GACCOH全国出張版 東京編 「やっぱり知りたい!西周」 ふりかえり座談会

GACCOH全国出張版 東京編 「やっぱり知りたい!西周」 ふりかえり座談会

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石井雅巳(いしい・まさみ) 津和野町町長付/講座コーディネーター
小林えみ(こばやし・えみ) よはく舎代表
太田陽博(おおた・あきひろ)GACCOH代表

◆反省!反省!

小林 GACCOH全国出張版 東京編「やっぱり知りたい!西周」講座、全3回終わりましたね! 石井さん、太田さん、おつかれさまでした。

石井 本当におつかれさまでした。

太田 本当に本当におつかれさまでした。

小林 会場が、とってもかわいい絵本専門店「ブックハウスカフェ」さんで、西周講座という(笑)。でも広さや駅からの近さが、開催側・受講生の方にとってもよかったのではないかと。

石井 なかなかファンシーな空間でした(笑)。でもアクセスや規模感も良かったですね。

太田 絵本専門の本屋さんで西周講座って、なかなかない組み合わせで、そういうのいいと思います。

小林 「映画見に来たんだけど、時間があいたから参加していっていいですか」という当日参加のお客様がいらして、実はそういう「講座を知らなかった」お客様もちらほらいらしたんですよね。これはとてもビックリしましたし、そういう出会いがあるのは本当に嬉しいことです。

石井 当日飛び込みの方はあまりいないんじゃないかと予想していましたが、結構いらして、それは私も嬉しい驚きでした。

小林 お客さんは、特に初回は1週間前での予約が10名強くらいでしたっけ? ちょっと大丈夫かなあ、という不安がありましたよね。でも当日は満員御礼でギュウギュウになりました!

石井 いやあ、GACCOHさん初の東京編ということで、ここでコケたら申し訳ないと思っていたので、前日までは正直胃が痛かったです(笑)。

太田 それは私もそうで、コケたら京都に引きこもる予定でした。

小林 私も調子いいこと言って、太田さんにお声かけした手前、胃が痛かった(笑)。三人ともキリキリしていたということで(笑)。

太田 共催イベントってこれまであまり行っていなくて、いつもなら参加者が少なくても「自分の収入が減る..」くらいでしか思ってなかったのですが、今回は小林さんとの共催ですし、石井さんは津和野からはるばる来ていただいているわけで...その点いつもよりプレッシャーありましたね。

石井 そんなこんなでお二人の宣伝のお陰もあって、多くの方に来ていただけたわけですが、本当に良い参加者の方々に恵まれたなあと思っています。

小林 そうですね。そして、まず企画の成り立ちについて。
 ナビゲーターの石井さんは私から太田さんへご紹介しました。私は、それまで石井さんとは少し面識がある程度だったのですが、「ツワノシゴト模様」の「第1編:博士課程に進めなかった”哲学”研究者。「森鴎外」「西周」の故郷・津和野へ行く【『地方』×『研究者』】」というウェブ記事で石井さんの近況を知り、そこで雑誌『POSSE(ポッセ)』vol.36からの連載「それぞれの町で」で、地域で仕事をすることについてインタビューをさせて頂きました。そこで西周を研究されているということが面白いなと思って、私自身が石井さんからもう少し西周の話を聞きたいな、と思ったんです。
 GACCOHについては、それまでもSNSや著者などを通じて、面白い講座をされているなあ、ということを見聞きしていて、今回の西周講座の後になりましたが、いま企画が進行しているnyx×GACCOHの講座でGACCOHさんとコラボしたいな、ということをその少し前から考えていたんですね。だったら石井さんの西周もGACCOHさんとコラボで講座やっていただければいいんじゃないか、ということで太田さん・石井さんにご相談したんです。
 石井さんは津和野におられたので、距離的には、京都開催か東京開催かは決めていなくて、結局石井さんもお仕事としては東京の方が用事は多いし、まずは東京でやってみようかということになって。そのあたり、お二人はこの企画が持ち上がったとき、どんな受け止め方だったんでしょうか。

石井 私は率直に嬉しかったです。実はこれまで津和野町の東京事務所(Tsuwano T-space)で西周の入門講座を主催していました。元々は、山本貴光さんの『「百学連環」を読む』(三省堂)が出版されるのを知って、これしかない!と閃いて、山本さんに刊行記念のイベントを持ちかけたのがきっかけでした。その際は、私以外に山本さんと津和野の郷土史家である山岡浩二さんにも登壇していただき、参加費もかなり抑えて実施しました。今回は私一人でしたし、それなりのお金もいただくことになるので、嬉しいけれど、来てくれるかしらとビクビクしていました。

小林 私、何か企画するとき、すぐ根拠なく「大丈夫大丈夫!」って言っちゃうからなあ(笑)。心配するのは、いつもまわりの方という……(笑)。笑、じゃなくて申し訳ない!

石井 私にとって西周は副専門であり、当然これまでの実績もなかったわけで…小林さんのその「えいや!」がなければ実現しえなかったので、ありがたかったです。

太田 私は普段は京都の自前のスペースでやっているのですが、スペースを持っているのは長所でもあり短所でもあると思っていて、常々GACCOH以外の場所、地域でもやらなあかんなと考えていたので、小林さんにお声掛け戴いた時、これはいい機会だと思いましたし、二つ返事でしたね。

小林 東京でのイベントであれば、自分だけで開催することもできるのですが、GACCOHという講座の枠組み・デザインの魅力をとても感じていて、その力を借りたかったし、同時にGACCOHをもっと多くの人に知ってもらいたいな、というのもありました。

石井 私も関西の知り合いの研究者がGACCOHさんで「やっぱり知りたい!」シリーズを担当していたので、以前から興味深く見ていました。いわゆる教養講座は色々ありますが、若手研究者に活躍の機会を与えてくれる場所というのは貴重ですし、こうした新しい取り組みがもっともっと盛り上がるといいなと思っていたところでした。そんな講座に私も参加できるのは光栄でした。

小林 石井さんの知識については、お話する中で伺っていますが、講義されるのを私も見たことがないので、講座としては冒険の部分もあったというのが正直なところでした。
 ただ、その点についてもGACCOHの「やっぱり知りたい!」シリーズは、若手の研究者の方が教育実習の場が少ない中で、講師も参加者も初心者としてお互い「やっぱり知りたい!」を共有するフレッシュさとお互いの新しい発見というのが、ポイントなのだと思っています。
 ただ、実際に石井さんの講義を見たら、すごいお話がうまくてねー(笑)。びっくりしました(笑)。
 きちんと緩急つけて資料をみせて、時々笑いもとって、お客さんを飽きさせない(笑)。石井さんの講師力が発揮されたんじゃないかな、という(笑)。

太田 それは本当に巧みでしたよね。いったいどこでそんな技術を身につけたんだと(笑)。三回通してきてくださる方が多かったのは石井さんの講師力のおかげですね。

小林 石井ファン、多かったですよね(笑)。

石井 いやあ照れますね(笑)。昔から口だけは達者なんですよ。まあそれっぽい理由を考えると、僕らの世代は修士課程から学会で発表をすることも多く、そこで鍛えられたのかなあ。

小林 準備ってどれくらい時間がかかったんですか?

石井 第一回と第二回の内容は、既に用意していた論文の内容を噛み砕いたものなんです。なので、テクストの読み込みや先行研究の整理は終えていたので、資料の作成時間だけで言えば、一週間くらいでしょうか。第三回は全くの新ネタだったので、文献の再読などで一ヶ月、資料作成で二週間くらいでした。

小林 おお……。一番苦労している……。私何にもしていない……(笑)。当日の椅子運び力かな!(笑)

太田 いやいや、今回の小林さんの活躍はすごかったですよ!イベント企画、運営のノウハウを学ばさせていただきました。個人でやっていると、なかなか他の方の運営の仕方をみる機会ないのですが、今回は本当に勉強になりました。共催もいいもんやなと。

石井 ええ。ブックリストや冒頭のweb配信など様々なアイデアも小林さん考案のものでしたしね。


◆GACCOHの魅力

小林
 GACCOHさんの良い特徴のひとつが、太田さんによるヴィジュアルですが、今回はどのように制作されたのでしょうか。

太田 あれは石井さんに「若き日の西周」、「晩年の西周の肖像画」、二枚の写真を参考資料としていただいて、その二枚のギャップがおもしろかったんですね。若き日の写真の西周は自信に満ちた表情で正面をスッと見ている、それに対して晩年の肖像画の西周はなんともいえない苦々しい表情で目線は少し下を向いている。その二枚を見比べていると、この間西周に色々あったんやろなと。ということでポスターの中心に二枚の西周をシンプルに並べてみようと思いました。

石井 本当にかっこいいポスターを作成していただたと思っています。講座でも説明した通り、西周という人は幕臣だったり、政府の官僚だったりと色々な「顔」をもった人物なんです。異なる雰囲気の顔を使うことで、その多面性を伝えることができているなと。
 また、背景は「百学連環」の覚書というメモから取ってきています。よく見ると分かるんですが、日本語とアルファベットが併記されていて、縦書きと横書きが混じっているんですね。西洋語が本格的に入ってきた際に、日本語がどのように変容するのかという問題は講座の内容にもかかわりますし、西のカオスな部分を象徴していて、ぴったりだと思いました。

小林 ブックガイドの表紙の似顔絵は太田さんが描かれたんですよね。あの周おじいちゃん、個人的にツボったんですが(笑)。

太田 はい、あれは勢いで書きました…。

石井 なんか剣豪っぽいですよね(笑)。髭の感じが特徴出ていてかわいくもあり。

小林 これらのヴィジュアルもそうですが、この西周講座のシリーズ「やっぱり知りたい!」シリーズとGACCOHが魅力的で。GACCOHについて、もう少し太田さんから教えて頂けますか。

太田 GACCOHというのは7年ほど前に当時の仕事を辞めて一年くらいフラフラしていた時、「大学時代もうちょっと勉強しときたかったなー、でも、いまさら大学通い直すのもめんどくさいしな...」→「なら自分のための学校を自宅につくればいいやないか」と貯金をはたいて自宅を自分で改装して学校(ガッコー GACCOH)をつくったのが始まりです。そこで「やっぱり知りたい!シリーズ」と銘打って自分が「やっぱり知りたい!」と思っていた哲学や科学や芸術といった分野に関する講座を企画し、若手の研究者に講師として来ていただいて、参加者を募りつつ自らも生徒として参加しています。始まりは自分のための学校でしたが、結果的にいろんな方が講座に参加してくださるようになっています。

小林 そういえば、GACCOHの発音問題が途中でありましたねえ(笑)。「学校」と同じ平坦に読む場合と、「ガッ」(↑あげて)「コー」(↓さげる)という。太田さんが、どっちでもいいということだったので、私は後者で発音してますが(笑)。

石井 私も鳥の「カッコウ」と同じイントネーションで読んでました。

小林 カッコウ(笑)。そうそう、同じだ―!(笑)

太田 どっちでもいいと言いつつ私は平坦に読んでいる派なのですが、最近やたらとカッコウ派が増えてきてヤバイ!と感じています(笑)。 

小林 ああっ(笑)。

太田 しかしこういうものは、人が呼びやすいように呼んで定着していくものなのかなと思っているので今は自然の成り行きに任せています...…。

小林 今回、受講生の方のレベルもとても高かったですよね。石井さんの研究者仲間の方もおられましたけれど、そうではない一般の方が、ご自分なりに当日の講座を聞いて、その感想と質問事項をまとめておられた。イベントで「ご質問は」というとご来場者の方が恐縮してしまって、手があがらないことも多いんです。今回は、すっすっ、と手があがって。

石井 ええ、本当に素晴らしい参加者の方々に恵まれました。僕も最初は質問時間が葬式のようになったり、謎の演説を開始しちゃう人がいたらどうしようなどとビビってたわけですが、本当に杞憂に終わりました。会場の雰囲気も良かったですし、質問も本質的な部分に切り込むものが多く、こちらが助けられたばかりか、時には冷や汗もかかされました(笑)。

太田 講座をやる上でいつも難しいなと感じていることは、参加者間の知識のレベル、問題関心が違う中で、いかに一つの講座を共有して楽しんでもらうか。ただ今回の西周に関しては皆さん一定程度知っているが、その先はよく知らない。前知識という面では参加者間の差が少なかったのかなと。だから質疑応答含め、いい雰囲気だったのかなと思っています。今から思うと「西周」という対象設定はかなり絶妙だったのではないかと(笑)。これから企画を考える上でいい経験をしましたね。

小林 受講生の方が「GACCOH」に興味をもたれたのか「西周」に興味をもたれたのか、「石井雅巳」に興味を持たれたのか、複数回答可で最終回アンケートとればよかったなあ。 そういえば、第二回は台風直撃で。あのときも開催できるのか、受講者の方こられるのか、また胃の痛い前日を迎え(笑)。当日、台風は逸れなかったですけど、外出不可レベルではない、雨が強いの範囲の時間帯で、受講生の方もお集まり頂けてよかったですね(笑)。

石井 しかも第二回の開催日には衆院選もありましたからね(笑)。開始時間になって、受講生の方が部屋にぞろぞろと入ってこられたときは目頭が熱くなりました。

小林 感動秘話! 石井さんは次の日、飛行機で津和野に帰れるか否や……、みたいな感じでしたが、夜中じゅうに無事台風も通過しましたし、懇親会も「日本語論」などで盛り上がって、これもまた良い回でしたね。
 あと、この講座を通じて、津和野に興味を持ってくださった方、「行ってみたい」とおっしゃって下さった方がおられたのもうれしかったです。

石井 そうですね! 町の職員としては、イベントを通して町をPRするという使命もありました。津和野は文化財もたくさんあって、良いところだと思うのですが、関東からのアクセスは決して良いとは言えないわけです…そんなわけで、これを機に津和野という土地にも関心をもってくれたらと、スライドの扉の部分を写真付きの津和野紹介コーナーにしてみました。

小林 そうした受講者の方にとって「これから」の広がりがあることっていいな、と思うし、重要ですよね。私は、基本的には出版人、編集者なので、イベントは「本や読書につなげるためのイベント」という位置づけです。今回は、まず「石井雅巳さん」という若い方が新しいことをされていることを紹介したい!ということで、少し普段とは違うのですが、それがまた違うことに繋がっていくことの面白さを感じています。
 あとね、西周とか関心ない方も是非、津和野へ! 石井さんから頂いたマメ茶や葉ワサビの醤油漬けが美味しかった(笑)。食べ物おいしいところは良いところだ!
 東京の津和野T-SPACEへチラシを届けにいったときも「初陣」(津和野産の日本酒)のアイスを食べてまして、美味しかった(笑)。


◆これから!

石井 西周関連の事業ですと、出版事業が大きな柱になっています。西周の主要テクストの現代語訳や新しい全集をつくるという壮大な企画です。それを核にしながら、津和野を西周研究の拠点にしたり、西周を「地域資源」として捉えて、観光や教育などの分野で利活用できるようなインフラを整備していけたらなと考えています。僕自身は、西周でしっかり論文を書いて、なんとか研究として価値あるものも残していけたらなと思っています。
 あとは、津和野は西周と森鷗外以外にもなかなか興味深い人物(岡熊臣、大国隆正、福羽美静・逸人、高岡直吉・熊雄兄弟などなど)を輩出しているので、そういった人々の紹介を津和野町東京事務所を使ってPRしていくのも面白そうだなと。

小林 GACCOHさんとのコラボについては、ひとつはnyx×GACCOHという講座を設けました。これはGACCOHさんで開催されている、今回の「やっぱり知りたい!」とはまた違って『nyx(ニュクス)』という思想誌を堀之内出版から発行しているのですが、この特集や企画を元にした講座シリーズです。
 「やっぱり知りたい!」よりは少し難しめになるかもしれませんが、雑誌からもう少し勉強したい、雑誌の論稿を読んでみたい、という方への補完的な、初学者でも参加可能な講座です。
 いま、募集中なのは『nyx』3号第一特集「マルクス主義からマルクスへ」と『マルクスとエコロジー』関連の講座として、斎藤幸平さんによる「マルクスと現代社会」三回講座。第一回は「マルクス主義の新自由主義批判」で2017年12月16日(土)から開講の予定です。
 このnyx×GACCOHが今のところ2つ、2018年の開講予定(近日公開)があるのと、GACCOH全国出張版 東京編「やっぱり知りたい!」シリーズで1つ、2018年開講予定(近日公開)があります。

太田 小林さんとのコラボがぞくぞくと(笑)。今後ともよろしくお願いします。その他にも京都で「やっぱり知りたい!ジャック・デリダ」「やっぱり知りたい!ジャン゠リュック・ナンシー」「やっぱり知りたい!フェミニズム(仮)」が来年の一月からスタートします。
 あっ! もちろん京都に石井さんをおむかえしての「やっぱり知りたい!西周」の開催も予定しております。

石井 いやあ、どれも面白そうです。ぜひぜひ京都でもやらせていただきたいです!

小林 どれも楽しみですね! あと、実は太田さんと企画のご相談をしているときに、今回「全国出張版 東京編」と名付けているので、「全国」、東京以外の開催企画も実現してほしいなあ、と思ってます。太田さん、期待してます!(笑)

太田 そうですね。いろんな地域で開催していきたいですね。
「やっぱり知りたい!」という方がいる限り日本全国どこでも可能性はあります...!

小林 温泉があるところがいいな(笑)。

太田 それは確かに。ちなみに先日の西周最終回の京都への帰りに伊豆で温泉に入ってきました(笑)。

小林 いいなあ(笑)。そうやってみんなでぐるぐる全国まわりましょうー!

(終)

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