飲んで、飲み込む
久しぶりに再会した彼女は、別に特に綺麗になっているわけでもなかった。
ゼミのメンバーで集まるのは、卒業以来3年ぶりで、彼女ともその間会ってはいなかった。
確かに少し髪型や話し方が変わったようだったが、相変わらず彼女だった。
そのことに僕はまた落胆している。
まだ、これが続くのかと。
「大くん、スーツ似合ってるよ」
仕事帰りでスーツ姿の僕に、彼女は言った。
「就活の時も着てたじゃん」
彼女の一言一言に難癖をつけてしまうのは、どうも自分の悪い癖だった。
そんな僕にうんざりしたような視線を向けつつも、少し経てばまたあの頃のように笑っている彼女。
その朗らかさに甘えていたのかもしれない。
好きだなんて、絶対に認めたくなかった。
だってコイツは男ができたから、そいつのために僕と距離をとったのだから。
一番の男友達、
そう自負していた。
2人で出かけることはしばしばで、僕の毒づきをひらりと交わし、じゃれ合いに変えてくれた。
そんなある日、嫉妬深い彼氏と揉めたらしい彼女から「2人で会うのはやめよう」と告げられた。
あまりにもあっさりと関係を「改善」されて、少なからずショックを受けた。
でも、きっとそれは、恋になる前の淡い気持ちを裏切られたショックで、自分ではそのことに気がついていなかった。
僕は僕で、当時付き合っていた彼女と別れて、初めてその気持ちを自覚したのだからどうしようもない。
絶対に自分の気持ちなど言うものかと心に決めていた。
言ったところでどうにもならないからだ。
ただ想いを伝えたい、なんて、何がいいんだろう?何の生産性もない。
たとえ彼女がこのまま結婚して、僕も誰かと式を挙げたとしても、この気持ちは墓場まで持っていくんだ。
斜め前に座った彼女の、はしゃぐ横顔をチラリと見る。
僕はビールジョッキをぐっと傾けた。