2023.3.23
湯川秀樹『旅人』を読了。読みやすく、構成が上手。読んでいると湯川さんの人となりが分かったような気になる。お父さんに対する愛憎入り混じる感情、京都の街の空気感、思春期の心の機微などが丁寧に表現されていた。文章も書けるタイプの理系人だったと思うと、なぜか親近感が湧いた。
笑いどころも多かった。湯川さんのお母さんが、自身が子ども時代にブランコから落ちたことを根に持っていて、脳検査をするように子どもに遺言したこと(そんなに気にしてたの?!)。その遺言に則って検査をした(そんなお金よくあったな!)結果、特に問題はなく脳が大きかったと分かったこと。笑ってしまった。
思考力はあるが記憶力は悪かった、と自己分析しつつ、幼少期の出来事が鮮明に書かれている。一般的な感覚からすると、記憶力も十分にいいやん、とつっこみたくなる。同郷生のフルネームを漢字で表記するなんて、記憶力が悪い人にはできないことだと思う。ちなみに、出町ふたばの先代は湯川さんと小学校の同級生らしい。それも本に書かれていた。
とにかく、偶然や人との縁の重なりによって今の自分があることを、湯川さんはよくよく理解していた、という印象を受けた。口先だけでなく、本当に他者に感謝していたんだろう。なかには、数学の先生(この先生の名前は匿名だった)のように、クソみたいやつもいただろうけど、そういう人との出会いも前向きに捉えられていて、やっぱり凡人とは器の大きさが違う。でも、先生の好き嫌いで学問の好き嫌いが変わるってあるよなあ。激しく共感。
同級生と刺激しあえる関係だったのも素敵。朝永振一郎との関係、ドラマチックだなあ。
https://www-yukawa.phys.sci.osaka-u.ac.jp/topics/963
https://www.news-postseven.com/archives/20210422_1652875.html?DETAIL
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