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初秋の食材の俳句(季節を味わう#0021)

「季節を味わう」では、第5水曜日にその季節の食材を詠んだ俳句をご紹介します。あくまでも素人の好みで選んでおります。


【西瓜】

撮影:cheetahさま

夏の果て西瓜大きく切られけり   鈴木真砂女


西瓜が初秋の季語だとはびっくりしました。なんでも昔、西瓜は秋に流通していたのだそうです。一方で「西瓜割り」は夏の季語です。俳句の世界は奥深いなと思わせられました。
さて、夏の終わりごろに食べる西瓜。残暑厳しいとはいえ、少しは秋の気配が残る中、大ぶりに切られた西瓜にかぶりつく。学生だったら「ああ、もう夏休みが終わっちゃうなぁ」といったところでしょうか。
生活感があって面白い句だと思いました。

【枝豆】

撮影:ぴーすムーさま

枝豆を夫に背きて硬茹でに    柿本妙子

我が家ではちょくちょく夫婦喧嘩をします。腹が立つなーと思っても、いつの間にか仲直り。そんな夫婦ですが、とても助かっているのは食べ物の好みが似ていること。特に、火を入れた食材の硬さに関する好みが一致しているのは本当にありがたい。たとえばご飯。夫も私も硬い方が好き。枝豆などもぐずぐずに茹でるより、ちょっと歯応えがあるくらいが好きです。もし好みが違っていたら、毎日の食事でどちらかがストレスを抱えることになったかもしれません。
この句の主人公である妻は日頃、夫の好みに合わせて豆でもご飯でも柔らかめに煮炊きしているのでしょう。だけど、今回は口喧嘩でもしたのでしょうか。「ええい、今日の枝豆は私好みの硬めに茹でてやる!!」
鍋を前に、そんな奥さんの心の声が聞こえてきそうな句です。
鳥居三朗さんの「枝豆を押せば生るるやうに豆」とどちらにするか迷いましたが、夫に背きて、という言葉に思わずニヤリ、柿本さんの句を選びました。

(2023年8月30日)


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