現実色/記憶色、はっきり/ぼんやり、リアリスティク/ノスタルジック、ぱっきり/しっとり、既視感/違和感、そんな言葉が浮かんできては消えていきます。

なかなか結論付けるのは難しそうです。ただ、最近4:3の比率を選択している方々の多くは、どこかに「シネマっぽさ」を求めている気がしています。これまでシネマティック表現で比率が横に伸びていったものが、いつしかブラウン管のテレビ放送の比率である4:3に回帰している現象です。それは上記に書いた3つの要素も影響している気がします。

余談ですが、これまで横長比率にするために上下黒帯をつける、いわゆる「レタボ」表現をいいことに、動画をトリミングしリフレーミングしたり、レタボにした部分に字幕やロゴ等を載せたりしていました。これが4:3仕上げになった場合、レタボで左右を切ることがあるのだろうか?と、余計な事を考えてしまいました。

4:3の比率の映像は今となっては確かに懐かしい、言い方を変えれば新鮮に見えるかもしれない。当時見慣れた4:3という比率が嫌いで(4:3はインターレースのテレビの世界という固定概念があったのかも?)シネマティックという言葉が流行る前から上下レタボで作品を作っていた自分が、一周まわって4:3で作品を撮る日が来るのか?こんな自分の感覚に、もやもやする日々です。

表現の飽和は回帰現象を起こし、やがてそれが流行していく。果たしてこれから4:3の映像が流行ってくるのか?今回も最後までお話しにお付き合いいただき、ありがとうございました!

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