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【米国経済減速か!?スタグフレーション懸念】簡易vol 5月6日週振り返り 5月13日週シナリオ

今週は相場材料に欠け、静かな週となりました。そのためトレード機会も少なく、私自身ほとんどチャートを見ていません。しかし巷では米国経済のスタグフレーションが囁かれており、その点について私なりの意見を述べたいと思います。加えて現状の相場整理や翌週のシナリオに繋げていきます。


先週の記事から読むと相場の流れが理解しやすいかと思います↓



まず、スタグフレーションという名前をご存じない方もいらっしゃるかと思いますのでご説明すると、景気後退+インフレ=スタグフレーションと言います。つまり、景気が徐々に後退していくと同時にインフレが収まらない状態のことを指します。

景気後退と見なされる参考例として、例えば成長率が2四半期連続マイナス失業率の大幅上昇に加え消費の著しい低下などを見ます。インフレは消費者物価指数を参考にすることが多いです。これらを見ると現在の米国経済がスタグフレーションに陥る可能性があると巷では言われております。

そこで少し過去を振り返ってみると、米国がスタグフレーションに陥った代表例は1970年~1980年代前半でしょう。失業率は約10%コア消費者物価指数は約14%米10年債金利は約16%ダウ株価は約10年間レンジの状態です。

失業率
コア消費者物価指数
米10年債金利
ダウ30工業平均株価

上記を見ると、不景気なのがある程度分かるかと思います。失業率が大幅上昇しているにも関わらず、インフレが過度に上昇したため、金利を上げざるを得なかったという状態ですね。この背景には過去の中東問題であるオイルショックが原因ともいわれております。これによって原油価格が1970年代初期は3ドル近辺だったのが、1980年代半ばには30ドル程度まで上昇しております。

金利を急激に上げることは、経済にとってマイナスになるため、失業率が上昇することは仕方ないことではあります。かといって金利を上げなければ労働市場はある程度一定に保てるが、その分インフレが止まらなくなるので賃金も上げざるを得なくなり経済が過熱し過ぎてしまいます。よって、インフレ退治を優先するか景気を優先するか、これはとても難しい判断となります。

直近でいうと、ロシアウクライナ戦争時にはエネルギー価格が大幅に上昇し、消費者物価指数も一時9%にまで上昇した為、FRBはインフレ退治を優先し、75bp利上げを4会合連続で行うという異例な金融政策方針を行いました。よって、失業率は上昇し株価も暴落と経済が冷え込む状態となりました。これらのことから、景気後退+インフレ⇒スタグフレーションと認識されており、今回もそうなるのでは?と囁かれています。

なぜそのように囁かれているのでしょうか?
現在の経済状況を見てみましょう。

まず失業率は3.9%コア消費者物価指数は3.8%で、最近の中東戦争により原油価格が一時上昇しましたが、ある程度落ち着きを見せております。

失業率
コア消費者物価指数
原油価格

ではスタグフレーションへの警戒はどこからきているのでしょうか?それは最近のインフレ率の上昇気味なことに加えて、雇用や消費が減速してきているということからだと思われます。

まず、インフレ指数を見ると代表的なものは消費者物価指数CPI、生産者物価指数PPI、個人消費支出PCEなどが挙げられます。ほかにもFRBが参考するものとして国民からの声であるミシガン大学期待インフレや企業感のISM支払価格なども重要となります。

消費者物価指数(CPI)
生産者物価指数(PPI)
個人消費支出(PCE)

直近の指標値を見るとやや高止まり感があり、インフレ懸念が拭えない要素の一つです。

次に、ミシガンを見てみると現在のインフレ懸念に追い風を吹くような結果となりました。1年先期待インフレでは3.5%にまで上昇、ただこの指標は値動きが激しいのでそこまで気にする必要はないですが、5年インフレ予測が3.1%まで上昇していることはFRBにとっては気掛かりでしょう。

ミシガン大学1年先インフレ期待
ミシガン5年インフレ予測

ミシガン大学の調査では、速報値で300人、確報値で500人と少ないため、米国人全体の意識をどこまで反映しているのかは定かではありません。しかし、過去にパウエル議長が75bpもの利上げをする際に、ミシガン大学の5年先インフレ予測が急激に上昇していることを懸念していると発言された為、今回も少なからず着目しているとは思います。

最後にISM製造業とサービス業の支払価格ですが、ここ数年で見てみるとめちゃくちゃ上昇しているわけではないですが、ここ数カ月は上昇を継続しており、インフレ懸念フラグの一つでもあります。

製造業支払価格
サービス業支払価格


次に、景況感ですが雇用や消費などの過去の推移は割愛しますが、直近の失業保険申請件数、ミシガン大学消費者信頼感指数を見てみると、

失業保険申請件数は23.1万人(予測21.1万人、前回20.8万人)に上昇しました。先週の雇用統計を受けて、市場は労働市場の変化にナーバスになっていたことから「やはり労働市場は悪化している」との見方が強かったです。ただし過去の水準と比較すると、そこまで高いわけではないため、市場の変動も限定的なものでした。

失業保険申請件数

ミシガン大学消費者信頼感指数では、67.4(予測76.0、前回77.2)と大幅に低下したことから消費の落ち込みもやや目立ちます。

ミシガン大学消費者信頼感指数


以上のことからインフレ↑景気↓が意識されつつあり、スタグフレーション懸念が囁かれている現状となります。本題としてはここからになります。この状況がどれくらいの問題であるかが、重要でしょう。

現状、雇用の減速は市場にとってはポジティブに留まっており、それも失業率は4%以下と低水準である為、労働市場は軟調であるものの悪化とは言い難い状況です。インフレは多少上向きではあるものの、年初来からじりじり上げてきた原油価格もある程度落ち着きを見せています。金利は依然高水準で、実質金利はプラスなことから、金融引き締め的な状態が続いております。よって、今後何事もなければインフレは徐々に低下していく想定ができます。

加えて、失業率や成長率の見通しも悪くない為、スタグフレーションリスクはそこまで高くないと考えます。

現在の米国株や米金利の状況を見ると、米国株は上値が重たくなってきておりますが、これは利下げの織り込みが想定されます。肌観にはなりますが、大体1ー2回分くらいは織り込まれてしまい、今後は企業決算に左右される展開になりそうです。

米金利の水準を見ても、年内1ー2回利下げとの見方が多く、ある程度織り込み水準に達し、株価/金利ともに安定した推移を見せております。株価に至っては、4月の調整分はほぼ戻している状態です。

NYダウ
米10年債金利

ただし短期的には利下げへの織り込みやインフレへの警戒感が残っていますので直近に公表予定である消費者物価指数CPI生産者物価指数PPIは重要となってくるでしょう。特にコアCPIが前回値より上振れとなると、インフレ再燃懸念が想定され、一時的な株安には警戒が必要です。しかし下がったところが底打ちとなり、良い買い場となる可能性もあるため、ある程度の下落も想定範囲でしょう。

為替に関しては、少しの乖離でもドル高ドル安に触れやすいタイミングだと思います。雇用統計をこなして、次はインフレ指数に着目されているためこのタイミングでのCPIは非常に重要となります。それに加えてPPIや小売売上高などのインフレ指標も控えており乖離次第では大きなボラも想定されます。パウエル議長の講演会も控えているため荒れることも想定しての立ち回りが必要になってくるでしょう。

一応CPIの予測値は下振れてはいますが、ここ最近予測値を見事に裏切ってきているので分からないですね。。コア値が前回より上振れであれば金利高でドル円高値を目指す動きとなるでしょう。3.7%であればドル安に触れるでしょうが、年内利下げ見通しを変えるほどのインパクトはないと想定しますので、PPIや小売高の結果も加味してドル円の反発は狙っていきます。市場予測通り3.6%なら利下げ時期が7月に早まるか、もしくは9月利下げ観測が高まるかになりそうです。

消費者物価指数CPI
Fed Watch Tool


<今週スケジュール>

5月14日(火) 米生産者物価指数PPI、パウエル議長講演
5月15日(水) 米消費者物価指数CPI、米小売売上高、NY連銀製造業景気指数
5月16日(木) 日本GDP、米フィラデルフィア連銀製造業景気指数

その他FRBメンバー発言 など



記事はこれで以上となります。
最後までご覧いただきありがとうございました!


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