ワイは創価学会員

日蓮に関する授業を受けて書いた感想が長くなりすぎたので,noteで供養します.

以下本文

私は創価学会の宗教3世ですので,いわゆる宗祖たちの中でも日蓮には特別な思いがあります.
と言っても,それは信仰的な意味ではありません.
私は“一般的な”宗教2世でしたから,幼少期,特に小学生~中学生の頃は一生懸命に創価学会活動をしていました.しかし,年を重ねるにつれてそれが“ふつう”でないことを知り,活動から離れていきました.
当時活動の中で覚えた御書(日蓮の手紙を創価学会ではこう呼びます)は,今ではほとんど思い出せません.勤行として唱えていた法華経の一節(方便品第二,如来寿量品第十六)はさすがに覚えていますが,毎日唱えていたこれらも今では全く口から出ることはありません.
それでも,私の一人暮らしの家には毎日創価学会の機関紙である聖教新聞が届きます.
両親との仲は悪いとは思いません.でも,実家に帰ると隙あらば私を学会活動に参加させようとしてくるので,なるべく実家には顔を出さないようにしています.

いわゆる二世のみなさんのように親から虐待的なことを受けたとも思いませんし,被害者的に感じることもほとんどありません.むしろ,他の人が体験できないような人生で面白いと思います.宗教が実際の人々の生活を支える場面をたくさん実感しながら育ちました.そして,同時に理解することのできない異常性を感じることもありました.

私は昨年,修士から東北大学に来たのですが,以前いた大学は理系単科大学で,宗教に関する授業は存在しませんでした.こちらに来て,○○先生が学部1年生向けに宗教学の授業をやっていることを知り,興味本位で受けてみて,本当に,殆ど人生が変わりました.

私は○○先生の授業を受けるまで,日蓮の話を聞くことが怖かったです.
池田大作の話を聞くことも怖かったです.
他人がするそのような話は自分の人生の一部を批判されているような気持ちでした.
日蓮は私にとって「日蓮大聖人様」であり,池田大作は「池田先生」でした.
それが,授業を経て,ただの歴史の一部として日蓮や池田大作を受け止めることができたのです.もう,このような単語を見て動悸がすることもなくなりました.
わたしはこのことを歴史を学ぶことのたいへんな意義だと思います.

一個人に宗教団体をどうこうする力はありません.もちろん抗議をして,訴えて,悪徳な集団を抑制することに意味がないとは思いません.
でも集団を抑制させても個人の思いが消えるわけではないのです.世間から批判されることは個人に傷を残します.
それをどのように自分の中に受け止めるか?の一つの手段として学ぶことというのは大きな意味を持つと思います.

創価学会における創作として小説「人間革命」が挙げられます.
新人間革命には序盤のエピソードに「出会いがないから都会に出たい」という田舎の娘に対して,戸田城聖が「急いではいけない,いまのまま全力をつくしなさい」となだめるシーンがあります.
私の母は田舎から上京してきた娘でした.当時としては晩婚で,結婚にも悩んでいたようです.新人間革命は母から借りたのですが,この一節には二重線が引いてありました.
どんな思いで田舎から上京し,折伏されたのか.
母のメモがえんぴつでたくさん書き込まれた本たちは,私の宝物です.

日蓮のナショナリズム的な側面は幕府への直談判というエピソードが強く効いていると思います.日蓮に没頭する者たちは「迫害されても,自分たちこそが日本を(世界を)救えるのだ」という気持ちが強いように感じます.

一方,池田は「仏陀,キリスト,ムハンマドがみんな一緒に会議をすれば世界の宗教は一つになる」というようなことを言ったりします.また,世界に足を伸ばす過程で他宗教―他の日蓮宗ではなく,仏教以外の宗教―への理解を示す言動も多くあります.でも他の日蓮宗は“敵”ですし,他の宗門を邪教と言う姿勢はあまり崩れません.つまり池田は「日本を救うのは日蓮の真の法華経(創価学会)である」と感じているとも取れます.
1964年に発刊された「科学と宗教」では宗教(仏教)が科学を包括せんとする勢いであったのに,2010年に茂木健一郎と科学と宗教について対話をした際は,科学にその領域を譲るような場面も見られました.
池田は世界とつながる過程である意味保守的になり,また“他の領域”への理解を示すことで自分たちを受け入れてもらう行動をしているように感じます.
外から肯定されることで,国内での行動を“正当化”しますが,根底に求めるのは日本国内での地位であると思います.

また,日蓮は自分のことをたくさん書き残した人であるという所から,池田大作の著作の多さにも納得がいくかもしれません.
池田大作の科学へのかかわりも大変面白いテーマで,以前「歴史は科学か」回で挙げた宇宙論のチャンドラ・ウィックラマシンゲという人物も池田大作とかかわりがありました.これは私の生涯の研究テーマになると思います.


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