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文明の補給線

はじめに

これから書くのは私の単なる独りよがりの主張でしかありません。ですから、馬鹿なことを言っているなと思って頂ければそれで十分です。そんな事は起きないのであれば、それほど素晴らしいことはありません。
でも、自分の知る限りの情報を総合すると、どうもこの結論になってしまうので。

というわけで、ご興味がありましたら、私の戯れ言にお付き合いいただければ幸いです。

補給線は大事です

戦争の話をしているのではありません。一般論としての補給線です。補給というのも概念としてもっと広く考えてください。わかりやすい言い方で言うと、職場にごはんを届けるというのも補給ですよね。
でも、今回はもうちょっと広く考えて行きます。文明そのものの補給線の話です。文明だって補給線が絶たれたら滅んでしまいます。補給線というのはもの凄く大事なのです。

文明の補給線とは?

文明の補給線とは何か?わかりやすく言うと、次の世代の人々が、文明を理解し維持できるだけの用意をしておくこと。これが文明の補給線だと私は思っています。
つまり、鉄を作ると言うことに関しては、鉄鉱石の採掘技術や、溶鉱炉とかを作り、鉄を生産するために必要な知識及びそれに関連する機材が作れるだけの技術を保持しておくことが鉄を作ると言うことの補給線です。
この観点で補給線というものを考えると、実は、かなり危ない状態になっていると私は思っています。

コストダウンで真っ先に削られたもの

昔、太平洋戦争で日本が負けた原因の一つに補給線を絶たれたことがあります。もちろん、補給線が維持できていても正直勝つことは難しかったでしょうけど、補給線を絶たれたことで戦線の維持が極めて困難になったことはちょっと調べれば出てきます。
そして今。コストダウンで真っ先に削られたものは維持管理などのぱっと見たところ必要性が薄そうなものです。でも、維持管理を怠るとシステムは維持できなくなる。畑で作物を育てることも出来ない。維持管理を削ることは、生産という最前線への物資の補給を限りなく少なくすることと同じ意味だと私は思っています。そして、物資の補給が必要量を下回ったとき、文明の維持が出来なくなると私は思っています。

今起きていること

私は IT系の情報に偏って収集しているので、どうしてもそっち側の事例が多くなるのですが、それについてはご了承ください。
そして、IT系で問題になっているのはシステムの更新です。また作れば良いじゃんと言う話があるかもしれませんが、維持管理という補給線を限界を超えて削ってしまったため、システムの更新自体が困難になっているという状況があります。また、維持管理を怠ることで、システムそのものが脆弱になり、トラブルが多発したりします。プログラムは確かに一度作れば変えなくてすむかもしれません。ですが、プログラムが動くシステムは変わっていきます。例えば、PC98 で作ったソフトを長く使い続けるためには、OSの更新に追従していく必要があります。でも、世の中を見ると、未だに PC98 は現役です。そして、中古の PC98 を何とかかき集めて維持しているというところもあります。でも、在庫がなくなった時点で補給路は断たれ、そのシステムは使えなくなります。

PC98 は極端な例でしょうか?Windows でも同じことが起きていますよね。Android のアプリとかも OS のアップデートにあわせて更新していかないと使えなくなってしまいます。たとえソフトウェアであろうと、維持管理は必要だしとても大事なものなのです。でも、これが大事だと認識している人は、正直とても少ないというのが私の感覚です。

補給線が維持できないときにやるべきこと

今の最前線をあきらめ、一度後退して補給線を立て直す必要があります。つまり、コストを掛けて補給線を維持し、その補給線に見合うだけのシステムにダウングレードするということです。
でもまぁ、簡単にはできない問題です。なぜならば、人は便利になることは受け入れますが不便になることを受け入れることに強い抵抗を見せるからです。

よく昔に戻れば良いみたいなことを言う人が居ますが、昔に戻るということは医療体制や治安やいろんなこと全てひっくるめて昔に戻るということです。自分の都合の良いところだけ昔に戻すことは出来ません。だから、昔に戻るというのであれば、今だったら特に問題にもならないような病気で人は死ぬことになるでしょうし、衛生面も今よりも間違いなく悪くなります。下水の整備も当然出来ていませんし、公害も至る所で発生している。これら全てのマイナスも受け入れることが出来るならば昔に戻れば良いと言えるでしょうが、今の人たちにはもう無理でしょう。私も、自分が幼かった頃の生活レベルに戻ることにはかなりの抵抗感があります。

補給線が維持できないことを受け入れる

補給線が維持できないのであれば、このような撤退も受け入れるしかないのです。それをやらないと、前線の崩壊が待っています。既に前線は崩壊を始めているのはニュースを見ていると何となく感じると思います。社会システムの維持をするための補給線はあちこちで破綻し始めている。だから、まず人口の少ないところから切り離されていきます。集落に行くための橋は補修もされなくなり、ライフラインもいつ途切れるかわからない状態。そんな状態がじわじわと広がっていく。これが一番わかりやすい崩壊現象です。

他にも、補給線を縮小したのに会社というシステムを大きくしてきた結果、会社が機能しなくなると言うことも起き始めています。商品の製造が出来なくなったりするのはわかりやすいですね。他にも、無理がたたってトラブルを起こしたり、モラルに反したことを平気でやり始めたりもします。だって、補給線が維持できなくなり、モラルを守るだけの余裕がもうなくなっているから。

まあ、のんきに補給線を維持していたら負けてしまうと言う意見もあるでしょう。でも、それは視点が違うのです。補給線が維持できないのであれば、まず維持できるようにしてから前線に行かないといけないのです。順序が逆なのです。だから、前線に人が置き去りになってしまう。事業も継続できず、撤退を繰り返すことになってしまう。その失敗分を補給線の維持に回していればと思うのですが、私は会社の経営判断に対しては無力です。だから、崩壊に向かって走り続ける人たちを悲しい気持ちで見送るぐらいしか出来ないのです。

自分に出来ることは何だろうか?

そう思う事がよくあります。多くの人は未だに利益優先で考えていますし、利益を優先するために必要なものを切り捨て、結果として失敗するというのもよく見る光景です。国内の大企業の業績がどんどん悪化し、気がついたら国際的な企業ランキングから日本企業がほとんどいなくなったのに、何故か今までのやり方を改めようとしているようにはとても見えません。特定の企業を批判する文章にならないように気をつけて書いている分、歯切れの悪い文章になっていますが、企業の大小にかかわらず、利益優先で突っ走ってきた会社は補給線が維持できなくなり崩壊するのはもう仕方がないと思っています。

そんな中、自分に出来るのはこういう文章を書いて公開することぐらいです。

手っ取り早く補給線を補強するためには?

正直、手遅れだと思うのですが、過剰なコストダウンを行わず、必要な経費は惜しまず使うことです。そして、技術を持っている人を会社に引き留められるようにすることです。

  • 技術は買ってくれば良い。

  • 足りないものは外注すれば良い。

良く聞く言葉です。でも、これは外部が供給してくれるから成り立つのです。ベテランがいなくなると確実にノウハウが消えます。ベテランがいなくなった穴は新人をいくら投入しても埋められるものではありません。そして、人口減少の影響のため、今後は新人の獲得すら困難になります。そして、ベテランなんかどこも売ってくれません。

だから、今いる人を大事にして、技術やノウハウを維持していくべきなのです。それはつまり、補給線を維持するという事でもあります

おわりに

実は、私は補給線の崩壊はまだまだ先だと思っていました。ですが、気がついたら、もう始まっていました。びっくりです。そして、これからどんどん影響が出てきます。そして、いつの間にかそんな日常になっていくことでしょう。
この商品はしばらく手に入らないなんてことも、多分なんとなくそんなもんだと思うようになっていくことでしょう。そして、じわじわと衰退していく。

ま、多分日本以外の国でも似たり寄ったりだと思うので、正直暗い気持ちにしかなりません。良い解決策は少なくとも私は持ち合わせていません。利益優先を止めろと言ったところで、きいてくれるわけも無し。

長く生きてはいたいけど、衰退していくのを見続けるのは辛いですね。

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