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宝塚歌劇 2024年雪組『ベルサイユのばら フェルゼン編』ポスターに思うこと(2024年4月)

みのおエフエムで毎月第4週目にお送りするコーナー『今月のMyスポットライト』は大好きな舞台やエンターテイメントを熱く語る時間。
今月は宝塚ファンの間にちょっとした衝撃を与えている2024年 雪組『ベルサイユのばら フェルゼン編』のポスターについて。
いつものように芸名には敬称略で失礼する。

まずはポスターを見てほしい。⇩クリック

ザ・ピンク!
背景も衣装も、散る薔薇の花びらさえもピンク、ピンク、ピンク。
とはいえ、ちゃんと品よく収まっており、とても美しい。
トップスター彩風咲奈、トップ娘役夢白あや、2番手男役 朝美絢、三人ともが本当に美しい。ずっと見ていたいほどに。
とはいえ、これが『ベルサイユのばら』しかもフェルゼン編のポスターだと知ってびっくりしたファンは多かったと思う。1974年の初演以来、何度も上演されてきたが、今回のポスターはこれまでの『ベルサイユのばら』と大きく違っている。もし、タイトルを隠した状態でポスターを見せられたら、これが何の公演だかわからない人が多いはずだ。レビュー作品のポスターだと思うのではないか。

『ベルサイユのばら』の原作者 池田理代子さんは、この作品のメインは4人だと明言しておられる。オーストリアハプスブルク家からフランスに嫁ぎ王妃となったマリー・アントワネット、アントワネットと恋に落ちるスウェーデンの貴公子 フェルゼン、男子として育てられ近衛兵となりアントワネットを守る立場になった貴族の子どもオスカル、そしてオスカルの孫 アンドレは平民ではあるがオスカルを守っている…
スターシステムの宝塚歌劇団では、トップスターのキャラクターにあう人物を主人公として芝居を組み立てる。『ベルサイユのばら』の場合、トップスターはオスカルか、フェルゼンどちらかを演じることになる。彩風咲奈の場合はフェルゼンだった。

宝塚歌劇団初のフェルゼン編は星組、トップスター鳳蘭が務めた。以後、さまざまなフェルゼンが誕生したが、ポスターにはある程度共通点がある。フェルゼンのテーマカラーは青系統が多かった。フェルゼンは襟の高い軍服もしくは宮廷服を着ておりマリー・アントワネットは輪っかの入ったゴージャスなドレスを着、髪の毛は高く結い上げたカツラで写っているのが定番だ。
それなのに2024年雪組の『ベルサイユのばら フェルゼン編』のポスターはどうだろう。ほぼピンク一色。フェルゼンは軍服でもなければ宮廷服でもない。アントワネットのドレスもベルサイユ宮殿の舞踏会に出るような豪華衣装ではなく、普段着のよう。オスカルも軍服を着ていない。部屋でくつろいでいるときのようなブラウス姿だ。
どうなっているのだ、これは?

色々考えたのだが、私はこれは天国の様子なのではないかと思うようになった。
オスカルも、フェルゼンも、アントワネットも、みな非業の死を遂げる。原作を読み、舞台も見て、結末がわかっているのに、何度再演の舞台を見ても必ず切なくなるし、最後にガラスの馬車が出てくるとほっとする。みな天国で安らかに、幸せにと思ってしまう。
このピンク色の美しいポスターは3人が天国の花園で優雅に過ごしている姿だと思えば、衣装がくつろぎ着ふうなのもわかるではないか。
つまりは観劇後、ファンがこうあって欲しいと願う姿を描いたものではないだろうか。

いやつまらぬ理屈は不要であろう。とにかく美しいポスターである。宝塚歌劇において美は正義。
公演を楽しみにしよう。

(2024年4月24日)


「今月のMyスポットライト」は大阪府箕面市のラジオ局 みのおエフエムの第4水曜日午前11:00と午後8:10から放送しています。
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