移り変わっていく季節の中でその名前を呼べたのなら(小説)
何でも君のいうことを一つだけ叶えてあげるよ、
ある日気まぐれな彼はそう言った。
唐突なお願い事をするときには彼は大抵私を見ていない。窓の外で降り積もる落ち葉を見ながら、歌でも歌うように彼は呟いた。今は秋の終わり。それに呼応するかのように、付き合い始めてしばらく優しかった彼がなんとなく冷たくなってきたような気がしていた頃のことだった。
「この前のデートをドタキャンしたことへの償いのつもり?」
自然と語尾が強くなる。私は爪の先にきれいにトップコートを塗れてちょうど満足したと