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20210317_#005 若い建築士に知ってほしい経済の話

さあ、今日も経済について学んでいきましょう。#003の記事ではGDPの考え方などについて学んできました。まだ読んでない方は下記より。

この記事を読んでくれている方の中には建築を仕事として扱っている方もそうでない方もいらっしゃると思いますが、

作ってもらう側としても家や事業を行う場所をしつらえるにはやはり資金面でのやりくりは必要になってきますし、作る側であったとしても発注者さんの状況(業態や資金の動き)をよく考え適切なご提案ができるスキルを身につける必要があるでしょう。

そういった意味ではやはり貨幣経済がどういったものかを理解しておく事はより豊かに生きていくためには最低限の教養なのだと思います。


ここまで建築と経済の記事で課題図書から学んできたこととして、

GDP =民間消費+民間投資+政府支出+輸出−輸入

という式が成り立ち、国の豊かさを表すひとつの指標として国民一人当たりのGDP(国内総生産)という概念があるという事がわかりましたね。


今日の記事で取り上げる2章のこの後の部分では、貨幣経済が本質的に「信じる」というただそこだけの部分によって成り立つものであることが説明されています。

だからこそ、「貨幣に対する国民の信頼を失墜しない」ように日銀が貨幣の流通量や物価をコントロールしていて、それが国債の発行量や間接的な金利操作によって行われていると。

ではどういうことなのか、続きを読んでいってみましょう。

もっと自分で考えて理解してみたいという方はぜひ書籍を手にしてみてください。きっとあなたのためになるから。

【今日の選書】
日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門
著者 藤沢数希    2011年発行

以下、建築と経済シリーズの記事の共通の注意点です。

★印は私の考えや感想を差し込んでいる部分
▶︎印は本に出てくる単語や概念の意味をもう少しわかりやすく理解できるサイト等の紹介

※用語の整理

マネタリーベース
マネタリーベースとは、「日本銀行が世の中に直接的に供給するお金」のこと。具体的には、市中に出回っているお金である流通現金(「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」)と日本銀行当座預金(日銀当座預金)の合計値。

マネタリーベース=「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+「日銀当座預金」

引用:日銀ホームページ(▶︎こちら

私も経済について勉強中なので、もし違っていたり追加で知っておいた方がよいことがあればご指摘お願いします。

さあ、内容に入っていきましょう。

2章 小一時間でわかる経済学の基礎知識

■現代のお金は本質的に紙くずである

貨幣とは信用のみで成り立ち、それはある意味バブル。

10,000円はなぜ価値があるか。それは他の人も価値があると信じ込んでいるから。

10,000円を出せばおいしいディナーを食べられるし、マッサージをしてもらったりもできる。

なぜならその10,000円はまた別のモノやサービスを買うために使うことができると信じられているから。

今世界中の人が何の疑問も持たずに毎日使っているお金というのは、世界中の人が何の疑問も持たずに毎日使っているというその事実こそが、その紙幣の価値の源泉。

■中央銀行と貨幣と国債の関係

ちょっと前の1971年までは、貨幣は貴金属の金とリンクし、金という実体のあるものと完全に関連付けられていた。

アメリカ政府にドルという名前の紙切れを持っていくと、前もって決まっているレートで本物のゴールドと交換してもらえた。

世界の主要先進国の通貨はドルとの固定相場制だったので、それぞれの通貨もドルを通して金という実態につながっていた。これが金本位制

しかし金本位制は、お金を発行するのにそれに見合う金の延べ棒を政府が保有しなければならず、政府にとってはかなり不便。

「ドルと金の交換をしない」というニクソン大統領の宣言後、世界中の通貨が変動相場制になった。(ニクソンショック▶︎こちらのサイトが分かりやすい

Q.貨幣はどうやって出回ったのか?

金本位制では中央銀行がいろいろな人から金を買い取ってその金の見返りとして紙幣という紙切れを渡すので、その紙切れが世の中で流通することになる。

政府は貨幣という証書を発行して(シンプルな金本位制だと政府と中央銀行は一体)、この証書と市民が持っている金を交換。

仮にこれを政府券と呼ぶと、例えば政府券を100兆円発行して市民が持っている金を買い集め、100兆円の政府券が市民の間でその国の貨幣として流通。この紙のお金は政府・中央銀行の保有する貴金属の金の価値で保障されている。

Q.では今の貨幣はどうやって増えていくのか?

現代のお金は中央銀行が国債を買うことにより増える。

国債は政府が公共事業などでお金が必要になったときに発行する。例えば国債を1兆円発行して、これを競りにかけて民間の銀行に売る。民間の銀行は満期や利払いの条件などを考えて国債を落札する。

一番高い値段を提示した銀行が国債を買う。債券というのは値段が決まれば金利が決まる仕組みになっており、このようにして日本国債の金利が決まっていく。

国債の値段が安くなるほど金利は高くなる。金利が低くなるほど国債の価格を高くなる。

(★この部分理解がやや難しいのでまた別の機会に深堀り学習してみます)

政府が国債を民間の銀行に売れば、民間が持っていたお金が政府に移動するだけなので、全体での貨幣の量は変わらない。しかし日銀が国債の流通市場で1人のプレイヤーとして民間の銀行から国債を買えば、お金は増える。

なぜならば日銀だけは自分でお金を刷れるプレイヤーだから。

(★→バランスシートの負債の部が無限のイメージ?)

逆に日銀が国債を売れば、お金の量は減る。

通貨の信用とは国債の信用そのもので、国債の信用とは、結局国家の徴税権にたどり着く。国が将来しっかり税金を取って、国債の保有者に返済するということが国債の信用。

(★→では今の日本の国債残高を考えたとき、果たしてこれをこれからの日本の稼ぎで返済できるのだろうかということも真剣に考えないといけないよね)

将来の国の税収を企業の利益のようなものだと考えれば、国債というのは債権だが、むしろ国家が発行する株式のようなものだとわかる。

(★→国債として銀行の利益や国民の預貯金から借り入れた資金を、産業等による付加価値創造でプラスにし利益をあげていく 株式のシステムを当てはめる)

株価が企業の業績で上がったり下がったりするように、国債価格や国債に担保されている通貨は、世界の国債市場や為替市場で上がったり下がったりする。

■民間の銀行による信用創造で増速するお金

日本で営業するすべての銀行は日銀に口座を持っていて、この口座に預けてある預金を日銀当座預金と言う。

民間の銀行がお客さんから集めた銀行預金の一部はここに貯まっている。

民間の銀行自らが保有している国債を日銀に売ったり、日銀から国債を担保にしてお金を借りたりすると、その民間の銀行が持っている口座にお金が振り込まれる。

日本は2011年現在ゼロ金利政策をやっているため、

(★→現在は2016年からのマイナス金利政策が継続されていて一部の日銀当座預金にマイナス金利が適用されている)

最近の銀行はほとんどゼロの預金金利で集めたお金で日本国債を買ってその金利差を稼ぐという楽な商売をしているが、もちろん銀行の本来の仕事はこうやって集めたお金を住宅ローンなどで個人に貸し出したり、大小様々な会社に貸し出して利子を稼ぐこと。

この貸出金利が、銀行預金の金利より高いから銀行は儲かる。踏み倒されると損をするので、借り手のリスク判断が重要になりこれが銀行のビジネスモデル。

例えば100億円集めて95億円貸し出す。この銀行の日銀の口座には5億円しか残っていないので、皆が一斉に預金を引き出したらこの銀行はどこかから大急ぎでお金を借りてこないといけないし、借りるのに失敗したら潰れる。

取り付け騒ぎが起きないよう現在の金融システムは預金保険機構というのがあり、銀行が潰れても一定額まで預金が保護されるし、自己資本比率に規制があり銀行は一定の厚い資本金を積まないといけないことになっている。

また必要であれば中央銀行がお金を貸して救済する。

行き過ぎた保護は、銀行経営者のモラルハザードを引き起こし、大きなリスクを取って儲ければ経営者の手柄で、破綻した時は公的な預金保険や税金で救済され、最悪の場合に会社をクビになるだけなら、経営者は過剰なリスクを取った方が良いことになってしまう。

資金を効率的に配分するという重要な金融機能を妨げるので、銀行が最低いくらのお金を日銀当座預金口座に預けておかなければいけないかは銀行が集めた預金に対する割合(法定準備率)として日銀が決めている。

預金の種類や金額によって変わるが、現在の法定準備率はたった1%ほど。ほんのわずかな金額を手元に残し、後は全部貸し出してしまうことができる。

この銀行が100億円集めて貸し出された95億円は、貸出先の人たちが使わずに各自の口座に置いてるかもしれないし、使ったにしろ、それを受け取った人たちはそのお金をどこかの口座に置いているから、回り回ってまたどこかの銀行に預金として預けられているはず。

財布やタンスや金庫に入っているお金は銀行口座にはないが、やはり多くのお金がどこかの銀行に戻ってくる。

こうして95億円のうちの大部分がどこかの銀行の預金となって、その銀行がまた貸し出す。するとお金を借りた企業のお金がまたどこかの銀行の預金となり、その預金が貸し出されてというようにどんどん民間企業や個人が自由に使うことができるお金が増殖する。

企業や個人の預金とは銀行の負債。住宅ローンを組んでいればそれは個人が銀行に対して負債を抱えているということ。貸しだされたお金は企業の負債。

銀行の貸出を通して民間の預金の総量が増殖しても、それは常に負債とワンセットになっていて、富が創られるということではないが国民の銀行預金はこのように膨張する。これが信用創造と呼ばれるプロセス。
(★この信用創造のメカニズムには式があって、私はまだはっきりとこの式を理解できていません)


世の中に流通している現金の物理的貨幣と、銀行が日銀に預ける預金である日銀当座預金の残高の合計をマネタリーベースと言い、これは日銀が市中の銀行から短期国債を売買したり法定準備率を変更して直接コントロールできるお金。

このマネタリーベースをもとに信用創造で膨らんだ個人や企業の預金残高と手元にある現金の全てを足したものをマネーストックと言い、マネーストックとは民間が経済活動に自由に使えるお金の総量。

最近ではマネタリーベースを増やしてもマネーストックが思うように増えない。

特にアメリカでは2008年に起きた金融危機のショックを吸収するために、FRB(▶︎こちらのサイトが分かりやすい)が大量の資金を供給したがマネーストックはマネタリーベースの増加にあまり反応していない。

実はこれは金利がゼロ付近にまで下がってしまい流動性の罠にはまっているから。日本はすでに以前から流動性の罠の状態なので、マネタリーベースとマネーストックの関連性が失われている。


そして考える・・・

金利がゼロ付近にまで下がっている場合になぜマネタリーベースが増加していかないかという部分についてはもう少し考察や経済への理解が必要であるけれども、もしかしたら信用創造のサイクルにどうやら穴が開いているのかもしれない。

マネタリーベースは世の中でぐるぐる回っているお金だから、マネーストックが増えないという事は、世の中にザブザブお金を流しても個人や企業の経済活動でその価値が増えないと言うことだよね。

まさにこの半年くらいの株価の上昇と実体経済の感覚が違うというところにこの問題を考えるキーがありそう。

銀行がお金を貸し出していてもそれは常に負債とセットになっているわけだから、その資金を元にした価値創造の営みが何らかの原因で健全に回っていないという事になるのか。

お金の歴史については、別の書籍を読んでいても「その時代のその国の金利設定と交易相手国との価値差分(これが為替だよね)が経済活動(=繁栄や衰退)に大きな影響与えている」ということが時代ごとの具体的なエピソードとともに説明されていて(と私は解釈している)、これらの話はとても興味深く感じてる。

マネタリーベースとマネーストックの関係性については、読んでくれてる人がより自分ごととして考えることができるように、個人生活のおサイフと結びつけて考えていけるようにしていこう。

ということで本日の考察はここまで。

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