あの日のボールの行方

 圧倒的な感情のうねりが下半身から脳の奥まで隙間なく押し寄せ、心が壊れる寸前だった。

 これは青春白書の一コマ、少年時代の僕にとっては成長の儀式であり、大人への試練だったのだろう。だが、この激しい衝動はダンベルをぶら下げ、タップダンスを踊るような今まで経験したことのない無理な動きで、腰は重く、腹も痛み始めた。鈍痛という言葉ではとても足りないほどのかなりの痛みだ。

 その顔を歪め、転がし、どこか物憂げな目で見つめる姿はとても妖艶で、まるで幾多のベリーダンサー達が魔界の宮殿へと誘うかのような手招きだった。カレーの香りでよだれが出るように、空腹感が募り、唾液が口の中に溜まっていく。この現象と原理は似ているのだろう。

 しかしながら、脳のどこかではとても強烈な電磁波が流れているはずだ。それはまるで人知を超越した神秘的な力がそこに溢れているのだろう。神の化身がそこには存在したのかもしれない。

 それにしても、この奇怪な現象は何歳まで続くのだろうか。永遠に続くものではないなら、寛容に受け入れるべきだが、強烈な衝動は僕をいずれ壊してしまうかもしれない。

 除霊するべきか、我慢すべきか、現在の僕には選べる選択肢はないが、いつかそのビッグウェーブを思い切り乗りこなしてみたいとは切に願う。

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