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踊り場で、休息を



6階の踊り場で立ち止まって景色を眺めるのは、私の習慣。


うちのオフィスは、エレベータを使わないときは、外付けの非常階段でフロアを移動しなければならない。
6階は会議室になっていて、人が通ることは比較的少ない。
1日中オフィスに押し込められた私は、ある日ふと6階の踊り場で立ち止まって外の世界を眺めると、少しだけ肩の力が抜けた。
それから、踊り場での休憩は私の小さな習慣になった。


今日も、ここにくるのは3回目。
小休憩といっても、1.2分立ち止まるだけだ。
アシスタントとして上司について回っている私は、長くは席を開けられない。
何かをやって褒められたということは、まだない。
むしろ、何かをやるたびに叱責されてばかりな気がする。
私がきゅうきゅうとした心で反省ばかりしている中でも、世界は変わらずおおらかで自由なのだと思うとほっとする。

あまり自分を責めすぎてはいけない、そうつぶやく。
萎縮して何もできなることのほうが、悪循環なのだ。
そう思ってはいても、やっぱりいつも、ゆっくり沈んでいく心を止められない。


どうしてセミは、夕暮れは違うなき方をするんだろう。
朝は、力一杯エネルギーをぶつけてくるのに、
夕暮れどきはちょっとだけ行儀よく「ミンミンミンミン」としずしずと奏でる。

ビルの合間から見える縦長の空に、白い雲が数本のびている。
そこに映る優しい光が、今日の夕日がどんな色なのか教えてくれる。


息を細く、長く、吐く。
外気が私をゆっくり包むから、何かが少しだけ充電された気がして、冷房の効いたオフィスに今一度、足を向ける。




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