こびナビと厚労省の関係を調べてみた件
さて今回はなにかと話題のこびナビです。結論から言えば「肝心なことは何もわかりませんでした」になります。
新型コロナワクチンの接種を推奨する活動をしている団体で、医師の有志がやっている、という建て付けです。Twitterなどでは「情報が安全に偏っており、適切にリスク情報を提供していない」みたいな批判があったりします。で、こびナビって「厚労省がお金をつけた事業なんじゃないか」と疑っている人を見かけました。どうやら発端はこれ。
ファクトチェックサイト「インファクト」の記事です。日本でコロナワクチンの接種が始まる少し前の2020年12月に厚労省が「新型コロナウイルス感染症のワクチンの情報提供に資するための国民の認識や意向に関する調査及び情報提供資材制作一式」という事業の入札を公表し、ターギスという医療を専門に扱う外資PR会社が落札。このターギスが医師のインフルエンサーを使った普及活動を提案していたという内容。このインフルエンサーが「こびナビではないか」という推測が働いたようです。
正直、この記事自体がこびナビを意識して書かれたような気がしたりもしました。実際のつながりがわからなかったため、あいまいな書き方しかできなかったのではないかと勝手に推測。では、公開情報からちょっと調べてみましょう。まずは当該の入札情報です。
https://www.mhlw.go.jp/sinsei/chotatu/zuii/dl/20honsyo_ippan_03.pdf
厚労省の公開情報にありました。この中で落札者がターギスをみてみると。
104ページにありました。ちなみに似たような資料は他にもあって、
https://www.mhlw.go.jp/sinsei/chotatu/zuikeisinsa/dl/ippan_kaikei_211126_1.pdf
これだと4ページ目で、入札に参加したのは2社ということも分かります。で、蛇足ながら気になるのは落札率の高さ。落札率とは、予定価格に対して入札した金額の割合なのですが、98・1%はかなり高い。入札のやり方にもよるので一概には言えませんが、一昔前は95%を超えると談合、なんて言われることもありました。落札額は977万円ですね。ちなみにターギスが参加した他の入札を経産省のgBizINFOでみてみました。
3件ありますね。すべて厚労省の案件で、上から2番目が今回の案件と言うことになります。試しに登記簿もみてみましたが、経営陣は全員、外国の方のようです。医療系に特化したPR会社のようですね。
では、こびナビについて見ていきましょう。現在のこびナビのサイトには運営者情報が明示されていません。
ただ、国立国会図書館の公的サイトアーカイブ事業WARPには昔のこびナビサイトが保存されていて、そこには運営会社として「一般社団法人保健医療リテラシー推進社中」の記載があります。
ちなみに、こびナビに関する商標が2件ほど登録されていて、その申請者も同じ保健医療リテラシー推進社中になっています。
では、この保健医療リテラシー推進社中の登記を取ってみましょう。それがこちら。
本来なら事務所の住所は隠す必要はないのですが、代表の吉村健佑氏の自宅っぽいので塗りつぶしました。それから役員がこちら
こびナビの運営メンバーが名を連ねてます。ただ、肩書が監査の方だけ、こびナビメンバーに名前がありません。ネット検索で調べてみたのですが、わりと同姓同名が多い名前で、どんな方なのかは分かりませんでした。医療関係の案件を手がける弁護士さんが引っかかったので、その方かなぁと勝手に妄想した程度です。で、気になったのがこれ。
上は入札の契約日。下は保健医療リテラシー推進社中の設立日です。契約の約2週間後にこびナビが設立されています。そして設立から5日後には記者会見をしています。
医師の有志による手弁当のプロジェクトにしては、極めて事前準備が精緻という印象です。一般社団法人を設立し、記者会見、公式サイトの立ち上げ、商標登録、資料作成といった事務作業を考えると、大学や病院に勤務しながら片手間で準備するのは極めて困難な気がします。ちなみにこびナビはPRTIMESにも登録しています。
動画の作成も外部のサポートを受けているようです。
PR会社とも契約しているフシもあり、初期の活動資金として数百万円はかかっているように思います。もちろん、参加した医師が自腹で支払った可能性もありますが、何らかの資金提供があったと考えるのは果たして不自然なことでしょうか。あと、こびナビの運営メンバーだけでは手が足りているとは正直、思えません。それなりの事務スタッフが(外注を含めて)いるはずです。ちなみに、一般社団法人には決算公告が義務づけられていますが、こびナビは
事務所、恐らく代表の吉村氏のマンションでの開示ということになります。これ、一般の人が閲覧するのは極めて難しいと思うのですよね。こびナビはクラウドファンディングで資金集めもしています。
https://readyfor.jp/projects/cov-navi/comments
ちなみに、クラウドファンディングの締め切り日なのですが
ターギスの契約終了日と同じだったりします。画像は上のインファクトのサイトから。もちろん、これだけでは何も言うことはできませんが。
クラウドファンディングで一般の方から資金を集めた以上、組織運営の成り立ちといった内情についてもきちんと報告すべきと思います。一般社団法人の決算公告もそうですが、初期の運営資金についてはもっと説明があってもいいのではないか、と個人的には考えます。ちなみに、こびナビは厚労省から表彰されてたりもします。
こびナビの吉村代表は、厚労省で働いた経験があるようです。医系技官ということだと思います。
厚労省で働いていたくらいですから、コロナやワクチンの担当者とは当然に面識があるでしょう。仮にそうした方が、厚労省からの資金でワクチン推進キャンペーンをしていたとしたらどうでしょう。すべて仮定の話ではありますが、厚労省によるステルスキャンペーンのように思えてきます。道義的な問題は発生しないのでしょうか。
また、上でも書いた通り、こびナビの情報は必ずしも正確なのか疑問も指摘されています。副反応を軽視した情報発信が目立っており、本当に国民がリスクベネフィットを考えるのに適切だったのか。いろいろ考えさせられますが、以上はオープンデータを基にした私の推測、あるいは妄想であることは重ねて強調しておきたいと思います。
私は本当に手弁当ですので(笑)、登記取得費用の足しに投げ銭で寄付いただけると助かります。