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ひとでなしの恋 [2023]

誰もが言葉を尽くし、かつてないほど世界は言葉で溢れた。
溢れかえった言葉は無数の境界線を引きながら、世界を鮮やかな虹色で塗りつぶしてゆく。僕らは何色かに分類されながら、この二値的な人間世界に生きづらさを感じている。

言葉とは本来、圧縮・還元が可能な計算記号である。詩や句はその顕著たる一形態であり、名前のない色や形まで含んだ滑らかな世界の抽象的記述に他ならない。
たとえば「恋」のような実質と物質との狭間に、それはある。
自己と他者、自然と不自然の境界を規定してきた言葉を解き、名付けられてしまった物事を80編の恋文詩に編み直してみる。

はたして「ひとでなし」とはなにものか。
名もなき情念は、演算の片隅でいまも息をひそめている。


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