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【バイデン氏 vs トランプ氏】6月24日週振り返り 7月1日シナリオ

今週の主な材料は、月末フロー、PCE(個人消費支出)、そして米国の大統領選挙に向けたバイデン氏とトランプ氏の討論会でした。

月末フローは目立った動きがありませんでしたが、PCEはFRBや市場にとって非常に好材料でした。PCEの後に発表されたミシガン大学の調査でもインフレ期待が低下し、インフレ鈍化の兆候が確認されました。

しかし、最も注目されたのはバイデン氏とトランプ氏の討論会でした。討論会の結果、トランプ氏が優勢との見方が多く、そのため金利が上昇するなど、通常の経済要因以外の政治的要因で相場が動いた場面もありました。

為替はドル円が前回高値160円を突破するなど為替介入の緊張感も高まりつつあります。

来週は、ISMや雇用統計など重要な指標の発表が控えています。これらの材料を振り返りつつ、来週のシナリオ戦略を立てていきたいと思います。


こちらは先週の振り返りになります。
まだご覧頂いてない方は、先にご覧ください。
流れが掴みやすくなります。





Ⅰ.米国経済


消費者信頼感指数 6/25(火)

この指標は、米国の5000世帯を対象に消費者の経済に対する信頼感や期待を数値化したものであり、消費動向や景気予測を図る指標です。100を基準として、100以上の数値は消費者が経済に対して楽観的であることを示し、100以下の数値は悲観的であることを示します。

結果100.4 予測100.0 前回101.3

最近の米指標は悲観的な内容が多く、米経済に対して不安が漂っていました。その中で消費者信頼感指数は注目されましたが、前回の数値よりは低下したものの、予測値を上回り、基準となる100も超え、経済に安心感を与えました。よってサプライズ感はなく市場の影響は限定的でした。


GDP/deflator 6/27(木)

今回のGDP/deflatorは、第1Qの確報値が発表されました。

<GDP> 結果1.4% 予測1.3% 23年4Q3.4%
<deflator> 結果3.1% 予測3.1% 前回1.7%

実質GDPは第1Qと比べると下方修正となっていますが、この高金利下でプラス成長していることに対し、米国経済の底堅さを感じます。物価指数に関しては予測通りでした。PCE前ということもあり、市場の反応は限定的なものとなりました。


個人消費支出 6/28(金)

今回のPCEが注目される理由として、前回FOMCでコアPCEの年内予測が2.8%に上方修正されました。

しかし、前回コアPCEが2.8%ということもあり「年内これ以上のインフレ鈍化は見られない」とFRBは予測していると捉えれますが、これに関して「保守的な考えも含まれている」とパウエルは発言しました。

そして今回市場予測はコア値2.6%とFRBの年内予測より下回る数値であり、今回のPCEはその答え合わせという意味で注目されました。

<総合値> 結果2.6% 予測2.6% 前回2.7%
<コア値> 結果2.6% 予測2.6% 前回2.8%

結果は予測値と同じ2.6%でサプライズではなかったものの、インフレに対して前向きな材料が出たことは市場やFRBにとってプラスとなったでしょう。年内利下げ期待も2回のまま残りました。


ミシガン 6/28(金)

ミシガン指標はPCE直後の発表となりました。インフレ期待は後退し、消費者マインドは上振れとなりました。

<ミシガン大学1年先インフレ> 
結果3.0% 予測3.3% 前回3.3%
<ミシガン5年インフレ予測> 
結果3.0% 予測3.1% 前回3.0%
<ミシガン大学消費者信頼感指数>
 結果68.2 予測65.6 前回69.1
<ミシガン消費者信頼感見通し> 
結果69.6 予測67.6 前回68.8
<ミシガン消費者信頼感予備>
 結果65.9 予測62.5 前回69.6


FRBメンバー発言


<デイリー>

  • 労働市場は依然強いが、インフレは高止まりしている。

  • 生成AIが生産性を向上させる可能性があるが、影響はまだ不確定。

  • インフレが低下したり、労働市場が悪化した場合に政策調整が可能。

  • PCEデータは政策の効果を示す良いニュース。

  • インフレがゆっくり低下する場合、金利は長期間高いままの可能性がある。

<ボウマン>

  • インフレ目標に向けて取り組み続けるが、まだ達成していない。

  • 金融状況が緩和するとインフレリスクが高まる。

  • 銀行数の減少に懸念を抱いている。

  • インフレが2%に向かえば金利引き下げが議論されるが、現時点では考えていない。

  • 必要なら再度金利を引き上げる用意がある。

<バーキン>

  • 企業は採用と解雇を控えているが、消費需要は堅調。

  • 金利に関するガイダンスを出すべき時期ではない。

<ボスティック>

  • 厳しい雇用市場の中で2%のインフレ達成が可能。

  • インフレは正しい方向に進んでおり、Q4には金利引き下げが予想される。

  • 価格設定力の低下が見られる。

<クック>

  • 労働市場が急速に変化する可能性がある。

  • 商業用不動産に問題がある。

  • 金融政策は制約的であり、必要なら調整可能。

  • 経済成長は2%を少し上回ると予測。

  • インフレは鈍化し、労働市場の引き締まりは緩和されている。


相場が動くような発言は見られませんでしたが、PCEデータはFRBにとって前向きな材料であると言えます。インフレは緩やかに鈍化しているものの、2%達成に向けて高金利を維持するスタンスに変わりはありません。労働市場については、現時点ではそれほど神経質に捉えていないようです。今後も引き続きデータに注目していくことでしょう。



米金利

下記は米10年債金利の1週間チャートです。週前半は小幅な推移でしたが、金曜日に大きく上昇して引けています。PCEではインフレ鈍化が確認でき、米金利は低下しましたが、金利安もある程度織り込み水準だったため、大きな金利変動にはなりませんでした。

しかし、その後、引けにかけて大きく上昇しました。私含め市場関係者の多くは、この動きに疑問を感じた人が多かったように思えます。というのも、コアPCEが2.6%であり、金利安要因であったためです(※金利安折り込み後の反発は予想範囲内でしたが、それにしても上げ幅が大きすぎました)。上昇が始まったのは23時頃で、ミシガン指標が影響しているのではないかという声もありますが、ミシガン指標がこれほど値幅に影響を与えたことは過去にはありませんし、実際にはインフレ期待が低下しているため、むしろ金利低下に寄与するはずです。

では、なぜこれほど金利が上昇したのでしょうか?正直なところ、明確な要因は分かりません。ただ、アナリスト間では「バイデン vs トランプの討論会」の影響が指摘されています。

この討論会は日本時間で金曜日の10時頃に行われました。金曜日には重要な指標PCEの発表が控えていたため、それまでは市場の動きは限定的でした。しかし、今週の重要指標を終えたことで、市場の注目はPCE⇒討論会に逆戻りし、その影響が大きかったのではないかと言われています。

討論会の詳細は省略しますが、結果的にトランプ氏が優勢でした。この討論会後、バイデン氏の勝利確率は大幅に低下し、民主党内でも不安が広がっています。トランプ氏が次期大統領になれば、大規模な財政出動が行われ、それがインフレ再燃につながると予想した債券トレーダーが米債ショートを仕掛けたとされています。

米国債ショートとは、将来金利が上がることを見越して、債券トレーダーが先に米国債を売り、価格が下がった後に安く買い戻すことで利益を得る戦略です。※金利と国債価格の関係は逆相関にあります。

簡単にまとめると、米国債が売られたことによって、米金利が上昇したということになります。

ただし、この影響が継続するかと言われると、そうではないと考えています。市場は指標や発言だけでなく、思惑によっても動くことがあります。そのため、一時的には相場に影響を与えますが、現状ではインフレ再燃とは言い難く、不確実性が高いため、金利の上昇は一旦落ち着くと見られます。

今後もデータ重視の相場が続き、市場は年内に2回の利下げを予測しています。一方で、FRBの一部のメンバーは年内に1回の利下げを予測しているため、今後の材料次第で1~2回の間で行き来する展開が予想されます。これに伴い、米金利も上下するでしょう。

ただし、1.2回の利下げはある程度織り込まれているため、金利の大幅な変動はないと考えています。金利が過度に低下すれば、そのリバウンドもあるでしょう。

少し広い視点で見れば、しばらくは10年債の金利が4.10%~4.50%の間で推移すると想定しています。


米国株

ダウ 週-31.47(-0.08%)
ナスダック 週+30.45(0.17%)

下記は米国を代表する2つの指数の1週間チャートです。全体的に小幅な推移となりました。利下げ期待も織り込み、各企業の業績によって株価が左右される業績相場となっています。

テック関連銘柄が多いナスダックに注目すると、月曜日にNVIDIAの調整により下落しましたが、その翌日には買い戻しが入り、週後半にかけてじりじりと上昇しました。金曜日には米国債売り⇒米金利上昇によって株が売られて引けています。しかし、継続的に株が売られるには材料が不足しているため、引き続き底堅く推移するものと思われます。

ダウ30
NASDAQ

月末調整もあまり入ることなく、全体的に安定した相場が続いています。ただし、高値を大きく突破するには材料が足りず、今年前半のようなパフォーマンスは期待できないかもしれません。それでも底堅さはあり、インフレの再燃や米経済の悪化などがない限り、安定した相場が続くと予想されます。


Ⅱ.日本経済

今週は5月30日以来となる高値を付け、その後も1.0%超えで推移しています。この金利上昇の背景には、日銀7月利上げ観測が高まっていることからでしょう。

10年債利回り

金利上昇や利上げへの思惑、政権不安などから、日本株も40,000円台の上値の重たさが懸念されています。しかし、底堅さもあるのである意味安定していると考えています。実際利上げをしたとしても、緩和的な環境は続き、日米金利差を見ても微々たる変動ですので、暴落には程遠いと考えます。

日経平均株価

足元の円安具合に対して、円金利が上昇しているにも関わらず、円安が進行しています。これに対して、日銀は国債買いオペ減額や口先介入、実介入などである程度コントロールしていくものと思われます。日銀にとって基調的な物価目標を達成するために円安は必要不可欠ですが、消費者マインドに影響してくるのであれば多少の歯止めをかける必要があるかもしれません。



Ⅲ.為替

ドル円

ドル円は先週に引き続き続伸し、前回の為替介入時の高値である160円を突破し、161円台で引けました。これは円安要因だけでなく、米金利上昇も影響しています。

ファンダメンタルズ的にも、日米金利差や短期的な米金利安の織り込み、円安要因から下落要素が見当たらず、テクニカル面でも上昇トレンドが続いており、じりじりとした上昇が続いています。今週は月末ということもあり、実需による調整が入る場面もありましたが、押し目買いを狙うトレーダーが多いため、相場はすぐに持ち直す展開が続きました。




ユーロドル

ユーロドルはここ2週間、レンジ相場が続いています。現時点で次回ECB利下げを織り込むには材料不足ですが、金利/経済的にみてもドル>ユーロのため、拮抗状態が続いています。ただし、この安値それほど堅いわけではなく、何かのきっかけがあれば下抜けすると思っています。最近は米金利高材料やユーロ安の材料もなく、相場は落ち着いているといえます。




7月1日週シナリオ ※7/1(月) 執筆


<注目イベント>

7月1日(月)23:00 ISM製造業景気指数
7月2日(火)18:00 欧州HICP
           ECBフォーラム
      23:00 JOLTS
7月3日(水)21:15 ADP非農業部門雇用者数
      23:00 ISMサービス業景気指数
7月5日(金)21:30 米雇用統計

その他4日(木)にはイギリス下院総選挙
7日(日)にはフランス下院選挙・決選投票がございます。

今週重要指標としては雇用統計・ISM辺りとなってくるでしょう。ただISMや雇用統計が多少悪くとも金利安過ぎることはないと想定しています。年内の利下げ回数は徐々に絞られてきており、最大で2回と見込まれます。よって、米金利が下がる場合でも、2回の利下げを見込んだ範囲内にとどまると考えています。

現状で利下げ2回寄りになると10年国債4.20%目安、1回寄りになると4.50%目安、この辺りを今週下限/上限と考えています(青色)。赤色は、年内の利下げ回数を考慮するとやや行き過ぎとなり、リバウンドが予想されます。

米10年国債

立ち回りとしては、米金利安の反発を狙う方がやりやすいかと思います。先週PCEでは2.6%と良いデータが見られましたが、金利安の反発が早かったことを考えると、金利安の織り込みは近いといえますので、そこを狙っていきたいと考えています。

その時の価格帯にもよりますが、ISM/JOLTSなどの下振れから雇用統計で4.20%にくればドル円買いを狙っていきたいと考えています。

ドル円は円安とドルの底堅さからじりじりと上昇しています。上値には介入警戒がありますが、下がれば買い支えが入る相場となっていますしたがって、基本的な戦略としては押し目買いが有効と考えます。ファンダや米金利水準、値幅、時間帯を考慮しながら、タイミングを見計らってトレードしていく立ち回りです。

良さげなテクニカルラインとしては①159.900-160.300 ②158.300-158.500となります。今週の上限は値幅的にも165円程度と想定しており、実介入があるとすればこの辺りからではないかと考えています。

ユーロドルは、米金利高の材料がないことやユーロ安の材料がないことから下落が一服し、レンジ相場となっております。しかし、1日(月)の今朝、窓が上に開き、ユーロ買いが進行しました。これはフランスの政治問題の影響によるものですが、継続的にユーロが買われるほどの影響ではないと考えています。

立ち回りとしては、戻り売りを狙っていくのが有効ですが引き付けが推奨です。テクニカルラインとしては、少し広いですが①1.0800-1.0850  ②1.0890-1.0900のラインが良さげかなと思います。

タイミングとしては、米指標で上昇したときや米金利安の織り込み時が良いと考えています。ただし、米指標の悪化が続くと金利安の織り込みが弱わまることもありますので、売りを狙う場合は慎重に引きつけることをお勧めします。

スイング狙いは難しいかもしれませんので、デイトレで短期利確や建値を繰り返しながら、きっかけがくれば下落すると考えています。現在、窓が開いているため、どこかで埋めに来るとも考えています。ただし、短期的には米金利高材料やユーロの利下げ織り込みがない限り、大きな下落は見込めないと想定しています。


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