ロンザ騎士団物語~stage2
【前回までの「ロンザ騎士団物語」】
五人の姉妹、三人の兄弟という大家族の上から四番目、次男坊として生まれたジェット・ノワール、十六才。
貧乏貴族の両親は塾の経営をしている。ジェットは一大決心をして、家を飛び出す。
憧れのロンザ騎士団の入団テストを受けるために。
幼なじみのレイこと、レイモンダ・エヴァンスもくっついてきた。さて、二人の行く手には……?
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「じぇっとぉぉー、寒いよぉー、そろそろ休もうよぉぉ」
ほっそりした体のレイは自らの手で両肩を抱いて、ガタガタ震えている。
ジェットとしては、もうちょっと頑張って歩いて、次の村まで行きたかったのだが、たしかに雲行きも怪しい。そろそろ近くの宿屋に泊まったほうが良さそうだ。
なに、それくらいの金ならある。
レイのことを甘やかすだけ甘やかしてきた彼の祖父母がもたせてくれた宝箱には、価値のありそうな宝石がわんさか入っていた。
次の大きな街で鑑定をしてもらおう。すぐ全部使う必要はない。まずはひとつ売っぱらえば、当分の旅費になるだろう。
レイのものだというのに、ジェットはすでに自分のもののように算段するのだった。
「じぇっとぉぉー!!」
さらに情けない声をあげるレイ。
「わかった、わかった。次に宿屋があったら、そこに泊まろうぜ」
「よかった!」
そうと聞くと、さっきまで弱音をはいていたのとは別人のようにスタスタ歩き出した。
「ちぇ、現金なやつめ」
ジェットは苦笑すると、重くて大きなリュックを担ぎなおした。
このリュックはレイのものだ。これも彼の祖父母が持たせたものだったが、あまりの大きさ重さを知り、ジェットが代わりに担いでやっているのだ。
「あ! あれ、宿屋じゃないか?」
しばらくして、夕暮れ時になった頃、先を歩くレイがうれしそうに振り返った。
たしかに……。
少し暗くなった街道の先に、ひょろっとした建物が見えた。こんなところに建っているのは宿屋くらいしかないだろう。
そうとなったら、急に腹が減ってきた。
ふたりは昼間、レイの祖父母がリュックに入れてくれていた干し肉や乾パンをかじっただけだった。
「よし、急ごう」
と、ジェットが言った時、バラバラッと大粒の雨が降り出した。
「うわぁ!!」
「ひえぇえー!!」
ふたりは悲鳴をあげ、走り出した。
しかし、雨はさらに強くなり、たった一分かそこらで全身びしょ濡れにするだけの勢いがあった。道をうがち、泥を跳ね上げる。
頭や顔を打つ雨は痛いほどだ。
「急げ、急げ!!」
ジェットはレイの腕を引っ張り、走った。
しかし、なんということだ。レイは足がもつれて転んでしまった。
せっかくのきれいな金髪も白い手も泥だらけになる。
「うえぇぇーん!!」
「ば、ばか! 泣いてる場合かよ。ほら、立てって。宿屋で着替えればいいだろ」
なおも泣いているレイを引っ張り上げた。
よかったらMP補充、よろしくおねがいします。無理のない範囲で!! そのMPで次の執筆がんばります。