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これまで2回にわたって、木版画の摺師西村熊吉の談話記事「洋画の印刷」(『趣味』第3巻第2号、明治41年2月1日、易風社)を読んできた。 今回は最終回で、洋画、特に水彩画の木版化における技術的なむずかしさやオリジナルの洋画を木版で複製することの意義について考えてみたい。 黒田清輝《銚子の写生の内》 西村は黒田清輝の水彩画を木版にした経験を次のように語っている。 伊上凡骨とコンビを組んで、西村は『明星』や白馬会の機関誌『光風』で活躍することになる。 「黒田先生」
さて、摺師西村熊吉の談話記事「洋画の印刷」(『趣味』第3巻第2号、明治41年2月1日、易風社)の紹介の第2回目。 今回は、西洋画の木版画化の実際に触れる。実作を紹介しながら、何が革新的なところなのかを考えてみよう。 《五月雨》のすばらしさ 西村は洋画を手がけている同業者に刺激を受けて洋画の木版画化にのりだすことになる。 「松井」は木版業者であろうが、特定することはできていない。(注1) 「画工さん」というのは、職人ではなく画家のことを意味している。 「松