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2023.12.28

仕事納め、ミスドの福袋を受け取り、出町座でスコセッシ監督の『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』を観た。とにかく、ディカプリオの演技がすごすぎる。200分間、すげーすげーとびっくりし続けた。長尺だけど、俳優陣の演技バトルが面白すぎて、カットするには勿体ないシーンばかり。ヘイルが自分をキングと呼ばせる最初の会話、アーネストがモーリーに対して見せる表情しぐさ、ヘイルがアーネストにサインさせる強引さ、それを見ている捜査官、ヘイルが髭を剃ってもらっている真上からのショット、キング派の弁護士と白人たちがアーネストを引き込もうとする熱気と圧、印象的だったところがたくさん。
アーネストの情けなさ、流されやすさ、どっちつかずさは、太平記の足利尊氏と少し似ている。モーリーとの最後の会話における答弁。あの表情からのあの回答。虚飾まみれの信じる心はあっけなく決壊する。直前の法廷シーンでの愛の告白に胸を打たれただけに、余計に放心した。
アーネストもヘイルも、本当の本心が分からない。もしかして、本気で善だと思っているのか、とも思わせる。そういう人間の複雑さを表現できるディカプリオ、デニーロ。それを演出できるスコセッシ。不世出な俳優と監督による作品を、同時代で体験できる幸せを噛み締めた。
音響も効果的に使われていた。出町座さんがいい具合に調整してくださったのかな。人が大勢いるシーンの騒がしさ、蠅の飛ぶ音などの不快さを醸成する演出がお見事。

誰かと話したかったけど、誰も話し相手がいないので宇多丸さんの自評を聴いて、わかる!と心の中で絶叫した。好きなシーンが蘇ってきた。原作読まねば。先住民の取材をきちんと行っているんだろうな、というのは映画を観て思ったけど、今の私は判断材料を持ち合わせていない。

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