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【米金利の行方はいかに/雇用統計振り返り/CPIシナリオ】7月1日週相場振り返り 7月8日週シナリオ

今週の相場は、やりづらかった方も多いのではないでしょうか。

重要指標も多く、そこに政治が絡み金利や国債に影響するなど分からないような動きもあったかと思います。

ISMや雇用統計など弱い経済指標が出たことにより、これまで強かった米国経済の減速が見えてきており、市場はその移行を受け入れつつあります。その兆候は、今週の指標だけでなく、6月の経済指標にも顕著に表れています。市場の年内利下げ期待も、ドットチャートの1回とは異なり、2回寄りを織り込んでいます。このまま弱い経済指標が続けば、最初の利下げが9月に行われる可能性が高まるでしょう。

現在、米金利は安定していますが、上値は重たく、今後は緩やかな下落トレンドが予想されます。ただし、米金利安一直線という話でもありませんので、その辺りについての見解も記載していきます。

為替は全般的に円安が続いていますが、そろそろ夏の枯れ場に向けての調整意識が入りだす頃でもあります。

翌週はパウエル議長の議会証言やCPI、PPIなどインフレ指標も控えています。いつも通り、7月1日週を振り返り、7月8日週のシナリオ戦略を立てていきたいと思います。




こちら先週の相場振り返りになります。
確認しておくと流れが掴みやすいと思います。






Ⅰ.米国経済


米指標

①ISM製造業景気指数 7/1(月)

この指標は、米国の製造業の全体的な健康状態を測定するために使用されます。50を基準としており、50を上回る場合は製造業が拡大していることを示し、50を下回る場合は縮小していることを示します。製造業の購買担当者に対するアンケート調査の結果に基づいて計算され、製造業の動向を把握するため注目される指標となります。また、予測値/前回値、これまでの推移から乖離があれば市場も動きやすくなります。

<全体>
結果48.5 予測49.2 前回48.7
<雇用>
結果49.3 予測50 前回51.1
<受注>
結果49.3 予測49 前回45.4
<支払価格>
結果52.1 予測55.8 前回57.0


全体は、予測値前回値より下回る結果となりました。3ヶ月連続の下振れということもあり、製造業全体の生産活動としては低迷が続いています。

ISM製造業景気指数

内訳を見ると、雇用はやや下振れも気にするほどの数値ではないと思います。前回受注が大幅下振れとなりましたが、今回は持ち直しました。

雇用
受注

そして、支払価格が2カ月前まで60.9だったのが52.1まで大きく鈍化しました。コストの減少は、最終的に消費者に転嫁されるため、インフレ鈍化として市場に安心感を与えたでしょう。

支払価格

総じて、製造業全体としては低迷が続いていますが、景気後退に陥るほどではありません。しかし全体で3か月連続の下振れだったため、本来であれば金利安に寄与する相場でしたが、指標の内容を無視した金利上昇となりました。これは先週の討論会でトランプ政権時にインフレに対する上振れリスクから、米金利上昇が要因だったと思われます。



②ISMサービス業景気指数

<全体>
結果48.8 予測52.6 前回53.8
<雇用>
結果46.1 予測49 前回47.1
<受注>
結果47.3 予測53.6 前回54.1
<支払価格>
結果56.3 予測56.7 前回58.1

ISMサービス業はどの要素も下振れし、全体としてかなり弱い結果となりました。

ISMサービス業景気指数

特に受注と雇用が足を引っ張り、支払価格の下振れからもインフレ鈍化が見受けられました。

雇用
受注
支払価格

④雇用統計

<非農業部門雇用者数>
結果20.6万人 予測19.4万人 前回27.2万人(※21.8万人)
<失業率>
結果4.1% 予測4.0% 前回4.0%
<平均時給>
結果3.9% 予測3.9% 前回4.1%

非農業部門雇用者数は20.6万人と予測を上回りましたが、前回の数値が大幅に下方修正されました。また、フルタイム労働者は減少、パートタイム労働者は増加しましたが、失業率は4.0%から4.1%に上昇し、FRBの年内予測である4.0%を超えました。平均時給は前回強い数値を示しましたが、今回は3.9%で均衡水準に戻り、全体として弱めの数字となった印象です。これらを受けて、市場では年内に2回の利下げ期待がより高まりました。



FRB議長パウエル発言


「リスクはよりバランスが取れてきています」
「早すぎる利下げや遅すぎる利下げのリスクをよく認識しています」
「我々には慎重に判断する能力があります」
「もし労働市場が予想外に弱まれば、それも反応の要因となります」
「政策金利を引き下げる前に、もっと自信を持つ必要があります。最近見られるようなデータをもっと見る必要があります」
「インフレについてはかなりの進展を遂げました」
「ディスインフレの傾向が再び現れています」

「我々は引き続き堅調な成長と強い労働市場を持っています」
「労働市場は冷え込んでいます」
「インフレは来年末かその翌年に2%に戻る可能性があります」
「賃金上昇は依然として均衡状態に戻るまでの水準を上回っています」
「賃金上昇はより持続可能な水準に戻りつつあります」
「サービス部門のインフレは通常、粘着性が強いです」
「住宅市場において高金利の影響が見られます」
「政策は依然として制約的であり、適切です」
「失業率が現状のままであれば満足です」
「インフレは1年後に2%台の中盤から低い水準になるでしょう」

こちらはECB forumのときに発言された内容になります。特に目立った発言はなく、中立な立場でした。


米金利

今週、10年債利回りは一時4.50%まで上昇しましたが、金利高の織り込みもあり反発し、ISMサービス業、雇用統計の影響によって低下しました。最近の指標からは、米国経済の減速が目立ち、雇用統計後には市場の年内利下げ期待が2回に高まりました。これまで強すぎた米国経済が弱まりつつあり、現状では市場ににとってポジティブに働いています。

10年債

2年債は、9月利下げ期待が高まったこともあり、10年債と比べると変動率が大きかったです。

2年債

年内に1.2回の利下げが見込まれる中で、現状では2回の利下げを予想する声が多くなっています。やや強い経済指標が出ても、利下げ1.2回水準の利回りで推移すると思いますので、米金利の上昇は限定的となり、今後は緩やかな下落トレンドが予想されます。ただし、ある程度2回の利下げも織り込まれているため、米金利が過度に下がることはないと考えられます。


米国株

今週パフォーマンス
<NYダウ> ▲257.01(+0.66%)
<NASDAQ> ▲628.93(+3.55%)
<S&P500> ▲106.71(+1.95%)

ダウ
NASDAQ
S&P500

米国株に関しては好調が続いています。特にNASDAQとS&P500は最高値を更新し、日足で今週すべて陽線を付けるなど素晴らしいパフォーマンスを見せています。



Ⅱ.日本経済


日本株

39583.08⇒40912.37  +1329.29(3.36%)

ここ2カ月ほどレンジを組んでいた日経平均株価ですが、そのレンジを上抜け、3ヶ月振りに最高値まで上昇しました。米国株(NASDAQやS&P500)の上昇が日本株にも受け継ぐ流れとなりました。

日経平均株価

この日本株のフローを見ると、海外投資家の買い越しが上昇要因に寄与したものと思われます。(黄色:売り越し 赤色:買い越し)

海外投資家の日本株フロー


日本株は安定した推移を見せていますが、最高値を大きく上抜けするのは容易ではありません。短期的には夏の枯れ場に向けて調整が入る可能性があります。しかし、中長期的には最高値は通過点に過ぎないと考えています。



Ⅲ.為替


ドル円

今週のドル円は、週前半に米金利の上昇と円安の影響で上昇しました。しかし、週後半になると、米金利の上昇が織り込まれたことに加え、ISMサービス指数と雇用統計の予想外の低下や調整が重なり、下落に転じました。全体として、週足の値幅は160pipsと小幅な動きとなりました。

ここ最近は米金利が低下基調にありますが、ドル円が底堅く推移している要因は円安の背景が強いからでしょう。

米10年債金利(赤) ドル円(青)

雇用統計では、初動80pips程度で上下しましたが、全体的には弱い結果となったため、指標100pips上昇したポイントで売りを入れました。昨年のこの時期は夏の枯れ場に向けてドル円は約7円程度の調整が入り、今週の動きを見てもその意識がやや表れているようにも思えたため、米金利高の織り込みや値幅、調整意識などを加味して売りを入れました。

今年も昨年同様の調整が見られるかどうかは分かりませんが、過去の傾向から意識されていると思います。しかし、翌週から再び円売りが続き、高値を目指す可能性もあります。これらのシナリオについては、後ほど詳しく記載します。


ユーロドル

今週のユーロドルは、ISMや雇用統計の下振れにより米金利が低下したため、上昇傾向にありました。また、欧州の政治問題も和らぎつつあり、次回の利下げ見通しも不透明なため、下落要因は見当たりません。テクニカル的には下降トレンドを形成しており、トレンド転換の重要なポイントである1.0900を突破できるかがカギとなります。引き続き、米金利の動向がユーロドルの動きに大きく影響すると考えられます。




Ⅳ.7月8日週シナリオ


<注目イベント>

7月9日(火)23:00 パウエル議会証言
7月10日(水)23:00 パウエル議会証言
        26:00 米10年物国債の利回り入札
7月11日(木)21:30 米消費者物価指数CPI
        26:00 米30年物国債の利回り入札
7月12日(金)21:30 米生産者物価指数PPI
        23:00 ミシガン大学期待インフレ/消費者マインド

今週注目はインフレ指標であるCPIやPPI議会証言、長期債の入札などが挙げられます。ちなみに議会証言とは、経済の詳細な分析や将来の金融政策の方向性についての議論が行われます。通常の要人発言とは異なり、事前に準備された文書に基づいて行われるため、より正確なイメージを持っておけば良いと思います。

米金利はインフレ鈍化や労働市場の緩和など弱い経済指標を受けて下落基調にありますが、4.20%付近は底堅く、CPIまでは割ってこないかなと想定しています。ただし、議会証言でかなりハト的になれば割ってくるかもしれません。

10年債

前回CPIのサプライズを踏まえ、今回も同様の結果が出た場合、市場は年内に3回の利下げを織り込む可能性も0%ではないので、一時的に4.00-4.10%付近まで下がる余地はあると思っています。

ただ個人的には、利下げ2回の可能性が上がるだけで、年内利下げ3回を織り込みにいくには、単月のデータだけで過剰反応かと思いますので、下げ過ぎるとリバウンドする想定でいます。

2年債

2年債の下限は、4.40-4.45%を想定しています。しかし、この赤い水準まで下がると、以前に年内利下げ3回を織り込んだ地点となるため、少し過度に織り込み過ぎかなと思うので、金利安も織り込みに近いかと考えます。



ドル円の金曜日の動きを見ると、米金利安を織り込み、テクニカル的にも160.300のローリバが機能している状況です。

私は現状の材料として、議会証言、CPI、PPI、夏の枯れ相場を基に、7月8日週のドル円の動きを2つのパターンで想定しています。

1つ目が、夏の枯れ相場に向けた調整です。

米金利が下落基調にある中、今後の利下げがメインシナリオとなるため、米金利高トレンドになるのはインフレ再燃がない限り難しいでしょう。現在の円安基調も、米国の利下げが始まると日米金利差が縮小し、円安の効果が弱まる可能性があります。そのため、この夏前に大口や中期勢のトレーダーが利確売りを仕掛けてくるかもしれません。昨年の7月7日から約7円下落した状況と同様に、今年も調整が入るタイミングとして良い時期かもしれません。

2023年7月7日辺り


2つ目は、円安基調が継続で米金利の動向に左右されるパターンです。

議会証言とCPIが主要な材料となるため、それまで大きな動きはないと予想されます。もしCPIまでに10年債が4.20%付近まで下がれば、そのタイミングでドル円の買いを検討します。また、CPIで金利安を織り込んだ地点でのドル円の買いも検討しています、良さげな押し目買いとしては、158.300付近のローリバを考えています。フィボナッチの50.0もありますね。

まずは、週明けの窓空き、仲値、香港、欧州時間入りくらいの動きを見ながら、下落が一服して円売りになるのか、もしくは160.300を試す動きとなるのかに着目していきたいと思います。仲値以降の動きを見ながらになりますが、日本時間の10時や11時台に160.300付近にくれば買いを検討します。



ユーロドルは、欧州の政治問題が和らいだことや米金利の低下により、じりじりと上昇しています。ECB forumで、ラガルド総裁の若干タカ派的な発言も、ユーロドルの下落を支える要因となっています。今週は欧州圏のCPI発表もありますが、主に米金利の動向に影響されるでしょう。

テクニカル的には、大きな三角持ち合いの中で下降トレンドを形成しています。ファンダメンタル要因(金利/経済状況)でもドル>ユーロですので、戻り売りを狙っていくシナリオを描いています。

日足のダウントレンドの転換点となる1.09000-1.09150付近の水平線を狙っています。このラインは6月6日以来の高値であり、ECBの利下げが行われた地点です。スイングとして狙いたいイメージですが、指標前の価格帯や影響度によっては抜ける可能性があるため、値幅やタイミングを調整します。手前の1.08500の直近高値も検討していますが、距離が近いためタイミング次第です。

CPI発表時がチャンスとなるでしょう。米金利安の織り込みでユーロドルの売りを狙うのが値幅を取れるポイントになると考えており、その価格帯が1.0900付近になればベストです。



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