「拡大する」他者

言語は壁か。

違いか。

それとも、何かが勝手に引いた石灰の線のようなものか。

アイデンティティを守るために引いた線は、こちら側とあちら側をつくる。

あちら側の他者が、大きくなっていく。
あちら側だけが、大きくなっていく。

自分とそれ以外、そんな孤独が全部を呪おうとする。
自分も、それ以外も全部、無くなってしまえばいいのだと。

藁に釘をもう一回だけ刺してしまいそうになる。
力を込めて、爪と釘の痕が掌に残ったけど、それでも「もう一回だけ」は起こらない。
そこに石灰で作った、同じ掌で作った線があるから。

呪いは起こらない。
作ったことを思い出せたら。

覚えていなくちゃいけない。
思い出せるように。


大きくなった、あちら側


本当に大きいのだろうか。


あちら側を双眼鏡で覗くだけの他者は、傲慢だ。

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