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2024.5.13

燕燕でじゃがいもの素揚げ(680) を頼んだら、フライドポテトが出てきた。イカの大葉炒め(1100)は、野菜いろいろ入っていて、大葉の香りと上品な味付けがよかった。

出町座にて濱口竜介監督『悪は存在しない』を観た。カメラポジションの斬新さに感動した。空を垂直に見上げたショットで始まり終わるけれど、人物が真上を向きながら歩き続けるには長回しすぎる。とは言え、セカンドショットで花ちゃんが空を見上げているので、ファーストショットの終盤は花ちゃんが見たものと言える。人物の目線とそうでない目線が不明瞭に切り替わっているように思えた。
『悪は存在しない』という強烈なタイトルに引きずられ、タイトルの意味するところをつい考えながら見てしまった。確かに、各々が自分の思う正義に従っており、悪気がありそうな人はいない。悪は存在しないのに、どうしてこうもすれ違うのか。
終盤の展開には驚いた。解釈が分かれるようだ。
高橋は殺されておらず(巧に殺意はなく、しばらく動けない程度に痛めつけただけ)、ラストショットの息の音は高橋のもの(山道に慣れている巧よりも高橋のほうがゼーハーしそう)だと私は解釈したのだけど、そうじゃないかもしれない。巧にとっては、高橋が水挽町を表面的にしか捉えていない人に思えたのではないか。説明会出席者の女性の意見を借りると「都会からストレスを投げ捨てにくる人」と変わらないように思えたのではないか。うどんを食べて「あったまりました!」と高橋が感想を伝えるシーンも、その時の私は笑ってしまったけど、後から考えると頓珍漢ポイントだった。
水挽町の人たちが花ちゃんを心配して動き回るのに対し、一度だけ花ちゃんと顔を合わせただけの高橋がいきなり土足で入り込んでくるように感じて、巧は我慢できなくなったのかな。高橋が巧と一緒に捜索しようとすることで、巧は山に不慣れな高橋に気を払う負荷が生じる(実際に、その前に黛が怪我していることもあり、より慎重になるだろう)。巧にとってはありがた迷惑だろうし、そんな中で高橋が自分よりも先に花ちゃんに駆け寄ろうとしたら、あの行動を取ってもおかしくない。東京チームだけの会話を知っている私は高橋に対して親しみを感じたけど、諏訪チームはそんなことは何も知らないもんな。
説明会のシーンはとにかく興味深かった。あんなシーンを撮った劇映画って、あんまり見たことがないので新鮮。行政職員が観たらどう思うのか、いろんな人の意見が聞きたい。行政から開催を義務付けられた説明会は、どうして上手くいかないことが多いのか。形式的なものだと取り違えている人がいると、元も子もない。グランピング計画がどうなるのか、野次馬根性でめちゃくちゃ気になるが、宙ぶらりんで終わった。計画にまつわる攻防になるかと思いきや、そんな予定調和の対立にはならない。
事務所シーンで上司が絵画と同じポーズをしたり、ウェブ会議の画面から車のバックミラーに切り替わったり、面白いところがたくさん。タバコとか車のドアとか、人物のキャラクターを動きのある演出で魅せていくのが細やか。
鹿の話は説明会であったのだろうか。鹿の行き先を案ずるくせに鹿猟をするのは、矛盾している気もする。娘と鹿がオーバーラップする(と私は解釈した)のは、なんでやろ。やっぱり、いろいろ考えてしまう。
エンドロールの短さがかっこよすぎた。

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