見出し画像

映画「万引き家族」を観た朝に

今朝は、雨。春になってからお天気続きで降ってなかった雨。古家の我が家は、どんより暗く蛍光灯の光に頼る。気温は然程低くもないのに肌寒く、ストーブの前に立ち、手足をあぶっていると、昨夜の「万引き家族」の世界が頭の中に広がって戻らない。気を緩すと涙腺が熱くなってしまう、とりあえずコーヒー豆を挽いて、薬缶を火にかけた。

コーヒーを飲み終えてもまだ納まらないこの気持ちは何だろう。誰かに強く抱きしめられたくなったけど、私の周りにそんなこと頼める輩もいないことにも気づく。

万引き家族は、そう万引きする家族なんだけどね…。血縁関係がない訳あり人の集まりで、金銭面、精神面、教養面など、かなり底辺な暮らしぶりだ。万引きもそうだけど、殺人、死体遺棄、タカリ、風俗、誘拐と、悪事を繰り返しながら生きている。

そこには、心の通い合う関係がある。「抱きしめて」って言えるし、「いいよ、どうしたの?」って言える関係がある。傷を見て「痛そう」って共感できて薬を塗りあえる関係がある。

心を通い合わせながら一緒にいるだけだけど、その通い合いからそれぞれの心の中に変化が現れていく。心の柔らかい子どもから順にその変化は始まって、そこからオセロのコマが静かに裏返って行くように、それぞれの心が応えて生きて行く、気持ちのままに。何もかも揃っていたら、いいのだろうけれど、そう言う訳には行かないこの世の中。

この家族は暖かい、でも「幸せ」って言葉はそぐわない感じがする、そんな言葉は意味なく感じてしまう。でも心に隙間がなさそうで、そこんところが、私の胸を突いてくる。

私は、生活する環境が整っていて、何も問題ない暮らしぶりな筈なんだけれど、この「万引き家族」に心が掻き乱されてしかたがない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?