太陽
私は夜になり寝床の中で一人になるとある出来事を時々思い出し涙が泣き袋に貯まるのが分かる事がある。
そんな時は私は自分に頭の中だけで語り継ぐ、まだ何も知らない朝という存在によってこれから生まれる自分に………
今日は珍しく余りにもショックさがフラッシュバックする。
一旦自分の頭を整理するため適当なノートとペンをもつ。
「なーに、例え書いちゃダメなのとこでも後で消せばいいじゃん」そう小さな声で自分に言い聞かして感情のままにノートに書き出す。
腐った生々しい匂いが鼻を通してここが現実だということを改めて脳に焼き印を突き付けてかのごとく只ひたすらに辛い。
まだ、夢だと思いたいまだ目の前のものが偽物だと信じたい。
それでも目の前にあるものは数週間前まで力強くて自分に生きる理由をくれたあの大好きな人の遺体。
黒い服装を着たデカブツに囲まれ、白い服を着たあの人は箱に入れられる
それの光景を見ていた人は回りの人たちに何かを告げていたがそんなものは私の耳には響かなかった。
それから数時間………いや、私には数年間の月日にわたって虚無感に囚われた感覚になっ た。
もう、何も考えたくはない。
その日の夜、布団に潜り込み、もはや自分が何も考えて何を感じているのかがまるで分からないまま眠りについた。
それからしばらくすると、ある夢を見た、それは何者かに追われてそれからとにかく逃げる夢だと思う。
どこか見たことある景色が目に映り後ろからは一度も聞いたことのない沢山の声が後ろから怒鳴り散らしてくる。
しかし、走ってるという自覚はなくただ恐怖におとしこまれ逃げてる感覚だけ後に疲労感に倒れ一瞬の安堵も束の間。
今度はベッドに横になっていて、だんだん体に違和感をもちはじめると、どんどん自分が小さくなっているのが分かってくる。
後ろからはさっきよりでかい声と激しい振動のなか沢山の声がこっちに向かってくる。
逃げようとすればするほど体が動かない、終わったと思い全てを諦め目を閉じると、目が覚めて自分の部屋のベッドで何事もなかったように起きた。
「なんか凄く悲しい夢を見た気がする…」
そう呟くと一階に降りて朝食をとりいつもの幼稚園に向かう。
その後も何事もなく過ごしベッドに入り目が覚めると元の場所にいた。
振り向けばお母さんがいた、どうやら起こし にきてくれたようだ。
私が起きたことを確認すると
「おばあちゃんにバイバイしにいくよ」といってあの人の元にいく。
そこには奇妙な程にキレイに並べられた沢山の椅子の奥に昨日に見た箱がある、私は何も感じることができないままお母さんは優しい言葉で「あそこにがおばあちゃんがねているよ」長方形の箱に指をさしていってくれた。
私には「まだ生きてるよ」といってるように感じたので、その言葉を信じ、前に進み扉を開けて顔を覗いた。
それは寝ているように見えるかもしれないが私には腐りおちて死体特有の冷気がフィルタ越しに伝わりここが現実なのだと感覚的に突き付けられ、小さな脳がそれを理解したころに涙が出始めてそこからは全てが感情にとられ気がつけば部屋に戻って三角座りをしていた。
何が起こっていたのか、自分が何をしていたのかまるで記憶がない
両親はいそいそと何かをする準備をしている。
女性の声が私に「おばあちゃんのお骨を取りに行くよ、来る?」と言われ顔を横にふった
それから本当に誰もいない孤独の時間が幼稚園年中のまっただかの当時の私に突き付けられる。
最初に何で死なないといけないの?という生まれとっさに周りに聞こうと思うにも聞く相手がいない、ホネを取りに行くってどこに?などの色んな疑問が出るまるで息を吸ってから吐くまでの一瞬に10以上の疑問がでた、これが延々と続く疑問の答えをどうにもならない頭で考えて答え続けた。
無論何の疑問を持って何も答えたかは覚えてこそはないがそんなことがあったのは覚えている
その後、あんな泣きわめいたあの頃の私は10数年たった今でもその場にいた人全員が鮮明に覚えられているらし
とたんにペンが止まった。
最後の一文字を書こうと思うと体が何故か手が動かない、というより動かそうともしない。
気が付くと書いた紙には複数の濡れた部分がある。
そっと手を頬に触れると指先が濡れることが皮膚を通して理解できる。
「また………か」その震えた声は結局誰の耳にも届かず、月や星は無邪気に輝き、沈んだ。
結局残ったのは思い出したくないことを思い出したままの自分のみであった。
顔にクマができているとかそんなものはもうどうでもいい。
ふと外にでて空を見上げると空は雲一つもない、その中に太陽がぽつんとある。
それを見て自分と重ねて見てしまう私がいた。