2023.4.17

京都シネマで『逆転のトライアングル』を観た。
戦争ってこんなふうに起きるんだ…というのが第一の感想。主従関係とか不平等さに対する憤りからの諍い。拡声される政治的主張。冒頭のショーのシーンでは後から来たVIPにより、元からいた人が弾き出される。先住民とか奴隷制度とかを思い浮かべた。
2時間20分の映画だけど、12時間かけて見る夢のように場面が切り替わり、いろんな世界に連れていかれて体力を消耗した。そして、ラストはこちらの解釈に委ねられ、現実世界に突き返される。だから、かなりモヤモヤが残る。もう寝るだけで良いような、遅い時間に観てよかった。
ファーストカットからのインタビューシーンで広告社会の不快さが全景化し、平等なんて綺麗事だと一蹴される。お金をどちらが払うかで喧嘩するカップル、お金のために働く客室乗務員、その下でなにも発言しない清掃員たち。豪華クルーズなのに、ハエが飛んでいたり船がめっちゃ揺れて、全然優雅じゃないところ。手榴弾や地雷で儲けたセレブが、悪気なく人当たりが良いところ。ちょっとしたひっかかりがどんどん溜まっていく。
いろんな部分に言及したくなる映画で、クルーズのシーンは笑えたけど、島のシーンは終わりが見えてしまってしんどかった。エンディングのファッションショーで流れるような劇伴で、気持ちをごまかすように仕向けられたのが悔しい。観ている時は今年ベストかも、と思っていたけど、だんだんイライラしてきた。

原題は"Triangle of Sadness"で、冒頭の面接シーンで眉間のことを指す言葉として出てくる。確かに下向きの三角形みたいだけど、これを『逆転のトライアル』という邦題にしたのがお見事。
アビゲイル役の女優さんがとにかくすごかった。ラストの表情もいいのだけど、それよりも、とあるシーンを境に急に表情が艶っぽくなって驚いた。その顔つきだけで、何があったか悟らせる。
ほんでさらに驚いたのが、ヤヤ役の女優さんチャールビ・ディーンさんが昨年敗血症で亡くなられたということ。悲しい。

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