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「映像研」アニメには手を出せ!

「映像研には手を出すな!」という作品、皆さんご存知だろうか。ざっくりというとアニメ好きの女子高生たちが部活を作ってアニメを作るという話なのだが、これがめっちゃくちゃに面白い。原作も、アニメの初回放送時も話題になっていたし、アニメはその後も各種配信サービスで続々と配信されている。今回はこの作品の魅力を語りたいと思う。

この作品は漫画を原作とし、アニメ化、実写ドラマ・映画化と幅広くメディアミックスされている作品だ。今回はその中でも、個人的に特に傑作だと思うアニメ版について、主に語っていく。

ちなみにこのアニメ版、2021年10月24日19時から、NHK Eテレで再放送される。もし気になったら是非チェックしてみてください。

あらすじ

設定大好きな浅草みどり、アニメーター志望の水崎ツバメ、そしてアニメに興味はないけどお金が大好きな金森さやかの3人(後半にはもう1人増える)が高校で「映像研」を設立し、「最強の世界」を描きあげるアニメーションを作るために奮闘する!

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“オタク”なら必ず共感できる2人の職人

まず好きなのが、オタクなら誰でも胸をグッと掴まれる、創作物への愛情と熱量だ。

浅草氏は作品の舞台やメカ等の設定作りと考証、水崎氏はリアルな人体の動きに即した作画、金森氏は作品の宣伝と種々の交渉。映像研の3人は全員アニメ作りという一つの目標に向かいながらも、かなり個性が異なる(ちなみに●●氏という呼び方は、作中で映像研メンバーたちがそれぞれを呼び合う際の呼び方で、ファンもこれに倣って呼ぶ場合が多い)。

彼女たちの個性、特に浅草氏と水崎氏の作品への強烈なこだわりは、なんらかの「オタク」を自覚する人、つまり何かを熱烈に好きになったことがある人ならば、必ず自分の中に備わっているはずのものだ。それを存分に発揮して、自分にとって「最強の世界」を作り上げていく様がとにかく爽快なのだ。

この作品は確かにアニメ制作をテーマにしているし、実際アニメ制作の際の様々なこだわりなどを学ぶこともできる。だがこの作品を観ていて本当に心が動くのは、圧倒的なオタク度への共感であり、微に入り細を穿つその迫力であり、その熱量に触れた時の感動と畏怖なのだ。これはもう、1話を観ていただくだけですぐにわかると思う。彼女たちの熱量は、観ている側をとんでもないところまで連れていってくれるはずだ。その「とんでもないところ」こそ、彼女たちがいう「最強の世界」なのだ。

他の登場人物たちも強烈な熱量がある。後々映像研に参加することになる音響部の百目鬼氏や、ロボ研の小野など、キャラが濃すぎるやつばっかりだ。

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映像研を映像研たらしめる、敏腕プロデューサー金森氏

アニメや漫画などの制作の現場を描いた作品は他にもあり、それぞれに制作の苦労や喜びが語られる。その中で映像研の特徴は、プロデューサーである金森氏の存在だ。彼女はアニメ制作自体には全然興味がなく、金儲けの手段として浅草水崎両氏を結びつけ、アニメ制作を焚き付ける。ここだけ聞くと悪徳な感じがするが(というか実際観てもほぼ悪徳だが)、この金森氏の存在がほんと大事なのだ。

まず、説明役としての金森氏。前述したように金森氏はアニメに興味がないので、浅草水崎両氏の語りを聞く立場になり、自然と彼女たちのこだわりを引き出して観客に説明する役になる。映像研の運営だけでなく、話の展開も切り盛りしているのが金森氏だ。

次に、ブレーキとしての金森氏。浅草水崎両氏はとにかく盛り上がりすぎてしまうので、ややもすると観てる側も置いていかれかねない。その時にうまく引き戻してくれるのが金森氏である。まぁ、ブレーキというか、冷や水をぶっかけている感じはあるのだが笑。

さらには、シンプルにぶっ飛んだ金森氏。上二つの役割はいわば観客との繋ぎ役だが、そこで都合よく収まる金森氏ではない。ちび森氏(子供時代の金森氏)のちょっと切ないエピソードから連なる彼女のお金への執着や、真理をついた名言の数々、時折見せる悪いツラ、そしてよく寝てよく食べよく育ち、映像研随一の俊足と美脚を誇るという、こちらもてんこ盛りのキャラクターだ。要は彼女も負けず劣らずの個性のデパートで、バランサーなのに全然バランスを保っていないのである。そこが、この作品の突き抜けたところだ。

ここまででわかったかもしれないが、僕の1番の推しは金森氏だ。クールビューティなところも素敵だし、一歩引いた広い目線をとってくれる彼女がいるからこそ、安心して浅草氏、水崎氏と盛り上がっていられる。あと、実写版映像研を観た時に、金森氏役の乃木坂46梅澤美波さんにすっかりハマってしまったというのも金森氏推しの原因の一つである。

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「創作」のワクワクをそのまま映像化!

この作品の一番の魅力は「空想シーン」だ。例えば1話では、水崎氏が描いたメカに色々と設定を付け足し、完成したメカで空を飛ぶ……という妄想を繰り広げる。作中ではその妄想が、現実の場面からシームレスにつながって実際に映像化される。さっきまでちょっとした小さな部屋でアニメについて語り合っていたはずなのに、水崎氏のスケッチを発見した瞬間、メカのドックに3人が降り立って大空へと飛び立つ……というシーンになるのだ。これがここでいう「空想シーン」である。

その摩訶不思議な世界観自体が非常に魅力的で、かつ映像も現実パートと区別するためにちょっと淡く幻想的、音楽もエキゾチックな雰囲気になる。それがなんとも独創的で、観たことないような素晴らしさなのだ。

漫画版にももちろんこの創作シーンはある。そして漫画版における創作シーンの大きな魅力は、その情報量の多さ、それに付随する熱量の高さだ。主人公の浅草氏は設定好きということもあって、ちょっとした街やメカに対しても、しっかりと書き込まれた設定資料が示される。その濃度、愛が漫画版の魅力だ。

しかし正直にいえば、ストーリーを追いたい読者、特に初めてこの作品に触れる読者としては、その細かい設定を読むのはちょっと骨が折れる。その点アニメ版では、細かな設定を美しく迫力ある映像で見せてくれるので、非常に直感的に楽しめるのだ。そこが、映像研に初めて触れる人にアニメ版を推したい理由の第一である。アニメを見て映像研が好きになったら、漫画を買ってじっくりと読み込むのが個人的にはおすすめのルートだ。

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「なぜ創るのか?」に強くフォーカスした構成とオリジナルエピソード

アニメ版では映像研の電撃3人娘の「なぜ世界を作るのか(浅草氏)」、「なぜ絵を描くのか(水崎氏)」、「なぜ金を儲けるのか(金森氏)」というそれぞれの動機が強くフォーカスされる。

そのために、浅草氏の創作の原点となったエピソードが1話の冒頭に入ったり(原作では6話)、水崎氏の過去に関するオリジナルエピソードが描かれたりと、原作とは構成がちょっと変更になっているのだ。その構成変更やエピソードの挿入によって、テーマがはっきりと浮き彫りになる。そこも、12話と短いテレビアニメシリーズが、しっかりとまとまっている要因ではないだろうか。

また、浅草氏の監督としての成長も描かれる。そのためのアニメオリジナルキャラクターもいい味出してるなぁと思う。

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キャストがドンハマり

アニメといえば、もちろん映像と音、特に声だ。声優のキャストもアニメ化において非常に大事だが、この作品はメイン3人の声がビッタビタにハマっている。そこも素晴らしい点だ。

金森氏役の実力派、田村睦心さんはもちろんのこと、水崎氏役の松岡美里さんのキラキラしながらもグッと熱が入った時の演技はすごい。

でも、やっぱり印象的なのは、浅草氏役の伊藤沙莉さんだろう。ハスキーなところが浅草氏の雰囲気に非常に合っているし、時々あらわれる江戸言葉での台詞も似合っている。啖呵なんてもう凄かった。女優さんのお仕事がメインで、アニメ声優としてのお仕事は他に見たことがない(wiki情報では吹き替えはあるものの、アニメの声優はやはりやっていない)伊藤沙莉さんだが、どうやって彼女をキャスティングしたんだろう……。

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正直にいうと、この文章を書きながら「なんで俺は、一銭の得にもならないのにこんなの書いてるんだ……?」という気がしていた。だが、書き終えた今、この行動こそが映像研の魅力に取り憑かれた証だと思った。

例え得にならなかろうが、これだけの熱量を見せてもらったら、どうしても自分の中にも火がついてしまうのである。で、こんな作品を他の人にも是非観てもらいたい!観たことある人には俺の推しポイントを知ってほしい!!と思って、ここまで書いたのだ。

もちろん他にも語りたいポイントは色々あるが、これ以上の御託は結構。細工は流々、仕上げをご覧じろ!ということで、あとはぜひこの作品を楽しんでいただきたい。ではまた。


※アイキャッチ画像は、TVアニメ「映像研には手を出すな!」公式Twitterよりお借りしています

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