やばいファンの存在と労働価値説

今回も、架空の話をしようとおもう。

こんな感じで今回も進めてしまったが、今回は実際に起こったことをベースに書いていこうと思う。この文章は、誰かを傷つけるつもりで書いていないことを先に述べておきたい。本人がエゴサーチの果てに読んでしまうことを避けるため、固有名詞は避けて説明する。

とあるコンビのファンの文章がSNSで話題となっていた。ざっくりいうと、以下のことが起きた。

1:Sさんは、音楽活動とお笑い活動を両立しているコンビを応援していた。

2:Sさんは熱烈なリアコ(ガチ恋)であり、SNSで様々なことを発言していた。気持ちが昂るあまり、こじらせたことをたくさん発信してしまった。

3:その結果、Sさんはコンビからブロックされる。

4:心情を書き綴り発信したところ、ある芸人に引用されて拡散される。

心情を吐露した文章を読んだ感想は「読みやすく理解できるが共感できない」であった。非常に興味深い内容だった。本人もいうように、素直で正直なのだろう。

それだけに、お気に入りのペットを構いすぎてストレスで殺す幼子のような、無垢な支配欲や残虐性が見え隠れして、上質のホラー映画のような恐怖を感じた。はた目にはまあまあとんでもないことをしているのに「どうして、僕が悪いの?」ときれいな瞳で素直に聞いてくる感じ。怖い。

まだ大学生のようだ。欠けた部分も大きいが、ものすごい才能の片りんを感じさせる存在。それがSさんなのである。人とかかわるのは苦手のようだが、アカウントを消しもしないし、文章も残したままで好感を持った。

とりわけ興味深かったのは、彼のお笑いライブに対して抱く感想である。手を抜いている、というのが許せないようだ。いや、「手を抜いていると感じさせる演出」が許せないらしい。演者が紙やタブレットを読むのが「セリフを覚えるのが面倒くさいから手紙を読む形にしてるんだ」と思うのだそうだ。

これは裏返すと、「ライブのために最大限努力してほしい」ということなのだろう。おそらく、本人は金銭的時間的に無理をしてライブに行ってるのではないか。こんなに無理してライブに行ってるんだから、もっと努力してよ。そんな切なる思いが聞こえてきそうだ。

この話を聞いて、マルクスの労働価値説を思い出した。私は専門家ではないので以下はWikiの適当な抜粋である。

労働が行われる過程での実態的要素を労働対象・労働手段・労働とし、労働対象と労働手段を合わせて生産手段と呼んだ。生産手段と労働力に支払われた価格を費用価格とする。

私の理解が正しいかはさておき、彼はお笑いライブのネタの生産手段と投入された労働力が気になるのだろう。おもろかったらええやんと思っていたので、新しい価値観を知り、私は嬉しく思っている。

せっかくなので、より生産手段を理解されたらどうかと思う。絶対にこの文章を読まないと思うが、Sくんはピン芸人になるべきだと思う。正直、普通の就職はむつかしいと思う。IQは高そうだけど、最終面接を突破できるのかは疑問である。まさか医学部じゃないだろうな、Sさん・・・だとしたら相当怖い(ごめんね)。

ともあれ、自分でネタを書いてライブをやってみてほしい。自分が思う最高のネタが作れるはずだ。作れなくても、芸人がどんなに苦労してたくさんのネタを作り、本番に臨んでいるかがわかるはずだ。わかったら、よりお笑いライブが面白くなるはずだ。

何を根拠に、と思われるかもしれないが、実は高校生の頃、漫才の台本を書いていたことがある。書いてるだけで楽しかったが、ネタはびっくりするくらいおもんなかった。でも、それまでもお笑いが好きだったが、より芸人という存在に敬意を持つようになった。

ちなみに、小説も書いていたし、今は絵を描いている。好きなジャンルなら、消費者よりも生産者になったほうがやりがいがあって面白い。

とにかく、あれだけの熱量を持った文章があるなら、もっともっと書き続けてほしいし、ピン芸人として活動してみてほしい。Sさんのライブなら、新幹線に乗ってでも観に行きたい笑。なお、面白くなかったら帰りの新幹線で泣くことは必須である。芸名は児玉望(こだま・のぞみ)を希望する。

いや、それにしてもあの文章量はすごい。私もライブに行くこともあるけれど、あの文章量はまねできない。Sさんの文章を読んでいると、彼が成長しているのが感じられる。あの熱量が他人や自分を傷つけるのではなく、少しでも生産的な方向に向かうことを初老の私は心から願うのであった。

そういえば、昔の知り合いでもこういう人いたなあと思う。その人は「奥さん大好き」という言葉を職場のパソコンのスクリーンセーバーにしていた。スクリーンセーバーとは、昔のパソコンで画面の焼き付きを軽減するために使われていた、スリープ時に起動する簡易な動画のことである。愛妻家を喧伝していたにもかかわらず、奥さんは精神を病んだ。酔っぱらった時の本人によると、良かれと思って奥さんの悪いところを毎晩説教したらしい。

あいつのためを思って、あんなにいうてやったのに、もうこんなんやったらいつ自〇してくれてもいい。

とまっすぐな瞳でいってたのには心の底から恐怖した。真剣に愛している、だからこそ思ったようにならないのが許せない、そんな強い気持ちを感じた。いや、Sさんは同じではないかもしれないけれど。

再度申し上げるが、この話は架空のものが含まれている。

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