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ミモザに恋文を添えて、

ミモザが咲く季節になってきましたね。

本物は今でもお見掛けしたことないのですが、優しく甘い春の香りを感じさせるミモザが好きです。形もぽわぽわっとしていて可愛らしいですよね。

イエローが元々好きでして、クリームイエロー、レモンイエローが特に好きなカラー。疲れている時にパッと明るくしてくれるあの優しい色合いが好きです。イエローをモチーフにしたキャラクターもついつい惹かれちゃいます…!!

過去絵のミモザイラストについて語っていくよ

ミモザをいうものを初めて知り、勢いで描いたイラストです。

テーマは〈ミモザ〉〈秘めた恋〉〈恋文〉

春の花が芽生え始める頃合い、ひとりの少年はミモザの花飾りをつけた少女と出会います。彼女が歩く度に柔らかく優しい花が咲く姿を見て興味の惹かれた少年は、問い掛けます。「きみは何者なんだ?」と。すると、少女は答えます。「わたしは春を告げる精霊なの」と。

🌼💌🍀

春を象徴するらしいそんな彼女は春のようにあたたかく、そして優しく。笑う度に花が咲くように愛らしい彼女に、ぼくは自然と惹かれていったんだ。

「きみのことはなんて呼んだら良いかな?」
「わたしに名はないけど……でも、そうだなぁ。ミモザ、ミモザが良いわ。わたし、ミモザの花がとても好きなの。見てるととても元気が出てくるから」

そう言ってふふっと微笑む彼女。思わず、ぼくもその笑顔がうつってしまう。「じゃあ、ぼくもそう呼ばせてもらうね」と言うと、ミモザはまた嬉しそうに微笑んだ。

更にあたたかさがつよくなってきた頃。ミモザの姿が段々と薄くなっていくようになっていった。どうやら春が終わると、少女は眠りについてしまうらしい。「わたしの時間は春しか動かないの」と、切ない横顔で話すミモザ。

「あなたと出会えたから、今年はとても楽しい春の時間を過ごせたわ。ありがとう。わたしはずっと、この時間を忘れないわ」

ぼくも彼女と出会えて、今年の春はとても楽しかった。気が付くといつもわくわくしていて、ミモザと会える時間が本当に楽しみになっていた。彼女が笑うと嬉しくて、これからもずっとこんな時間が続くといいなと思っていた。

でも、ぼくのこの想いを伝えたら優しい彼女はきっと悲しむだろう。ぼくが彼女と結ばれることは決してないのだから。誰に話すこともできない、秘めた想い。だからこそ、せめて――。

「眠っている間は、きみはもうどこにもいないの?」
「ううん。きみたちには見えないだけで、わたしたちはいつでもいるわ。でも、話すことはできないの。一日とてもあたたかい日だったら、きっとどこかにいると思うわ」
「じゃあ、」

そういってぼくは、手元に持っていた本に手紙を挟み、ミモザとぼくしか知らない思い出の場所にそっと本を置いた。

「こうして手紙交換するのはどうかな? きみが嫌じゃなければ、だけど……」

冷静に考えたらこれはぼくの勝手な願いだ。彼女が受け入れてくれるとは限らない。ぎゅ、と思わず目をつぶって返事を待っていると手紙を読んでいたらしい少女は切ない表情になっていた。

そしてその手紙を見て、ぼくは我に返る。あれはいつか渡そうとして、諦めたミモザへの恋文だった。今回の手紙と同じ便箋にしてしまったため、思わず間違えてしまった。もうダメかもしれない。そう思ったぼくの手をぎゅっと握ってくれたミモザ。

顔を上げると、ミモザは涙を堪えたような優しい笑顔を浮かべて言った。

「うれしいわ。本当に、本当よ? でもわたしはきっと、あなたと違ってひとではないから同じく過ごすことができない。それでもよければ、ううん。むしろ、わたしからお願いしたいわ。よかったら、お手紙交換しましょう?」
「……うん、うん。ありがとう……」

そうしてぼくは、ひとりの春の精霊とお手紙交換することになった。
また来年、彼女と出会えるのをぼくは今、こうして手紙を書いている時でも楽しみにしている。


ここまで読んでくださり、ありがとうございました!


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