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梅しごとと築54年の家

今年もやっと梅しごとが終わり、ほっとしている。我が家の庭には、梅の木が2本ある。青梅と夫婦梅という紅梅で、この古い家(草木で被われた庭付き)を11年前に購入し移り住んだ。

初めて不動産業者と共にこの家を見に来た時、格子戸をくぐるとそこは、茨姫が眠っているんじゃないかと思うほどに茂った植物、かき分けて辿り着いた家屋も、荒れ果て、土足のまま内覧した。

その時、丁度庭の中心で見事にピンクの花を咲かせてたのが、夫婦梅だった。どうみても住むにはね…、という物件だったけれど、私たちはその梅が気に入ったのか、瓦屋根、木製のサッシ、ネジ式の鍵、建具はほぼ引き戸(玄関もトイレも)が気に入ったのか、買ってしまったのだ。

私たちが買わなかったら、土地は二分されて、新築住宅用地として売り出される予定だったと後で知った。

それから私のしごととして、梅しごとが年1回やってくることになった。8キロの紅梅は食べれないので、梅酒、梅シロップ、梅醤油、梅味噌などに使い、12キロの青梅は全て梅干しにしている。

出来は、二三年前くらいに、やっとまともになった。それまでは何となくえぐみがあったり、梅干しはカビが生えてしまったり、塩がキツすぎて、食べれなかったりと、放置した赤い蓋の瓶が台所中に置き去りにされていた。

もともと家事全般苦手でグウタラな私が、よくやったなと思う。夫は梅酒も梅干しも口にしない人だった。最初は面倒でしょうがなかったんだけれど、毎年梅がじゃんじゃん実って黄色くなっていい香りがしてくると、捨てられなくなり、漬けまくることになる。


古屋敷は、平屋なので、屋根裏があるから、夏涼しい。そして冬は床下に断熱材が貼ってないので、風が畳の目から上がってくるし、木製サッシの隙間風もすごくって、早朝のサッシは結露することはない、だって外と内と同じ温度なんだから。

動物たちには人気がある。近所の猫、イタチ、ヒヨドリ、めじろ、ウグイス、シジュウカラ、トカゲ、イモリ、ダンゴムシ、ハチ、チョウチョ、クマゼミの抜け殻は半端じゃなくたくさん落ちているし、その鳴き声の合唱は凄まじく、ラジオが聞こえないくらい。

ここは本当に都会の片隅なのか?と思うことがある。周囲の家は近代的な住宅が建ってしまってるので、老人の家だと思われているよう。介護施設や葬儀屋のチラシがよく入る(笑)

でも、この屋敷に色んなことを教えてもらった。草木や花の名前、虫や動物たちの生活、季節の移り変わり、小さくても自然はきびしい、都会の不自然さ、梅しごと、お茶の木から煎茶を作ったり、南天やボケの実から薬用酒をつくったり、生かして作るよろこびも、古い家で住む工夫とか…、

後何年すむのかな…、先住者が草木をたくさん育てて、私たちがそれを受け継いだのだらか、次の誰かに渡していけたらいいのかなって思っている。先住者に感謝しながら、落ち葉や花びらを片付けるのなども、面倒がらず、今はたくさん楽しみたいと思っている。

一番長い住民は、きっと台所の窓ガラスにいつも張り付いているヤモリだろうから、彼にも感謝して、仲良くねとお願いしながら…。(^ ^)


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