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【声劇台本】それはきっと、夜の海のせい

登場人物

涼子:職場の先輩
奏:職場の後輩

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奏  「うわっ、懐かしい! 久々に来たけど変わってないな〜」

涼子  「夜の海なんて初めて来た…。
ずっと住んでるのに、案外知らない場所ってあるのね」

奏  「昔よく来てたんですよ。カレイとか釣って、持って帰って捌いてました」

涼子  「そうなんだ? 自分で料理してたの?」

奏  「料理作るの好きなんですよねー」

涼子 「そうなんだ? いつから?」

奏  「高校くらいからですね」

涼子  「高校生から? えらいね」

奏  「別にえらくないっすよ。遊んでばっかいました。友達と釣りしたりゲーセン行ったり、金なくて飲み屋で年ごまかしてバイトしたり」

涼子  「えぇ?! それ、バレなかったの?」

奏  「まぁ、なんとか。学校サボったりもしてましたけどね」

涼子  「サボって何してたの?」

奏  「飲み屋で知り合ったお姉さんの家に転がり込んだり」

涼子  「わ! 高校生で?!」

奏  「まぁ、二十歳って嘘ついてましたけど」

涼子  「わっる。高校生で年上のお姉さんと……」

奏  「まぁ、そんなこともありましたね」

涼子  「私が知らない世界だ……」

奏  「涼子さん、優等生って感じですもんね」

涼子  「やだ……。でもまぁ、当たってるけど。ずっと優等生だったかな。勉強ができて生徒会で」

奏  「眼鏡に三つ編みとか」

涼子  「もう! それ、完全に漫画の世界じゃない? さすがに三つ編みの高校生なんていなかったわよ」

奏  「すいません」

涼子  「謝らなくて良いわよ。眼鏡だし」

奏  「眼鏡、良いじゃないですか」

涼子  「そうかな? コンタクトに憧れて、一時期コンタクトしてたけどね」

奏  「絶対、眼鏡の方がいいっすよ」

涼子  「そう? ありがと」

涼子  「ねぇ。ここからだと、夜景ちょっと見えるね」

奏  「結構それなりに見えますね」

涼子  「こうやって見ると、なんか、良いね。 海は真っ暗だけど……
海って、なんだか吸い込まれそうじゃない?」

奏  「気をつけてくださいね、結構深いから」

涼子  「ちょっと怖いかも。私、泳げないから」

奏  「できないこともあるんですね」

涼子  「何それ? どういう意味?」

奏  「なんでもできそうじゃないですか、涼子さん」

涼子  「そんなことないわよ。できないこといっぱいあるわよ。奏君こそ、なんでもできそうじゃん?」

奏  「いやー、俺、なんもできないっすよ」

涼子  「またそんな謙遜を。ちゃんと仕事できるじゃん」

奏  「やることやってるだけっすよ」

涼子  「仕事速いし、的確に動いてると思うよ」

奏  「ありがとうございます。足手まといになってないなら良かったです」

涼子  「めちゃめちゃ助かってるよ! 奏君いないとチームが回らないよ」

かなと  「それは光栄です」

涼子  「いつもありがとね。つい、頼っちゃって」

奏  「こちらこそ。いつもありがとうございます」

涼子  「……クシュン(くしゃみ)」

奏  「寒くないっすか? 風邪ひくから、これ着てください」

涼子  「え……。ありがとう」

ー少し間を置いてー

涼子  「ふふ」

奏  「なんすか? 臭かったらすいません」

涼子  「いやいや、臭くないよ。なんかこういうの、良いなって。彼シャツみたいな」

奏  「女の人ってオシャレ優先だから薄着ですもんね」

涼子  「まさか、夜の海に来るとは思ってなかったしね」

奏  「そうですよね。すいません。この前のお礼にって誘ったのに」

涼子  「ううん。楽しいから良いの。でも、別に良かったのに、お礼なんて。
ご飯もごちそうさまでした」

奏  「いえいえ。それなら良いですけど。帰りたかったら言ってくださいね」

涼子  「大丈夫。楽しい。でもなんか、デートみたいだね」

奏  「はは。デートだったらこんなとこ連れてきませんよ」

涼子  「あら。じゃ、どこに連れてってくれるの?」

奏  「どこ行きたいですか?」

涼子  「そうねぇ…。デートなら水族館とか? プラネタリウムとか?」

奏  「女の人って、水族館とか好きですよね」

涼子  「そうかも。なんか綺麗じゃない? ムードあるし」

奏  「ちょっと暗いですもんね」

涼子  「あ、今、やらしいこと考えたでしょ?」

奏  「いや別に、そういう訳じゃ」

涼子  「手繋いだりとかさ」

奏  「手繋ぐの、好きですか?」

ー男性が女性の手を掴むー

涼子  「え?!」

奏  「冷えてるかなーと。嫌なら離しますけど」

涼子  「べ、別に……、嫌じゃないよ……」

奏  「気持ちいいっすね。冷たくて。てか、冷えちゃいましたよね」

涼子  「いや、ほら、これ着てるし! 大丈夫! あ、でも、奏君、寒くない?」

奏  「僕は平気です」

涼子  「そう。それにしても、誰もいないね。さすがにいるわけないか。こんな時間に」

奏  「涼子さん」

涼子  「なに?」

奏  「抱きしめて良いですか?」

涼子  「え?!」

奏  「嫌ですか?」

涼子  「嫌って……そういうわけじゃないけど……」

奏  「こうしてたら、あったかいでしょ?」

涼子  「うん……」

ーいきなりキスー 

涼子  「……?!……な、なんで?」

奏  「僕はこのままでも良いですよ」

涼子  「このままって……」

奏  「言い訳が必要ですか?」

涼子  「言い訳?!」

奏  「僕はどっちでも構いませんよ」

涼子  「ずるい……」

奏  「嫌だったら、何もしません」

涼子  「……嫌じゃないけど……。でも、急にこんな……」

奏  「鈍いなぁ、涼子さん」

涼子  「え?! どういう?」

奏  「それは、涼子さんが決めてください」

涼子  「や……ずるい……」

奏  「涼子さん。涼子さん、僕のこと好きでしょう?」

涼子  「え?! な、なんで急にそんな?!」

奏  「違うんですか?」

涼子  「いや、違うっていうか……違うって訳じゃ……。や、いや、な、何言わせるの?!」

奏  「いつもの余裕、どこ行っちゃったんですか? かわいいですね」

涼子  「……ふぇっ?!(アドリブでどうぞ)」

奏  「僕は好きですよ。涼子さんのこと」

涼子  「?! え?! 嘘……」

奏  「ずるいなほんと。今日は帰したくありません。良いですか?」

涼子  「……はい……」

ー了ー


#こんな恋もある

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