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桃は、初夏の風情を伝える果物だが
梨もまた初秋を伝えるみずみずしいフルーツだ。

ビワを含めて濃すぎない(甘過ぎない)風流なフルーツの御三家がこの、桃、琵琶、梨である。

近年人気のフルーツにシャインマスカットというものがあり、マスカットもまた、この御三家に近い、甘過ぎない風流さがある。

巨峰は葡萄の王様で甘いが、ちと糖度が高すぎて風流さは薄い。

梨に似たフルーツで林檎があるが林檎は糖度の面では梨とそんなに変わらないのかも知れないが、風流さは感じにくい。

そんな梨にまつまるストーリー。

前作『桃』は4歳の頃の息子の可愛いい頃、発熱した息子に桃を食べさせたという私小説だ。

今回の『梨』は息子が3歳の頃の話

休みの日は息子を連れて近くを散策することが多かった。

遅い夏休みをちょうど今ぐらいの時分にとり、浜松に住む弟の結婚式をかねて家族で旅行をする前日であった。

高台にあり眺望の良い田園地帯に見事なコスモス畑が近くにあった。あまりにも見事なのでシーズンに数回訪れ、その日も息子とコスモス畑に向かった。

妻は我々に梨を剥いてくれてタッパウエアに入れて赴いた。曇り空で涼しい秋の日、そこで息子と頬張った梨は何物にも変えがたい秋の味覚の嬉しさを味わえた。

しばらくコスモス畑を高台から眺めた後、畑の中にも入っていった。

コスモスの花に誘われてか、梨の甘味に誘われてか、毒々しいオレンジのオオスズメバチが息子の顔10cmくらいを通り過ぎた。

スズメバチの怖さを知識で知らない子供でもオオスズメバチの毒々しい迫力に「うわぁ」と怯み固まっていた。幸い、ハチは飛び去り、刺されるなどはなかったが、

すっかり、秋の風情は涼しい曇り空とコスモス畑と梨という組み合わせにオレンジオオスズメバチもセットに我々父子の間ではなってしまった。

しかしそんな記憶も親の私にしか残っていないであろう。今度、高校一年になって息子にコスモス畑と梨とスズメバチを覚えているか質問してみようと思う。

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