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【LDLバディ対談】議員って何のために? 鹿児島県霧島市議の山口ひとみさん

LDL(Locally Driven Labs)とは、約20年にわたって全国各地で経営とまちづくりに取組んでいる地方創生の第一人者である木下斉さんが主宰するオンラインラボです。2年ほど前に発足し、全国の仲間が各地で行っている実践や研究などについて継続的に情報交換を重ねています。

この度私とバディを組んでくださったのは、霧島市議の山口ひとみさんです。お互いLDLが発足したときからのメンバーですので、オンラインではかなりのお付き合いになります。

実は、私自身は「議員さん」という存在に対しては、LDLに入るまで全く身近でなくどこか遠い存在で、自分たちの生活に密着した仕事をしてくださっているなんて思っていませんでした。

「議員さん」=単に、子どもの行事に挨拶に来る人って感じ。
それほど遠い存在です。

でもこの2年ほど、LDLで山口さんや他の議員さんの活動を拝見していて、私が思っていた議員さん像って本来の議員さんの姿とめちゃくちゃ違っていて、こんなにもまちをよくしようと汗をかいて頑張ってくださってるのだと知りました。

かなり学びになり、目の前が開けた体験になった山口さんへのインタビューをご紹介していきます。


◯議員さんって一体どんな存在なの?を紐解きたい

何かまちづくりの分野で貢献できればと、5月から次男を連れて地元に帰ってきていて、議会のYouTube配信を見たりしていたのですが、イマイチその構造が分かりません。

地元入りして、まちづくりに関わりたくて帰ってきたーなんて言ってたら、地域に密着した子育て問題についても考え主体となって動く機会を頂いていたので、なおさら「議員さんってまちにとってどんな存在なの?」ということについて考える日々を送っていたのです。

ということで、単刀直入に聞いてみました。

Q.市議に選ばれるってすごい!選挙活動ってどんな感じです?

山口さんが当選した選挙は、26議席に37人がひしめく激戦で、まさにリアルタイムでフェイスブックで選挙戦をお見かけしてました。
純粋に尊敬しかなく、どんな風にして当選していくのかイメージも沸かないので質問をぶつけてみました。

選挙では、過去の選挙の得票数から票数1,200をとれればいいというボーダーラインを設定しました。

リサーチしたら、「必勝選挙マニュアル」っていうものが売っていました。買って読んでみたけれど、内容はいわゆる「支えてくれる妻がいる男性」が立候補するときのノウハウで、全く役に立つものではなくて。

ただ、「男性で地盤看板がしっかりある」みたいな方たちがこんな方向で行くんだというのが分かり、逆の視点でいけばいいんだと思いました。

「今のやり方の選挙や政治で届いてない声を届けたいのに、今の人達と一緒のことやっても意味ないじゃん」と思いました。

霧島では6万人の6割が選挙に行く、ということは、その6割の人には既に表を投じる相手がいるということなので、残りの4割の中から1,200人を発掘する形で支持してもらえればいけるのでは?と思い、選挙活動を行いました。

地盤看板はないので、リアルで会ったことある人で、友達とか知り合いといった皆さんに応援して頂いたのかなと思います。

昔ながらの慣習で地区を背負って出る地区選出議員が多いこともあり、多くの方は馴染みのある地域の人を選びます。ただ、就職や転勤、嫁いできたなどの理由で出身でない方も4割ほどいらっしゃるのが霧島市。

ですから、届いてない声を届けると特化していったことで、そういう方や地区によらず、お母さんたちの支持を得たのだと分析しています。
私は、選挙って、始まったときには結果出てると思っています。

山口さんからのヒアリングを編集

この話、すごくないですか?!

きちんと選挙のリアルの数値を把握し、自分の信念に照らして「どこに自分の気持ちを届けるか、どの人たちにスポットライトをあてたいか」ということを選挙戦略のベースにして取り組まれててて、しかもそういったことに通ずる普段の行動をおろそかにしていないし、さらにきちんと有権者の皆さんに届いている… 感服です。

Q.議員さんって普段は何をしてるんですか?

月〜金曜日の公務員の働いている時間にあわせて会議は設定されますから、議員になる前となったあとで生活は変わっていません。

会議場にいなければいけないというのは年に4回、約一ヶ月ずつの議会期間ごとに10~20日くらいなので、それ以外の時間は自由に活動の内容を調整できます。頭を使えばやりやすく、結果にこだわることもできる仕事です。

日々のリサーチ活動では、市民のお話をじっくり聴いた中から課題を抽出し、そこから国や県や市のオープンデータの統計情報で調べたり、本を使ったり、現地に行って話を聞いて回っています。

例えば、世代間ギャップがあることは確かですが、まちづくり自治会のおじさん聞く耳を持たないわけでないし、そもそもものすごく頑張っている人たちだったりします。単にチャンネルがずれているだけであって。

若い人たちが、例えば、ボランティアで街の人たちを助ける民生委員さんの存在とか、人知れずそこらの草を抜いてくれてる人がいて、いつも散歩する道が綺麗なんだよっていうこととかを知らないから、

そういったこともお説教とかじゃなく若い人に伝えてあげたいし、つながっていない者同士のコミュニケーションハブになりたいと考えています。

チャンネルをあわせるというイメージですね。

山口さんからのヒアリングを編集

思い切って地元のまちにダイブしてから、私も山口さんのおっしゃる「チャンネルのズレ」というものを痛感しています。

属性は違うけれど、みんなを繋ぐボタンを一つだけずらしたらうまくいった!みたいになることってきっと多い…

こんな気持ちを持って活動してくださる議員さんがいるということが、霧島市の隅々にまで認知され、その思いや活動が広がってほしいと思います。

Q.議員さんの役割って何ですか?

「まちの人の声を届けたい」という気持ちでいてくださる議員さん達。では一体どんな役割を担ってくださってるのでしょう。

「困りごとを相談する相手」として使ってもらうというのが一番多いです。

特に、複雑なことや、どこにどう相談したらいいかわからないものは、ぜひ相談して欲しいです。
私たち議員は、全てにおいてのスペシャリストではないけど、市の事業のだいたいを把握していますので、どこにどう話を持っていくと効率がいいのか、現在どんな計画が進行しているのか、総合的に答えることができます。

また、困りごとがあったら相談、というだけでなくて、「こうだったらいいな」という構想段階から相談するのもいいと思います。

本来、議員の仕事は予算を決めること。つまり、先のことを考えて動く、未来を作る仕事ってことなんです。先をもっと良くするために議会で決めていく。

みんながそれぞれ余裕のあるときに、先のことを考えたりまちのために手を動かすとか時間を使うといったことができる地域がいい地域だと思います。制度や福祉の充実も必要だけど、こうした方がいいと動く人が多い地域というイメージです。自治ってそういうことだと思っています。

みんなでいればインフラがひけるといったように、集まるからこそできることがあるし、どんな未来が広がってる?とそこに意識が向いていくといいと思います。

まちから人が出ていくという問題についても、仮説を持っています。

今はまちの未来の意思決定の場に偏った層しか参加していないので、まちが自分たちの力でよくなってるという実感がないから、子どもたちにもポジティブな情報が与えられず、結果としてまちから出ていくのではないかと考えています。

議員の役割の一つでもある意見集約は、よくある団体からのものが多いですが、本来は当事者に聞くのがあるべき姿ではないかとも考えています。

例えば、出産のことは助産師さんに聞くのではなく妊婦さんに聞くとか、保育園のことは経営者でなく保護者に聞くといった形です。

議会は、市役所の案に対する議決権と提案権をもつものです。

定例会で市長から議案がでたら、それに対して議会側が決定権(議決権)を持ちます。議会からNGが出たら、進めることはできません。
一般質問や委員会の場では、自治体の公式見解を引き出すために発言します。

公式見解とはそういうとても重要なもので、発言が議事録に載ることが強いんです。

そこで発言してもらうことに重みがあるし、自治体側は、議会が通告すると議会当日までの間にしっかり内容をもんできてくれます。関係者みなで話し合ってくれるんです。

実際に中継されている定例会一般質問ですが、その1週間前の通告(予告)時には、関係者が課題を話し合いやすいように論点を整理して、「どこに課題があってどこに向かうべきか」を示しておくようにしています。

こういったことの積み重ねで少しずつ進んでいきます。

山口さんからのヒアリングを編集

なるほど。

私達住民側は、そのような背景を知って、きちんと根拠を持って相談に伺える体制を作りながら課題解決の活動を進め、議員さんや自治体の皆さんと共に未来に向かって進んでいけばいいんですね。

◯編集後記

同じ鹿児島県ということで、それだけでもかなりの親近感がありますが、アイスブレイクの雑談でなんと同級生であることが判明。しかも一時的に奄美におられたご経験もおありということで…

お互いのフェイスブックで共通の友人がいることもあり、以前から何となく近い感じがするなーと思ってたら、実はそんな偶然もあってビックリなのでした。

そんなこともあり、終始和気あいあいと対談を行うことができました。

今回の対談ですが、「この夏に取り組んだ学童不足を補完するプロジェクトを来年に向けてどうつなげていこうか?」と頭を悩ませていた私にとって、本当に実学的な勉強になるよい機会になりました。

地元で有志の皆さんと一緒に6月から取り組んできた「夏休み子ども預かりプロジェクト」についても、複数の小学校のご協力を得たりしてアンケート調査も行いましたし、

地域の企業さんから運営のご寄付を頂戴したり、預かりスタッフ以外にもボランディアさんを募ったりして、地域の皆さんに助けられながら何とか開催にこぎつけ、7/21からスタートしています。

こんな時こそ、地元の議員さんがどんな思いで議員活動をされてるのかを私達住民が自身がしっかり知って、共に未来を作っていく関係性を主体的に築いていけばいいんだなと、そんな明るい気持ちになった山口さんとの対談でした。

山口さん、貴重なお話聞かせてくださりありがとうございました。
LDLでのバディ企画と山口さんに感謝の気持ちでいっぱいです。


LDLのお知らせ

LDL(Locally Driven Labs)とは、『まちづくり幻想』や『地元がヤバいと思ったら読む凡人のための地域再生入門』『地方創生大全』などの著者で、高校在学時からまちづくり事業に取り組み、約20年にわたって全国各地で経営とまちづくりに取り組んでいる木下斉さんが所長として立ち上げた「未来に向けて、今すぐ動く人のプロジェクトラボ」です。
基本はオンラインなので、全国各地・職種も様々なメンバーが集まり活動をしています。また、狂犬ツアーへの優先参加ができるのも魅力の一つ。
興味がある方は是非ご参加を。


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