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大切に、丁寧に…

この前の日曜日、お茶会があった。お茶の世界で霜月は、炭火が、風炉から炉に変わり、春に摘んでツボに入れて寝かせておいたお茶の葉を出して使い始める「口切りの茶事」ってのをやる月、茶道の正月みたいな月。

私の通っているお茶室「秀心庵」でも茶会が開かれた。楽しいものにしたいという亭主の意向で、茶事七時式の一つ、「茶カブキ」が催され、亭主を含め10名が集まった。

茶カブキは、3種類のお抹茶を用意し、その内の2種を最初に味わい、それぞれに名前を付けておきます。何故かその名は「上林」「竹田」。次に残りの1種(名前は「客」)を含め3種類を、味わって、さて最初に味わった「上林」「竹田」のどちらが出て来たかを当てます。

今回用意されたのは、京都の宇治茶、愛知の西尾茶、九州の八女茶。

そして、私はお点前を担当することになった…。回しのみをする濃茶を5種類飲む、客は8名。単純に計算して40杯分です。お手前は5回…。ご指名がきた時、目が点になりました。私は茶会でお点前というものを一度もした事がなかったので。いつも茶会でお点前をしてくれているベテランさんが、今回は「茶当て」を楽しみたいと言う事で、気楽にやってくれていいからということだった。

私もあまり深く考えず、引き受け、参考書をペラペレ捲って、あとは自分を信じてG0!  一体自分の何を信じるというのか(笑)何も考えず、ただ1つお茶を入れることだけに集中した。美味しく入れることだけに…。

一回に8杯分の濃茶は、茶杓3杯×8人を全て茶碗に入れ、お湯で溶かしてドロドロの緑の液体を作ってお出します。シャカシャカって茶筅でまぜて泡泡を作るのとは、ちと違う。濃すぎると、飲もうと茶碗を傾けても落ちてこないと大騒ぎになるし、薄いと飲みきれなく、末客さんが大量一気飲みをしなければならなくなる。わ〜楽しいかも(笑)

不思議なもので、手は自然に動いてくれた、多少の間違えはあったけれど、滞り無く終えた。自分はやった事はほぼ覚えていなのだが…。

正客(1番上座の客)さんが1口飲んだら、「お服加減はいかがですか」とお聞きしますが、大抵は「たいへん美味しゅうございます」と返してくるのだけれど、今回は、無言で一礼…、ううう、やってしまったかも(汗)後で訊いてみたら、玉がけっこうあったでぇ〜ということだった。2回目3回目と回を重ねるごとに案配は良くなっていったらしいのですが、なんせ今回飲み比べなので、同じように入れなければなならないのに、これじゃ当たらないのでは?案の定、今回の正解率は過去最低…。

失態だ!!、でもね、今となっては、ただやり切った充実感だけが残っている。とっても心地よい充足感、自己満足なんだけど(^^)。最近、自己満足でオッケーなんじゃあないかなと、思う節あり。他者の満足度は計れないし。

お茶の作法は、1〜10まで決められた型の中で行われる。理に叶ってないと思うこともあるけれど、先人が一番シンプルでおもてなしの心に叶った形と決めたものなのでしょう。回を重ねるごとに、それを感じる瞬間は突然訪れる。一方で、その型だけが一人歩きしてしまっているような現状に窮屈さもあり、どう捉えるかは自由と、私は考えている。

訪れてくださったお客様への心づくしの「おもてなし」…。どこまでが慈雨と言えるか、こだわりや執着は捨て去り、全てを大切に思い、丁寧に扱い、お茶を入れる。お茶だけではなく、私の日々の暮らしも、そうありたいと思う。

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