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“魔女狩り”モチーフの実験映画『ルクス・エテルナ 永遠の光』

ギャスパー・ノエというだけでテンション上がる

ギャスパー・ノエ監督最新作『ルクス・エテルナ 永遠の光』が1月8日より全国で公開された。

本作は、アートと深い関わりを持ち続けるファッションブランド、サンローランのクリエイティブディレクター、アンソニー・ヴァカレロが「様々な個性の複雑性を強調しながら、サンローランを想起させるアーティストの視点を通して現代社会を描く」というコンセプトでスタートさせたアートプロジェクト「SELF」の第4弾だという。

主要キャストは『ニンフォマニアック』のシャルロット・ゲンズブール、『ベティ・ブルー』のベアトリス・ダル。モデルのアビー・リー・カーショウや、 ミカ・アルガナラズ、ルカ・アイザック、ポール・ハメリンといったトップモデルらも出演し、ちょっとしたサービスショットで登場している。

atgさながらの実験的映像作品

この映画は、ベアトリス・ダル初監督作品にシャルロット・ゲンズブールが呼ばれたという設定なのだが、最初はこの2人のフリートークが延々続くのでそれすらよく分からない。見ているこちらが飽きかけてきたところで、ネタを小出しにしてくる。

やがて利害関係人が次々と登場するのだが、実は最後まで解決されないのでどうでもよくて、カオスな状況をクスクス笑ってやり過ごしていると、やっと“磔”の撮影シーンが始まる。

シャルロット・ゲンズブールの磔シーンということで期待に胸膨らむが、独裁者と化して撮り続ける男性撮影監督とベアトリスの口論が延々続く。見ているこちらもそろそろ飽きたというころに、こんどは背景の映像が故障してRGBの光が延々と点滅を続ける中(苦手な方はご注意)、シャルロットは磔にされたまま、狂気の状況から、次第に恍惚の表情へと変わっていく。

結局何も説明されないまま1時間弱で終了するのだが、実は冒頭に「映画を商品から芸術に高める責任がある」といったテロップが流れている。アート作品、実験映画であることが“忠告”されている。フランスの映画理論をベースに、松本敏夫の実験映画でも見るような心構えで臨むべきなのだ。

冒頭延々と続くフリートークで、有神論者vs無神論者といった、ベアトリスとシャルロットのキャラクターが明確になる。正直、それだけでも見た甲斐があったという感じ。シャルロット・ゲンズブールが起用されたのは、彼女が主演で魔女狩りをテーマにした映画として賛否両論を巻き起こした『アンチクライスト』(09年)を前提にしているからとも思えた。

言語も研ぎ澄ませながら、最後はあくまで感覚で捉えるべき映画。トリコロール3部作のような重みはないが、久々に面白い映像体験だった。

(C)2020 SAINT LAURENT-VIXENS-LES CINEMAS DE LA ZONE



いい音&大画面があることで日々の暮らしが豊かに。住宅というハコ、インテリアという見た目だけでない、ちょっとコダワリ派の肌が合う人たち同士が集まる暮らし方を考えていきたいと思っています。