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ポルトガルのマクロ経済


概要

基本情報

  1. 面積
    92,225平方キロメートル(日本の約4分の1)

  2. 人口
    約1,030万人(2024年、IMF)

  3. 首都
    リスボン市

  4. 言語
    ポルトガル語

  5. 宗教
    カトリック教徒が大半

GDP基本指標(表)

ポルトガルGDP

2023年の経済成長率は2.3%と減速した。これは、GDPを構成する主要項目すべてにおける成長の鈍化に起因している。 特に2023年2Qと3Qに鈍化傾向が顕著だったが、2023年4Qには回復した。

Eurostatの速報推計によると、2024年1QのGDPは、個人消費と輸出に支えられ、前期比+0.7%となっている。 観光業の成長は2024年1月に大幅に鈍化したものの、2月と3月と回復傾向を示していた。

世帯所得の増加と金利の安定化を考慮すると、経済成長は予測期間を通じて国内の消費や投資によって支えられる経済モデルへと移行していくと見込まれる。 年間ベースでは、2024年は1.7%に減速し、2025年には1.9%に回復することが予想されており、復興レジリエンス計画の実施や最近の景況感の改善に伴い、投資は堅調な伸びが期待されている。

失業率

2023年のポルトガル雇用市場は、雇用率の上昇と失業率の小幅上昇という二つの側面が見られた。

雇用率

2023年の平均雇用人口は497.9万人となり、前年比+2%(9.7万人) と過去最高を記録。
女性 (5.3万人; +2.2%) と 55~64歳 (3.5万人; +3.8%) の雇用者増加が主な要因。
高等教育修了者 (4.6万人; +2.9%)、サービス業 (7.6万人; +2.2%)、非正規雇用 (10.9万人; +2.6%)、無期雇用 (5.7万人; +1.6%)、フルタイム労働者 (7万人; +1.5%) の増加も目立つ。
2023年の雇用率は57%となり、前年比+0.9ポイント。

失業

2023年の失業者数は34.7万人となり、前年比+8.6% (2.8万人) となった。前年比で減少してきた失業率が2023年に再び増加した結果となった。

失業者の内訳:
男性 (1.7万人; 11.4%)、16~24歳 (1.3万人; 18.8%)、中等教育・高等教育修了者 (1.6万人; 13.7%)、求職活動中 (2.3万人; 8.4%)、12ヶ月以上失業者 (4.1万人; 23.3%)。
2023年の失業率は6.5%となり、2022年比0.4ポイント上昇。それでも2011年以降で過去2番目に低い水準。
16~24歳の失業率は20.3%となり、前年比+1.2ポイント。

投資

海外直接投資(FDI)

2023年の欧州FDI誘致ランキングにおいて、ポルトガルは7位となった。前年比で順位を一つ落としたものの、FDI額はEUR1.8億(≒JPY309億)を記録している。
ウクライナ紛争や物価上昇によるインフレ率上昇など、世界的な課題があるにも関わらず、欧州のレジリエンス (回復力) に対する投資家の信頼は揺るがず、幅広いセクターでFDIプロジェクトが増加した。

EY European Investment Monitor 2024

ポルトガル国内におけるFDI

ポルトガル政府はFDIを重要政策としており、再生可能エネルギー (特に世界第2位の規模を誇る太陽光発電と波力発電) やIT、ツーリズムなど、魅力あるセクターへの投資機会を外国企業に提供している。さらには、テクノロジー系企業への投資を促進するためフリーゾーンも設置している。新規事業開発を目的とした外国起業家を支援する「スタートアップビザ」プログラムなども用意されており、外国投資家にとって魅力的な環境が整えられている。

一方で、官僚手続きや司法上の負担がFDIを阻害する要因ともなっている。政府承認が必要なのは国防、水資源管理、公共通信、鉄道、海運、航空などの一部の機密性が高いセクターに限られている。ポルトガルは、雑誌のビジネス環境ランキングで31位、世界知的所有権機関 (WIPO) のグローバル・イノベーション指数2023では30位、2023年経済的自由度指数では29位となっている。

地域別に見ると、依然としてリスボンとポルトが経済活動の中心地となっているものの、南のAlgrave地方へのFDIが増加傾向にある点は注目したい。
同地方は農水産業、観光業を中心に経済が成り立っている地方であり、日本からは荒井商事が日本の資材と技術をベースにして、クロマグロや他鮮魚の漁獲などを行っている。

ポルトガル国内におけるFDI
ポルトガル国内のFDI

観光

概要

2023年、ポルトガル観光業は過去最高の好調を記録。 国立統計研究所(INE)の速報値によると、観光収益はEUR60億(≒JPY1.03兆)に達し、前年比+20.1%、2019年比+40.2%となった。宿泊業での収益はEUR46億(≒JPY7,878億)に達し、こちらも前年比+21.3%増、2019年比+43%である。

好調な要因としては、宿泊者数と宿泊料金の増加 が挙げられる。 宿泊者数は3,000万人に達し、前年比+13.3%、宿泊数は7,720万泊に達し、前年比+10.7%となり、国内観光客が2.1%増加し、外国人観光客が14.9%増加した。

宿泊料金の値上げも観光収益の増加に貢献。 ホテル、ホステル、民宿などの宿泊施設における1泊あたりの平均料金は前年比+9.2%となり、EUR113.1に達した。

地域別では、リスボンが宿泊数全体の19.6%を占め、1,510万泊に到達。 前年比+13.6%の数値で、国内観光客が+3.5%、外国人観光客が+15.6%である。

観光業全体の収益は、宿泊施設以外にもレストランなどの関連事業を含めるとEUR250億(≒JPY4.28兆)に達すると推定されている。今後もポルトガル観光業はさらなる成長が期待されており、ポルトガル国内でも観光関連のテックスタートアップを支援する体制が整えられており、新たな技術や企業の誕生が見込まれる。

スタートアップ支援

  1. FIT – Fostering Innovation in Tourism 
    ポルトガル観光局とインキュベータネットワークによる共同イニシアチブであり、観光業界における起業家精神と創造性を促進することを目的としている。このプログラムの目的は、イノベーションを促進し、ビジネス環境を活性化し、観光セクターにおける新しいアプローチを考案すること。

  2. Concursos Revive
    Reviveコンテストは、都市部または自然環境における歴史的建造物や劣化建物の再利用と改修を促進し、観光目的での利用を促進するもの。新しいコンテストの開始時期などは、ウェブサイトにてご確認ください。

  3. Call Turismo + Crescimento
    Portugal Venturesは、観光関連のプロジェクト/企業に対してEUR15万(≒JPY2,569万)ユーロから最大EUR150万(≒JPY2.6万)までの投資を行うことを目的としたもの。

  4. Aceler@tech
    Aceler@techは、観光スタートアップ企業または観光セクター向けの技術ソリューションを開発するテックスタートアップ企業向けのアクセラレーションプログラムです。今後の開催予定はまだ未定ですが、ウェブサイトでご確認ください。

観光分野スタートアップ

  1. Merytu
    概要:観光業界における人材不足を解消するために、求人者と求職者をマッチングするアプリとデジタルプラットフォームを提供。

  2. Bag4Days:
    伝統的なスーツケースから、スポーツ用品や楽器など、特定の持ち物を運搬するためのスーツケースまで、幅広い種類の旅行用スーツケースをレンタルするサービスを提供。

  3. HiJiffy:
    概要:15カ国、1,400以上のホテルで利用されており、ホテルの顧客サービス業務をすべて一元化、自動化、測定する革新的なソリューションを提供。

  4. Tripwix:
    厳選された高級短期賃貸物件に特化し、贅沢な滞在を求める観光客に、入念に検査された物件を厳選された目的地で提供。

  5. Try Portugal:
    顧客一人ひとりに合わせたオーダーメイドのポルトガル旅行を提案。ポルトガルの自然、文化、歴史遺産を責任ある持続可能な方法で体験できる

筆者情報

ポルトガルの経済などに興味がある方など、お気軽にご連絡ください。


参照ページ

https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/portugal/data.html
https://www.bancobpi.pt/contentservice/getContent?documentName=PR_UCMS02106678
https://economy-finance.ec.europa.eu/economic-surveillance-eu-economies/portugal/economic-forecast-portugal_en
https://lisboainvestments.com/startups-de-turismo-o-futuro-e-potencial-de-negocio-em-portugal/


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