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オモコロ杯銀賞を獲得した「気まぐれな水」を作者が振り返る。

オモコロ杯2022に「気まぐれに」出した短編漫画が、なんと銀賞を獲得するという事件が起こりました。
結果発表の日取りが割と長めに延期されたせいで、異様に緊張したり、むしろ忘れかけたりしていましたが、名だたるオモコロメンバーに漫画を読んで頂いたことが素直に嬉しかったです。
読んでくれる人がいなきゃ僕の描くもんなんか、便所でケツ拭くチリ紙の代替品にもなりゃしねえからね。

メイキングというか、オモコロ側の評価を読みながら、作者の制作裏話みたいなものを綴ろうと思います。


中間発表でのコメント
ー「水が硬くなった世界」というイマジネーションが素晴らしいです。ちゃんとリアルな日常に即したネタを描いているので、ぶっ飛んだ設定でも飲み込みやすさがありました(水だけに)。

・「浦沢直樹の漫勉」の、伊藤潤二先生の回で語られていた「大きな嘘を一つついて、後の設定はリアルに描く」みたいな概念が個人的にすごく好きで、それをまんま流用した。
「水」の質感をどう表現しようかすごく迷った。信玄餅とか消臭ビーズみたいな見た目なんだけど、意外と硬い。ネリ消しくらいの硬度。
あと、前半では「水」と鉤括弧で呼称しているけど、大学が再開したあたりの時点で鉤括弧を外したのは、慣れたっていうことを描写している。

結果発表でのコメント
ー「水がちょっと硬くなる」という微妙な現象を思いつけるのすごい(恐山さん)

・ほんのそれだけの事なんだけど、たったそれだけで世界の何もかもがパニックになって、面白いじゃないですか。
正直、最初の蛇口のシーンだけを思いついて、「こんな絵面って、何が起きたらこうなるんだろう」と考えた結果、「水が液体と個体の中間の状態で固定されればいいのか」と思って描いた。なので割と設定は当てずっぽうです。

ー考察がはかどりそうなオチも、一瞬立ち止まって考えちゃう感じでいいよね。(原宿さん)
ー僕は正直、雰囲気でしか分かっていません。(かまどさん)

・オチは特に何も考えずに、ちょっとスペクタクルがあればいい程度で描いた。大学の時に買った美術解剖学の本が役に立ったぜ。
雰囲気で分かってもらえればそれで御の字だと思います。途中途中の描写とか出来事が面白いだけの漫画だと思っているので…

ーもしかしたら今のコロナの時代をイメージしたお話なのかなとも推測したのですが、違ってたら恥ずかしいのでそれは伏せておくとして、(宮川さん)

・多分そうです。というかだいぶ意識してると思う。
空想絵日記というか、仮想世界線エッセイ漫画だと思って描いていた。生理でトラブるシーンは最後の最後まで入れるかどうか迷ったけど(友達には「これ描くの?マジで?」とか言われた)、女性が主人公なら普通に起きることだろうと思って、描いた。本当はもっと色々描きたかった(排泄とか体内構造とか、火事が起きたらどうなるかとか…)けど、短編として収まりが悪くなるのでやめてしまった。

ーこの設定を思いついたら、もっといくらでもスケールを大きくしたりしていろいろ発想できると思うんですが、あえて半径数メートルの描写に留めることによって異様さが保たれているのも良かったです。(恐山さん)

・そうなんですよ…
イメージとしては、「ハリウッド映画っていうよりも、ネットのドキュメンタリー」みたいな作品にしたかった。身近な生活を対象にした方がリアリティ出るし……と言い訳をしているが、
半径数メートルで収めとかないと矛盾やら綻びが大量に出てくるので、そうせざるを得なかったのが正直なところ。


以上、引用させて頂きながら書きました。
読んでくださってありがとうございます〜、銀賞ありがとうございました。いろんな人に自慢して回りたいと思います。

勝見

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