だれも知らない小さな国を読んだ

だれも知らない小さな国を読んだ。面白かった。

この本は自分が小学校低学年の頃に読んだ記憶がある。なんならそれで読書感想文も書いた。しかし今回読んだときは、本の内容も、読者感想文も忘れて読んだ。とても新鮮だった

このお話では主人公が誰にも知られていないコロボックルの国を見つけ、交流をし、存続をさせる物語だ。
元々主人公もコロボックルのことを知らなかったが、ひょんなことから知り合いとなる。

この、ひょんなことというのがとても好きだ。劇的な出会いをするわけでもなく、なにか大きな事件がきっかけとなって出会うわけでもない。ただ、偶然と主人公の誠実さが相まって出会ったのである。

コロボックルとの出会いは徐々に進んでいく。そこにリアリティを感じた。初めはうっすらと見えるようになり、段々とその正体を理解していく。そして満を辞してコロボックルの小国へと足を踏み入れる。この一連の流れがまるで自分の人生を生きているのではないかと錯覚するほどの没入感で描かれている。

また、今回、10年ぶりに読んで明らかに記憶にないシーンがあった。戦争である。
今作は戦時中から戦後くらいの時代を描いており、その戦争の描写が至る所に散りばめられていた。そう言ったシビアなシーンもあることによって、よりファンタジー要素であるコロボックルとのシーンが引き立つのだと思った。

個人的にこの本で一番好きなシーンは主人公たちによるコロボックル小国の開拓である。初めは野原でしかなかった場所からだんだんと生活感のある場所へと変貌していく様は読んでいてとてもワクワクした。

この本には、自然との共生、他者との関わり合いと言った様々なテーマが込められていると思う。その全てを受け止めることはできていないかもしれないが、受け止めたいものを受け止めることができた。
立場の違う人々はどのようにして手を取り合うのかと言った部分に着目して読んだり、自然の豊かさを利用し、自然と人間が共に生きるシーンを読むことによって、思いやりとか、そういった若干むず痒くなるような心を刺激されたような気がする。

最後に、小学校の時に書いた読書感想文を原文ママで載せようと思う。


「小人」、この世には絶対に存在しない生き物、そうずっと思っていた。しかし、この本を読んで、「もしかしたら、昔から僕たちの知らない所で生きていて、今でも誰にも見つからず、ひっそりと暮らしているのではないか」と思ってしまった。

この本は主人公「せいたかさん」がコロボックルという小人たちと出会い、仲良くなりお互いが信頼し合いコロボックルが安心して暮らせる小国を作る手助けをする物語だ。

僕は、虫が大好きで、毎年夏になるとカブトムシやクワガタを捕まえて虫かごで飼育している。餌である昆虫ゼリーを与えたり、土が乾燥しないように水を上げて湿らせたりと、一生懸命世話をして大切に育てている。でも母には、「それは無視にとって幸せなことなのかな。」と、時々言われることがある。

確かにせいたかさんは、コロボックルを捕まえて見世物にしたりすることはない。コロボックルが望むことをせいたかさんの出来る範囲で手助けをしている。それに、せいたかさんはコロボックル達が生活している小国に勝手に踏み込んだりは決してしない。

このせいたかさんの行動を見て、ふと飼育しているカブトムシのことを考えた。餌は与えられるが狭い虫かごに入れられるより、自由に飛び回れる森の中で生きていく方が幸せなのではないか、手に取って眺めたり触ったりされるのが嫌なのではないか、と思った。

しかし僕はカブトムシを手元に置いて、世話をし、見たり育てたりするのが大好きなのだ。

この本を読んで僕は無視に対して悪いことをしているのではという気持ちと、今まで通り虫を大切に育てて、観察していきたいという気持ちが入り混じって複雑な気持ちになった。

この本を読んでから、虫を探しているときその隣でコロボックルが手を振っているのではないかと思ってしまうことがある。

そんな時にはせいたかさんの気持ちを思い出してみようと思う。

せいたかさんとコロボックルのように僕も無視と接していきたいと思う。

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