たいぼく

 空白の空間 そこにぽつんと生まれた命、これがまともに育たず体だけが大きくなり次第に嫌われものとして育ったた。

 たったそれだけ………

 それだけなのに、とあるちっぽけな生き物はこの醜い体を壮大に話す輩がいる。

 それはたった数秒で仲間を殺し、この体だけは皆避けていたコイツラがタカリ始める前のデカブツ共もこの身を漁らず、皆を好み殺すが次第に消えていったのも記憶に新しい。

 数時間後は皆を殺したあと俺には変な物体を巻き付け、気持ち悪い位におんなじことをして、去っていったそれからというもの変な輩はここに定期的に来るようになった。
 ある時は皆を殺し、ある時は俺だけを集団で来て去ってそしてまた消えていった・・・



 ある日、奇妙な数秒に出くわした。
 それは奇妙な生き物でうまれて初めてこみゅにけーしょんというものをした。
 「ねえ?おじさん、喋ってみて?」
 突然奇妙な生き物は俺を触ってそこから何かが聞こえた、喋る?なんだろう

・・・

 「なにかを伝えたいと思って」
 ・・・?

 「うーん、僕の真似をして伝われ!って思ってみて」

 「伝われ?なにを行っているんだ?君は?」

 「伝わった!良かった!」

 「だからなんのこと言ってるのだ?」

 「うん、ちょっと僕も初めて君みたいな木と話したんだ良かった!・・・」

 「わからん」

 「それでいいんだ、ねぇねぇ、君は今何年生きてるの?」

 「100年かな?」
 と、年の感覚なんて、考えたこともないのでテキトーに流す

 「なるほどね10000年か………相当嫌われてたんだね」
 笑い?ながらそんなことを言われたが、いみが良くわからなかったし、恐らくあちらもてきとうだろう。

 「ああ、誰も俺のようなやつには誰にも触られてなかった」

 「じゃあ、僕が初めてなんだ」

 「いみがよくわからんがそうなんだろう、多分」

 「ねぇ、きいていい?」

 「ん?」

 「僕がここに来るまでにどんなに生き物がいたの?」

 「いきものか・・・それって動いているものというものでいいのか?」

 「うん!」

 「ならば、最近見た一番奇妙で無様ないきものを話そう」


 ふとこの約、百年間思い出すと一番に思い出すのは、目の前を見ると、いろんな鉄の箱があって、そこから二足歩行の奇妙な生き物が行ったり来たりして、はびこっている姿。
 地面から何から何まで我が物顔で自然を道具のように弄び、我々が少しやり返すだけで自分勝手に悲しむだけではなく怒りを覚える、非常に自己中心な生き物で生きる者たちがいた。

 「どんなことをしたの?」

 「例えばだな・・・」

 そりゃ何万本の仲間を切り落として醜い姿に変えて飽きたら捨てる、そして風のうわさによるとちいさな生きてるものを必要以上に殺害して要らなくなったら燃やしたり、只箱に閉じ込めて死ぬまでの過程を見て笑ったりしているとか。

 ただデカくていともなくバランスを保っていた時期もあったがそんなことよりも箱ができて箱から箱によってかかって来る者たちが断然恨みと怒りがある。

 歪に育ったとき真っ当に生きた仲間が切り取られていきなり同じような歪な仲間に指を指して「先輩、これ、どうします?」「ああ、それは使い物にならんからほっとけ」と
いう会話があったり、して仲間や、似ても似つかない生き物を閉じ込めて生かすだけ生かしてから殺す。
 そんな輩だから海や地面が少し動いただけで当たり前に帰って来る、正しく因果応報に来る大掃除、あまりにも危機感のないバカで鈍感な動物から死ぬ生態系の整備。

 それすらも拒み、怒り、悲しみや恐怖に塗りつぶし生きることしか考えず定期的に小さな集団を集め移動を起こし戻っていったり態度が変わらず寧ろ悪化したり。

 もうあれは生き物とは言いたくもない、小さな一匹ずつが細胞としたら異物で怪物そのもの。
 鉛を浮かし、鉄を自発的に動かしたりとやりたい放題、これが異界の空が残したじっけんたいというものかと思ってしまう。

 「そのじっけんたいってどうなったの?」

 「ああ、それはだな」


 20年位の間この地をふんぞり返り様々な命を弄び牛耳ってきたそれは異界から新しい生き物を降らしたのが最後だった。

 それは怪物にとって天敵だったのだろう、たった一つの大きくて黒い物が海に落ちたような気がした

 それからものの数秒で大量の巨大な虫が箱に向かって進行してむさぼり食う、これが最後だった

 

 「巨大な虫?それっていまも生きてるの?」

 
 「ああ、いると思うわかんないけど」

 彼女は地面をみて土をいじり始めた。暫くすると、彼女こういった。

 「わかんないけどこれのこと?」

 あんなにデカかった虫がここにいたら流石にきず・・・
 いた、本当にいた、彼女の手のひらサイズに収まっていた。

 「こんなのより小さな生き物を食っていたのかー世界は思ったより小さいなー」

 「お前がでかいだけだろ」

 「いやいやあなたのほうが断然大きいよ」

 「ここまで来ると辛いな」

 「何で?寧ろラッキーじゃん」

 「らっきー?」


 「ああ、ラッキーというのは幸せのことだよ、ここまで何億年の歴史を実際に見てきた生き物なんて僕が知る限り君しかいないよ」

 何億年・・・か・・・

 そんな月日というものはよくわからぬものだ、いま何年生きているのかすら感覚しかなかった

 「そういえば君はどんな人生歩んだんだ」

 「僕はね・・・」

 僕はよくわかんないけど物心がついたときには誰もいなくて只怖かった、周りをみても緑しかなくて………
 しばらく歩いていると謎の感覚が体に出たんだ
 
 「謎の感覚?」

 「なんだろ、体の柔らかい部分からジュワっと痛いとも言えるような言えないような得体のしれない感覚が体を襲われたんだよ」
 そして立つのもどんどんとしんどくなって低姿勢をつくって下を見ていると何かが動いていたんだ。

 思わず、それを掴んでみると9本の動く棒がついている丸い物体でそれを見れば見るほど自分の体から水が落ちてきて気がついたら、体の中に入っていたんだ、それもへんな感触で砕けば砕くほど水っけがまして、感じたこともない思わず出したくなるようなでも出したくないような感じでいたら気がつくと体内から消えたんだ。

 「それって何という行動か知ってるかい?」
 「うん、しょくじっていうんでしょ?」
 「ああ、よく知ってる、ね誰に教わったんだい?」
 「えーと・・・」

 確か突然声が聞こえて来たんだよ
 「声?」

 「おいしい?」
 「それは食事というものなんだよ」
 「それってどんな味?」
 みたいな感じで。
 「・・・?」
 僕も正直何を行っているのかよくわからなかった、ただ怖くて耳が痛くて、手を耳で抑えたんだ、すると・・・
 「うるさい?僕は何もいってないのに?なんで耳を塞ぐの?」
 ・・・
 「そうか・ ・ ・だもんな ・ ・ ・言葉を与えるよ」
 「ふがぁぁッ!」
 きゅうに頭から全身に痛みが広がっていく。
 感覚としては全身が締め付けられるようで、もはや誰かにつよく握られているような、または内心からナニカが飛び出しそうなそのせめ際で藻掻きたくてももがけず動くことも許されない。

 暫くすると痛みが次第に引いていき、見えていた景色の正体に名前がついているような気がした。

 「さて、質問だ、目に見えているもの緑色のものはなんだ?」

 「………草」

 「そう、そして食事や味、味覚という言葉もわかるだろう、君は晴れて自由の身だ好きにしろ」

 その言葉を最後に水に浸かったとこから、抜け出したかのような感覚と同時にプツンと僕の中のなにかが途切れた。
 「ということがあったんだ」
 「そんな体験が………」
 
 しかし、彼女に知恵を与えたのは一体何者何だろう、巨大な虫を送った輩と関係があるのだろうか………


 「ふと、なまえということばを思い出して気になったんだけど、おじさんってなまえ、あるの?」
 「ん?どういうことだ?」
 「ほら、他の草とかはシタカタソウとかヤッキとかあるじゃん!おじさんもあるの?」
 
 なまえ、かぁ、もう無いと思ってた………気にしたこともないし・・・
 「もしかして?忘れた?」
 「というよりそういう君は名前、あるのかい?」
 「僕?うーん・・・」
 恐らく考えたことも、聞かれたこともないのだろう相当頭を抱えてる。
 「お前もないのか・・・」
 頭を力を抜いたように落とし、頷いた。
 「ならば、お互い様だな」
 彼女はそのまま、大きく息を少し吸い、そして吐いた。
 
 「ならば、お互い名前を作ろう」なんて突発的なことはとても言いづらい。
 「じゃあ、さ、僕の名前つけてよ、僕もおじさんのなまえ考えるからさ」
 「えっ」そんな言葉をかけられて失っていた記憶がふと、復刻される、「あなたずっと一人?名前は?そっか・・じゃあつけてあげる、名前は・・・」
 
 「うーん、いったのはいいけどなんてつけよう………でかき?ビッグウッド?ファザーテレサ?」
 「きみ、真面目に考えてる?」
 「そっちこそまだ一個も言ってないくせに!じゃあなんかいったら?さぞかしいいネーム出るでしょうね?」
 とキレ気味に返されたそんな言葉言われてもなんにも思いつかないのはお互い様ではある。ここは少し、とぼけよう。
 「ちょっと別の事を考えててえっとなんだっけ?」
 「ああ、もうだから、なまえだよ考えてね」
 「ああ、名前ねうんうん」
 「というより何を考えてたの?」
 「記憶の彼方に飛んでいったはずの記憶がふと思い出してそれってなんだっけなー、て」
 「ふーん」
 想像通りの返事が帰ってきた。正直そういうのってどうでもいいし恐らく私自身も同じ反応する気がするだろう、だからあえて突っ込まず名前をつけることに集中しよう。
 「ねえ?・・・あなたまたでかくなったねあなたみたいな木なんて見たこともないわ」
 やっぱりどんどんと失っていた記憶が蘇る、私の名前以外が。
 「うーん、小枝まといくん初号機、草ハエソウ木………んー思いつかなーい!」
 思わずふっなってしまうほどのネーミングセンスを横に私がかつて若木のとき初めて動物に出会った記憶を思い出せそうとする。
 

ー約200億年以上前ー

 無邪気に走り回る少女、通り過ぎては舞い戻って、こちらに注意が向きこちらに向かってくる。
 「ねぇ?君一人?仲間は?ずっと一人?名前は?」
 「ないよ」
 「そうか・・・じゃあ名前を付けてあげるね、じゃあ名前は・・・」
 あのときは自分の存在の証明というものが欲しい物であることを気づかせてくれた見返りなんて出来ないがその分精一杯生きようと思った。
 しかし名前何故か思い出せそうで思い出せない、何だっけ………
 とりあえず続気を思い出そう。
 「ねぇ、・・・君には口がないけどどうやって生きてるの?栄養は?」
 「俺自身もわからない」
 「まぁ、返事出来ないよね、口もないし・・・」
 言ったのに………寂しいなぁ
 「でも、話したいなーどうしてもどうしたら話してくれるんだろう?あ!そうか!」
 なにかを思い出したように彼女は立ちあがり自己紹介を始めた
 「私はイヴァ、クラシス帝星から来たの、仲良くしてね!」
 「イヴァ…」
 「そう!イヴァ!」
 「え?聞こえた!?」
 少し嬉しく思わせぶりでもいい、希望は捨てたくなかった 「もう私がおかしくなりそう、話せるはずもないのにいったっと思って言ってそうなことを言ってみただけだし風も吹かないし………」
 「あ!イヴァ!ここにいたのか!もう調査が終わったからクラシスに帰ろう」
 「え、ヤダ!ヤダヤダヤダ」
 「駄々こねないのってあの木は………ここにあったのか………少し実験のために拝借を………イッツ!おい!イヴァ!何をした!」
 「てへッ」
 「………ったく」
 「じゃあね!アダブ!君は一人ぼっちじゃないからねー!!!」
 ああ、思い出した、俺の存在の証拠を……
 ここまで長く短い記憶の旅だった。
 彼女の名前を借りよう、彼女の名前は………
 「・・・エバ」
 「落ち葉ない丸3001号!………ん?今、なんて?」
 「エバだよ、君はこれからエバと名のりなさい」
 「エバかぁいい名前だなぁ」
 「そして私の名を思い出した………アダブだ」
 「素敵な名前………」
 するとアダブはその場にいる誰よりも光を放ち、一人の青年となりました。

 「え、ええ!!?」
 「ん?んん"ん"??」
 それからというもの残った切り株は石化し二人は孤独という束縛から開放され自由を手に入れました。
 とわいえ、植物と動物と海しかないイートと呼ばれている星でも最初は幸福そのものであったが、次第に退屈へと変貌してしまった。というもの彼らは寂しさを感じつつあった。特にアダブである、なんだかんだいって動物が好きではあったのである。
 「生き物、いないね」
 「そうだな」
 「寂しいね」
 「そうだな…」
 「作れない?子供…」
 「我々からは種族が違いすぎるがゆえ、作ることができん・・・しかし、可能性を創る事なら出来るかもしれない」
 「それって・・・」
 「………」
 アダブは沈黙を作り解答を待った、微かな希望と多大な絶望を抱えながら…視野に映る景色は暗く、見るからにザラザラしていて代わり映えのなく生物もいない、何処か懐かしくも根拠のない恐怖と寂しさが蘇るかのようだった。
 「………」
 エバも人生最大の二択迷路に迷い込んでいた、どちらにせよ希望は薄い、生き物を作るということも解らず失敗を恐ることしかわからなかった。
 ふと、自分の人生を振り返る・・・

 自分と同じ形をした生き物なんていなかった………他の者にはあったのに自分にはなかった、唯一理解出来なかった単語の「孤独」その意味がようやく理解出来てしまった………
 私はないものねだりで誘ったのはいいけど出来ない、心中しかないのかな。

 この人生は本当にこれで良かったのかな・・・
 只の空の幸福で本当は偽物なのだろうか?
 「ねえ」
 「心は決まったか?」
 彼女は顔を振ったあとに言葉を紡ぐ
 「ふと人生を振り返って思ったんだ。多分、空の人生だったけどほんとうに楽しい思い出しかない、この思いはここで終わらせたくないって………」
 彼女の顔がくらんでいき、空気がどっと伸し掛かり、晴天の空が二人の体力を蝕んでいくような感覚を得るくらいの時間を過ごし、小さく低い声が「わかった」とたった一言を聞き取るには十分な環境だった。



 そして、二人はこれまでに起きたこと、全ては後に本と呼ばれる書物にまとめあげられ、それを神話と呼ばれた

 二人のその後は描かれていない・・・


4000億年という時間を地球は過ごした

 「・・・」
 とある、学者が一つの大木に手を翳す。
 「先生、なにをしてるんですか?」
 「神話にあっただろ?一人の女性が木と会話したという話し」
 「ああ、その話ですか………でも、最古の本なんて文字が存在するわけないし残せないでしょう」
 と助手は笑みを浮かべ、語りかけてくる
 「でも、この大木は偶然ではなく、誰かを待ってる、そんな気がするな」
 「ロマンチストなんですね、先生は」
 「まぁ、俺はなぜかあの神話と出くわすんだ、だから、考古学になって助手が出来た、ラッキーな人生だと思う」
 「そうですか………それはわたくしも嬉しいです!なんだか褒められたようで・・・」
 「そうか、さて、この先に遺跡があるはずだ。さて、山登 り再開するぞ」
 「はい!」
 暫く万里の長城よりも過酷な道のりを歩き続け、見えて来たのは一つの洞窟だった、確信はないが恐らくこれが世界最古の遺跡なのだろうか………
 よく見ると人工物に見えるような門らしきものがあり、念の為中に入る。
 「はいるぞ」
 「ええ・・・」
 「世紀の発見かも知れないんだぞ!いくぞ」
 「分かりました」
 電線とへルメットにランプをつけ、遺跡かも知れない、洞窟に入る、本能にある恐怖心くすぐられる感覚を噛み締め、強い一歩を踏み出す。
 暗闇に光を灯したときの気持ちが軽く現象をうけつつも洞窟特有の泥臭い匂いが緊張感を奮い立たせる。
 文字や絵がないかを目すらひからして隈なく目を通す。
 ぽいものはトンカチを使い、慎重に掘る、ロゼッタストーンなるものかもしれないものに傷を入れないようにやるとき、体が重く、心臓に強い負荷がかかる。しかし自分の中にあるちゃんとしたものを掘り起こしたときのカタルシスを味わいたいがためにここにいる。
 
 いつもこういうときの先生は周りに与える緊張感を強く与えながらもなぜだか楽しいと思わせる不思議な雰囲気を持っている。
 わたくし自身も、その雰囲気を常に間近で感じることが出来る人生に改めて感謝をしつつ、目の前の事をしっかり取り組んでいこう

 高温のジメジメとした空間の中カンカンッ!と音だけが鳴り響き最後まで諦めず、汗水垂らしている男二人の姿があった

 カンカンッ!カンカンッ!バリッ!
 「お………」
 ふっと心が一層軽くなり助手を呼ぶ
 「おい!」
 すっと駆け寄り、よく見つめる
 「これを君はどう思う?」
 「やってみましょう!」
 「ああ!だが慎重にな」
 「はい!」
 泥臭くも、心臓に負荷がありつつも明るく今ならどんなことをにも対処が出来そうな精神的な体の軽さで堀り起こしを再開する。
 砂利を払い、砂の匂いが肺で膨らんだ感覚をかんじながら 岩石を慣れた手付きで緊張感を握りをひと削りひと削りに沢山の思いで叩く、その様子は正しく一つの大切なものを守るために存在する家をなど作るを一昔の大工そのものだった。
そうした濃密な空白の時間を超え、そうしてでてきたのは一人の人間?いや、二人が描かれたあの神話の続きらしき壁画だった。
 「こ、これは……でかい……本物だ!やったぞ!歴史的発見だ!」
 抱き合う二人、写真を取り、本部へ送る。
 後は迎えを待つのみだった。
 「よし、今日は昨日休憩したあの大木のもとにするぞ、ここらへんじゃ休憩するにも辛いしな」
 「ですね!」
 いきはよいよい帰りは怖いという言葉を体現したような暗さで最後まで気が抜けないのがこの仕事険しい山道を下り命を張ったこけるだけならまだしも、死者が出るなんてことも偶にある、危険な開拓の仕事に安息なんて存在しない。
 空気はすみ、我々をよく見るために満天の星空が来てくれていることがまだ幸いしている星たちが飽きないうちにあしを急かす。
 「雨が降らん内に休憩所に急ぐぞ」
 「はい!」
 奇跡が奇跡を呼び、無事に休憩所についた。
 急いでテントを組み立て、鈴が自動でなり続ける装置を取り付け、ライターで焚き火をする、近場で寝転びそらを見上げる。
 その光景は正しく絶景の一言、思わず息を呑む、そのまま寝ることを忘れそうで体が本当の意味で安らぎを得たように力が抜けた。
 「月って太陽より太陽のような存在ですよね……」
 ため息交じりの声が耳に透き通るのは造作もなかった。
 「そうだな…今日はしっかり休め、明日のことなんて明日の俺たちがしっかりやってくれるさ」
 「わかりました………」
 長い時間をともに過ごした男二人が見た景色は達成感をより強く噛みしめことが出来るようなご褒美の時間であった。
 この空は皆に同じ顔を平等に見せることなんてしない、同じ快晴の空でも当人を嘲笑いように見せたり、残酷に雨なんて振らず自分の心だけに雨がふることもある。
 同じ、雨でも喜びを運び、人々に幸福を与えるだろうし、また同情して無邪気に心を追い詰めることもある。
 そんなことを胸にひめ今により一層感謝をして、眠りにつく………


 すると、何故か目の前に大木があり、思わず木に触れる。
 もしここが夢だとするなら・・・
 「久しぶり」
 「え、喋った?木が?」
 「うん、と言っても夢のなかだし、明日には忘れてるだろうね」
 「でも俺は夢のことはある程度覚えてる方だけどね」
 「そう?別にどっちでもいいけど・・・」
 「で?どっちなんだ?」
 俺が作った夢の幻なのか、現実なのかによって話しがかわるし。
 「そっか、一度しんだし、記憶もないのは仕方ないもんね」
 声の質から察するに初の人類、エバなのだろう、それにしても、優しく何処か懐かしい声だ
「転生が一回だけだったから意外と覚えているよ」
「そうか、どうだい?大木になってここまでの地球は?」
 「うーん、例えるなら、一つの波だね」
 「波?」
 「そう、波、ずっと穏やかで優しいものが多い、偶に、皆を襲い全てを奪うけど、悪くないと思う」
 「生物を閉じ込めて、食べることも、あるんだぞ!・・・あっ」
 意識はなかった、ビーガンでもないことはここで言っておく
 「それは種の保存を安定させるための進化なんだ、別人悪い事ではないと思う、確かに小さな視点で見たら残酷かもしれないけど」
 「だよな」
 言葉が出なかった何も思いつかなくて意識が飛んでしまいそうで・・・
 「ねえ、君はどうだった?お…」

 「やっぱりな………」
 体をおこし、テントを片付けようと外に出る。
 「おはようございます、先生」
 「ああ、おはよう」
 さて、片付けるぞ、助手は少し早めに起きて片付けは自分の分だけらしい………いつもの調子でテントを片付け、ヘリを待つ間即席の椅子周辺で待機した。
 俺はこれが最後の仕事だと確信してあの大木に向かう。

 「そうか・・・ずっと見守っていてくれたんだな」
 すると、なぜだか、視野が歪みだして頬には水がつたっていた、それを拭おうという意識が何故か芽生えず、感情に任せることにした 
 「・・・・!!」
 濁った助手らしき声が聞こえた、俺は多分あのアダブの一番最期の日から孤独ではなかったらしい、俺はあの生まれ変わりなのかもしれない。
 そしてヘリの音らしきものがはっきりと聞こえ、正気に戻っていった。
 ある一つの誓いを胸に大木と別れ、解明の日々に勤しんだ。

 文字らしきものと絵の整合性、歴史の矛盾等にそれをまとめあげ、論文として提出し見事に認められ正式な神話が完成した。
 その論文は色んな解釈で翻訳され議論を呼んでいる。
 あるときは恋愛ものとしてえがかれ又あるときは、進化論や学術的に使えるんじゃないかと思案する者、またあるときは文芸の基盤として設定に組み込む者。
 人の数だけ物語があり一つの神話にも様々な視点や解釈で見え方や考え方が変わるという事実は普遍的なものなものには違いはないだろう。
 では、神話の最後の文章をここに記そう、これがもっと沢山の人に届きますように。

 世界再創世記神話最後の文章

 二人は最後の時を過ごした、それはもうこれから起きることが分かった上で悔いがないように全力で一瞬、そのまた一瞬を楽しんだ。
 そして雨風を凌げる洞窟で日記や、これまでを綴った絵日記をありのままに書いた。
 人類に近い生き物が何度も現れたこと、単純に二人でいった海や山、そこにある珍妙な食べ物を食べた話しや、世界を揺るがす大きな地震や噴火が周期的に起きて、何度も大量に死種が出たことなど。

 あれから12回目の満月の前日の夜透き通るような心地いい潮風にあおられている。
 「ついに明日………だね」
 「そうだな…」
 明日起きることを知っているにも関わらず実感もなく、ただ楽しいも辛いも嬉しいもなく、多少の不安だけが見え隠れしていること以外の感情が全く無くて自然と潮風に恐怖もかき消されていた。
 満月の夜に照らされている2つのシルエットがそこにはあっただろう。
その翌日のこと、火事を起こした、そして二人して横たわり手を繋ぎ、身に感じてる熱さなんてものなんてもう、どうでも良くて、もはや二人はお互いの顔をみて映ったのが好きな人の笑顔だけだった、そして二人をつつんだ業火は地球全てを覆い尽くす位に燃え広がりやがて真っ黒に染め上がった。
 そしてその影響で特大の嵐が巻き起こり、大地がリセットされた、やがて植物が生え、海には微生物が陸に上がることを今か今かと望みながら、できることに集中する日々がずっと続いていた。
 一千億年後最後にして最初の人類は最大の祝福を受け、輪廻転生の能力を手にし記憶が紡がれていくような人生になるようになった。
導くものがいるかのように生物が陸に這い上がって色んな姿に変わりつつも少しずつ二人が望んだほしい理想の結果が起きた始めた。
 そして最後にして最初の人類二人、片方は記憶を保持したまま大木へと成長し、もう片方は動物として永遠に転生を繰り返し記憶が次第に薄れていくような呪いがあった。
 そんなことはつい知らず、また二人が直接合う日を楽しみにして、大木に転生した最後にして最初の人類は彼を永遠に見守り続け、薄々と最愛の人が自分のことを忘れていくことに気がついた時の彼女の絶望と孤独感はいか程のものなのかは我々には何年生きようが何回転生しようが理解できないだろう…


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