【#fuwa自論私論】そこに"本気の姿勢と反省の念"はあるか【#運営に届け】
この記事は、2023年05月26日配信「ココチコ!FRIDAY」にて述べた内容を記事として書き起こしたものです。
はじめに
5月17日、18日の2日間、乃木坂46 1期生が出演する最後の公演となる「齋藤飛鳥 卒業コンサート」が開催されました。入場チケットを入手するべく、のべ63万の応募があったともいわれる公演は大盛況の中で幕を閉じました。
その一方で、その舞台裏でメンバーの今後を脅かす事態が起きていたのではないか、という懸念が浮かび上がっています。
乃木坂46のコンサートの演出を担当していた演出家のSEIGO氏がメンバーに対してパワーハラスメントに当たる発言を行っていたのではないか、という疑義が浮上しました。
その疑義が明るみに出たのは、去る5月21日、乃木坂46のメンバー 早川聖来さんが NHKラジオ第一の番組「らじらー!サンデー」に出演した際の発言です。番組には早川さんのほか、同期の田村真佑さん、レギュラーMCの藤森慎吾(オリエンタルラジオ)さん、ゲストMCの斉藤慎二(ジャングルポケット)さんが同席しました。
まずは、早川さんが発言した一連の内容についてお聴きいただきたいと思います。
お聴きいただきましたのは、ラジオ番組「らじらー!サンデー」の中で早川聖来さんが演出家のSEIGO氏について言及した一連の発言です。
今月開催された「齋藤飛鳥 卒業コンサート」についてのトークが展開される流れでこの発言がされました。
四者四様の "的逸れた対応"
本件に際して、各所で様々な対応が取られ、声明が発表されるなど、事態は目まぐるしく変わりました。
その対応には様々な議論がなされています。そこには、主に4つの場面で 的を完全に外れたとまては言い切れないものの、的を逸れた対応がなされているからです。
Case.1 乃木坂46運営委員会
放送の2日後となる5月23日、乃木坂46運営委員会は本件に際した調査の結果と対応について発表しました。
乃木坂46運営委員会が発表した内容は以下のとおりです。
この発表については、放送の2日後に演出家の交代を含めた対応までなされているという点については、評価すべきだと思います。
その一方で、この発表には大きく2点、理解に苦しむ点があることは否めません。
まず1点は、早川さんの発言の中で、かなり具体性をもって言及された「掛橋沙耶香が落ちたのはお前らのせい」という発言について、事実とは異なっていたという点です。
もちろん、この発言が事実だろう、と断定するわけではありませんが、この発言が事実と異なっていたとして、何がこの発言に至らせたのか。その因果関係が見えません。
公共の電波を使ったラジオ番組、それが生放送であり、なおかつ公共放送であるNHKでの番組であるならば、その影響力が大きいことは、早川さん自身も理解されているはずです。
その中で、事実の中に虚偽の内容を織り込むことのメリットがありません。たとえ99%が事実であったとしても、そこに1%の嘘が紛れていたとすれば、それは相手の名誉を毀損することにもなりかねず、発言の信憑性を著しく損なってしまうからです。
そうした状況の中で、これだけ具体的に言及されたということは、一言一句合致している、ということはないにしても、SEIGO氏によって類似した発言はあったのだろうと考えざるを得ない、というのが一般的な捉え方になるのだと思いますし、私もそれについては共感するところです。
そしてもう一つは「SEIGO氏より辞任の申し出」があったとする点です。
これについて世論の中では、乃木坂46運営委員会がSEIGO氏を解任できないのか、といった批判の声が上がっています。
これについて私なりの考えを述べさせていただきますと、おそらく「事実上の解任」あるいは「事実上の更迭」だったのではないかと思います。
少々本題から話は逸れてしまいますが、社会の中では、解任や更迭について、建前として「本人から辞任の申し出があった」とする事例が多く存在します。代表的なのは政治や経済の世界です。
一例を紹介しますと、昨年12月、当時復興大臣を務めていた秋葉賢也氏が政治資金規正法に抵触する行為があったという疑惑が浮上したことを受け、岸田首相が早期に大臣を交代させる対応を取りました。
この時も岸田首相は「秋葉氏から辞任の申し出がありこれを了承した」と発言していますが、対応としては辞表を提出させた、いわば「事実上の更迭」という流れになったのです。
最近では、野党・立憲民主党の小西洋之参議院議員が衆議院憲法審査会について「毎週開催はサルのやることで蛮族の行為だ」などと不適切な発言をしたことについて、小西氏は自身が務めていた参議院憲法審査会の野党筆頭幹事の職を辞任しました。これについては、立憲民主党の泉代表が「小西氏については、筆頭幹事の任を下りていただく。事実上の更迭とみてもらっても構わない」と踏み込んだ発言をしています。
このように、当人の不適切な言動により就いている職や任を解かれる際、たとえそれが事実上の「解任」や「更迭」であったとしても、本人から辞表の提出がある限り「辞任」と表記されてしまうのが世の常です。
当事者からもぜひ実態に即した表現でリリースを発表してほしい、というのが個人的な願いではありますが、それが実現する世界は程遠いものであると、悲観せざるをえないのが、このリリースの文言を見た所感です。
Case.2 株式会社USB / SEIGO氏
乃木坂46運営委員会が対応を発表した翌24日には、渦中のSEIGO氏が所属する株式会社USBが自社の公式サイトで以下の通り声明を発表しました。
正直に申し上げますと、この文章に様々な疑念を抱かざるを得ないのは言うまでもないかと思います。
まず、この声明のタイトルを原文ママで読み上げますと「5/21(日)放送 NHKラジオ第1「らじらー!サンデー」における早川聖来の発言につきまして」とされています。
これは言うまでもありませんが、早川さんは乃木坂46合同会社に所属しており、株式会社USBの所属タレントではありません。おそらく、乃木坂46運営委員会の声明のタイトルをそのまま使用した結果なのだろうと思いますが、このタイトルからも 事の重大さ、当事者ならびに聴取者に対する理解、配慮が欠如していると言わざるを得ません。
またもう一点、本来の論点とはすり替えられている点もあります。
本件の最大の争点は SEIGO氏が 今月開催の「齋藤飛鳥 卒業コンサート」のリハーサル期間において、メンバーの転落事故に言及した発言を含め不適切な発言を行ったのか です。
本来、この争点に過去に適切な発言を行っていたのかという点は無関係であり、事故発生直後の現場に立ち会っていない早川さんがSEIGO氏の発言内容を誤解したとして、本件について責任転嫁していると捉えるほかない、冒涜とも言える声明であると考えられます。
言葉の取り方というのは、発する者とそれを受ける者で異なる解釈となってしまうことは避けられません。そして、その解釈が変わってしまうこと、それは受ける者の責任になる、ということはまずあり得ません。
受ける者は自らが見聞きした言葉のみで意思を汲み取る必要があります。そして、それに汲み取りきれない意思があったとしても、それは発する者が必要な要素を伝えていなかったことに由来するものですから、誤解を生んだのであれば、それを受ける者が意図的に汲み取らないという意志を示した場合を除いては、まず発した者が一定の責を負うべきです。
かつて、この言葉の取り方を巡って、重要なメッセージを残した方がいらっしゃいました。その方のメッセージを、関係者を含め、皆様にも今一度 胸に刻んでいただきたいと思います。
先述の乃木坂46運営委員会による声明、そして株式会社USB 及び SEIGO氏による声明には、この「受け手が発言者と異なる解釈を取る」という当たり前の前提に立っておらず、結果として発言者が本来負うべきすべての責任をある程度取り払っている、と考えざるを得ません。
この前提に立てない以上は、また同様の事案が繰り返されるのではないか、と懸念しています。
Case.3 NHK(日本放送協会)
議論の発端となった早川さんの発言が行われたラジオ番組「らじらー!サンデー」は、2015年4月よりNHKラジオ第一にて全国に放送されています。
また、それと同様にNHKのインターネットラジオサービス「らじる★らじる」にて同時に配信され、また放送から1週間の間は無制限で聴くことができる「聴き逃し配信」も行われています。
しかし、NHKは当該の放送回について、現在に至るまで聴き逃し配信を行っていません。
先ほど皆様にお聴きいただいた早川さんの発言部分については、当方で放送時間帯に同時に録音したものから抜粋しましたが、当時は「齋藤飛鳥 卒業コンサート」のリピート配信の最中だったということもあり、多くの方は発言があったことを後に知ることになりました。そして、その内容は伝聞でしか知ることができず、さらに憶測を広げる事態になってしまいました。
これについて24日に行われたNHKの山名メディア総局長による定例記者会見で記者から問われた際、担当者が「総合的な判断で配信をしておりません」という回答をしています。
一方でNHKは自身で定める国内番組基準の中で前文にこのように記しています。
また、第1章の「放送番組一般の基準」においては第5項の1において「意見が対立している公共の問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにし、公平に取り扱う。」とも謳っています。
今回の一連の問題が"公共の問題"に当たるかどうかは議論の余地がありますが、放送基準に照らして考えますと、この配信停止については疑念を抱かざるを得ないのも一理あります。
NHKはこの配信停止について「総合的な判断」としか言及していませんのでこれ以上考察することは難しいですが、これが仮に何らかの組織等からの配信を認めないとする関与であったとするならば、それは公共放送たるNHKが謳う「何人からも干渉されず、不偏不党の立場を守って、放送による言論と表現の自由を確保し、豊かで、よい放送を行うことによって、公共の福祉の増進と文化の向上に最善を尽く」すという立場を自ら放棄することに繋がりかねません。
そもそも番組内では、この放送回が放送終了後に「らじる★らじる」を通じて配信される旨が案内されています。つまり、この放送回も通常と同様に配信されるはずでした。
しかし、現在に至るまで配信は行われておりません。どのような事情があったのかは定かではありませんが、何らかの動きがあったのは間違いないのでしょう。
NHKは放送法第15条によって「公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内基幹放送(国内放送である基幹放送をいう。以下同じ。)を行うとともに、放送及びその受信の進歩発達に必要な業務を行」うことを目的とする機関とされています。
放送された番組、また提供されているインターネットサービスはすべてこの目的の達成のために提供されているものであり、NHKはこの目的を達成する義務を背負っています。
もし、この義務を果たすという考えがあるのであれば、具体的な説明のないまま配信を中止するということは避けるべきだったのではないかと考えています。
Case.4 卒業生ほか関係者
本件に際して、卒業生をはじめとする関係者がSNSにて言及したという話題が上がっています。
既にオリジナルの投稿が削除されていますので正確に確認することはできませんが、そこでは、「そのような理不尽なことを言う方ではなかった」「今の子達には違うように聞こえるのかもしれない」と、SEIGO氏を擁護しているとも解される言及があったとされています。
過去がそうであったのもまた事実なのだろうと思います。それを無理に否定することはしません。
ただ、現実問題としてそのような発言が直近にあったことが事実として認定されています。それが事実となった時、SEIGO氏は"加害者"となり、また現役でグループに所属して活動するメンバーたちは"被害者"となるわけです。
結果として"加害者"に対して擁護する言及となってしまったわけですが、それよりも憂慮すべきなのが「今の子達には違うように聞こえるかもしれない」というコメントがあった点です。
卒業生も含め関係者が「今の人」ではないと扱っている点も悲観するところではありますが、何より 現実問題として時の流れに順応できていない、あるいは一般的な感覚に沿わない環境であることが露わになりました。
"指導"として許容される発言にはいつの時にも限度があり、それを逸脱する発言というのはいつどのような時代であっても許容されません。再三申し上げていますが、その言葉を受け手がどう捉えるかは受け手次第ですし、それにより心身に影響を来すようであれば、それは発言者に問題があると捉えるのが一般的な解釈です。
かつて、平成の時代や20世紀の時代には、1つの愚行・不祥事を99の善行によって償えるという時代があったのかもしれません。
しかし、少なくとも現代は1つの愚行・不祥事を99の善行で償うことはなかなか認められない時代となりました。ましてその発言により"被害者"がいる、ハラスメント行為に当たるものであれば、その発言はいかなる言動によっても完全に償うことはできません。
現に「齋藤飛鳥 卒業コンサート」の前後に一部のメンバーが中長期的な体調不良により、最後の1期生の最後の公演への出演が叶わない事態になりました。また、過去にも公演の前後でメンバーが体調不良を訴え、結果として長期的な休業に繋がった事例もあります。
これが幾度と続いたというのは非常に憂慮すべき事態でありますし、その原因がある程度解明できるであろう事態であるにもかかわらず、二度三度の休業を防ぐことができなかったという点において、マネジメントを務める乃木坂46運営委員会は十分に検証すべきでありますし、それが立て続けに起きている状況を「今の子達には違うように聞こえるかもしれない」という一言で片付けられるものではないということを、ステークホルダー一同には深く理解していただき、自らの感覚を改めていただきたいと思います。
もちろんこの言及によって過去の活躍がすべて否定されるものではありませんが、少なくともこのコメントについては十分反省し、自らを改めるべきなのだろうと思います。
求められるのは"本気度"
乃木坂46をはじめ、坂道シリーズと呼ばれる各運営委員会のマネジメント体制については、これまでにも疑義が生じることがあり、その度に議論を呼んでいました。
特に2019年8月、日向坂46のメンバーとして活動していた柿崎芽実さんがストーカー被害を理由にグループを卒業した際には、私からもその対応の本気度を問う投稿をいたしました。
その中で私は、同月に発表された「ファンの皆さまへのお願い」とする声明発表について、そのような「注意喚起」では不十分であり、もっと厳しく、強気の姿勢で望むべきである、という主張をいたしました。
このときの主張については、今もその姿勢に変わりはありません。それは、第二、第三の事例を生まない、メンバーへの被害を"減らす"のではなく、"無くす"ためには、さらに抜本的に強化した対策が必要であるという考えからです。
ただ、この時から約4年の時が経ち、現在もストーカー被害事案の根絶には至っていません。今年2月にも同様の"お願い"と称するリリースが出されています。そこではこのように記されています。
あれから4年が経ってからのこの文章に私は憤りを禁じえない点があります。それは、「今後は当該行為について、発見次第直ちに警察に通報の上、関係法令に則り、然るべき対応を行ってまいります」という部分です。
4年もの時が経てば、「警察に通報の上、当該行為を行った人物の処罰が行われた」といった対応の完了を示す声明発表があって然るべきだと考えています。しかしながら、それには至っていません。
ストーカー被害事案の対応の難易度が高いことは理解できますが、4年間もメンバーを苦しめ続けている事案に対して運営委員会・マネジメント部門が及び腰になっているのではないか、という考えは禁じえません。
話題が若干逸れてしまいましたが、メンバーが被害を受けている事案に際して、その度にファンをはじめとする世論が運営委員会・マネジメント部門に対して一番求めているのは、その事案への対応の"本気度"です。
今回の演出家SEIGO氏による不適切な発言に際して、乃木坂46運営委員会は演出家の変更という対応こそ発表しましたが、これはある意味で対応の"はじめの一歩"にすぎないわけです。
SEIGO氏の発言によって不快の念を抱いた者、それにより思うような活動ができなくなった者、夢を諦めた者、様々な影響を受けた人がいます。
その人々への対応として 演出家の交代のみで対応が完結しようとしている点を私は憂慮しています。それは自らの経験も踏まえたものです。
私が先日 22歳を迎えた際に発信したメッセージの中にこのような記述をいたしました。
ここで述べました通り、私も昨年、他者による自らへのハラスメントにあたる言動によって心身の状態を不安定にした経験があります。
今でも当時の記憶がフラッシュバックすることがありますし、それが要因となって一時的な体調不良を引き起こすタイミングもあります。できることであれば思い出したくもない記憶でありますが、前を向くために都度向き合わなければならない現実でもあります。
今回のSEIGO氏によるメンバーへの不適切な発言は、メンバーに対して長く苦痛を与えるものであることは言うまでもありません。
そのメンバーに対して、どのような対応をしていくのか、ケアを行っていくのか、演出家の交代によってメンバーに新たな苦痛を与える危険性は完全に排除されたのか、これについて公式発表による言及はありません。
この疑義が払拭され、メンバーが今後 不安なく活動できる環境を早急に整備することが求められているはずです。
乃木坂46運営委員会には、速やかに対策を講じるとともに、そのようなファンはじめ世論に真摯に向き合い、必要な対応を取ることを切に願います。
私たちの反省
今回の一連の出来事で、私たち自身も反省すべき点があるように思えます。
ファンという立場の人々は本来、グループやメンバーを贔屓するだけでなく、その活動を外から見守り、応援し、支えることが役割のはずです。
しかし、この役割を十分に果たしきれなかった結果、メンバーの休業や長期的な体調不良を防ぎきれなかったのではないか、と思うのです。
これまでにもメンバーの発言や発信する文章などから"SOS"とも捉えられるメッセージが発信されてきたという指摘があります。今振り返ってみれば、その指摘は真っ当なものだろうと思います。
もちろん当事者間により解決されるべき問題であることではありますが、私たちも日頃から受け身になるだけでなく、何か不審に思う点、心配に思う点があるとすれば、その時々に声を上げて要望を伝える、ということが必要だったのではないか。グループやメンバーの活動を外から見守り、応援し、支えるという役割を果たすためには、それも一つの手立てである、それを果たしきれなかった。それが私の思う、私たちの反省です。
おわりに
先週、「齋藤飛鳥 卒業コンサート」の振り返りも兼ねてオンエアした楽曲があります。
今回の事案に際して、様々な自問自答をした時、今 メンバーに届けたい一曲があります。それがこちらです。
私たちファン一人ひとりが持っている力というのは極めて非力であり、一人の行動姿勢を変えることで事態が良い方向に向かうわけではないことは理解しています。
しかし、我々ファンが一枚岩となって何らかの声を上げてまとまって動くことができた時、本当の意味でファンの役割である「グループやメンバーの活動を外から見守り、応援し、支える」ことを果たせるのだと思います。
様々な議論が蠢(うごめ)くこととなった今回の演出家 SEIGO氏による発言問題。乃木坂46の今後のグループ活動がより良いものとなるために、運営委員会、外部関係者、そしてファンが本気で向き合い、事態の改善に向けて動くこと、そしてメンバーが最良の環境で純粋に夢を追い続けられる環境が一分一秒でも早く整備されることを切に願っています。
この記事は、2023年05月26日配信「ココチコ!FRIDAY」にて述べた内容を記事として書き起こしたものです。
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