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『モンテッソーリは語る』国際モンテッソーリ協会公認シリーズ第5巻(最終巻)シリーズ完結

こんばんは、営業部の松本です。

『モンテッソーリは語る』を訳された小川直子さんのオンライン講演会が
2月20日(日)にAMI友の会NIPPON主催で開催されます。

今回のnoteは、
『モンテッソーリは語る』の内容を訳者の小川直子さんが端的にまとめてくださった「あとがき」です。

 マリア・モンテッソーリのキャリアは「当たり前を覆す」ということから始まりました。「医者になるのは男だけ」という常識を破って医大に入学、好成績で卒業。その後「障がい児には教育を施す意味が無い」という大人の勝手な思い込みに疑問を呈し、教育される権利を否定された子どもたちへ画期的な教育を実践し、社会の評価を得ました。さらに、「幼児は放っておけば悪い事ばかりする」「幼児は物事の良し悪しがわからないから、一つずつ教えてあげないとロクなことにならない」というような世間で正論とされてきた大人の考え方を実践の場で覆し、たちどころに有名になりました。

 「当たり前を覆す」というメッセージを世界中で熱烈に訴え続けたモンテッソーリがキャリアの終盤になって行ったのがこの本に収められた講演です。この講演が行われた1949年は、世界中で一躍有名になった最初の本「モンテッソーリ・メソッド」が出版されてから四十年です。講演やトレーニングコースの開催のために世界中を駆け回り、第二次世界大戦中のインドでの拘留も乗り越え、戦後改めて祖国に帰り、その歓迎に心が熱くなったというところから講演は始まります。

 本書『モンテッソーリは語る』の第1章はその勢いで、モンテッソーリ自身の教育への熱い思いがほとばしる内容になっています。

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 講演中、モンテッソーリが教育の理論・実践の根幹となるべき事柄を能弁に、かつ超特急のスピードで、聴衆が、きっと自分の猛スピードについてきてくれている、と信じて語っていただろうと想像できます。それは、モンテッソーリ自身が聴衆として集まっている人たちに1章と4章で謝意を述べていることから伺えます。そこに集まっていた人たちは、今までの「当たり前を覆してきた」自分に賛同し、同じ線路の上でモンテッソーリの後ろを必死で追いかけてきた人たちなのではなかったでしょうか。

 実際に第1章の中では、モンテッソーリが巧みに「教育」と「生まれたての赤ちゃん」のイメージを比較するところから始まり、そこから突然、第二次世界大戦中の矛盾に満ちた悲しみ・痛み・憂いに触れています。数年前に終わったばかりの戦争の体験は、聴衆にとっては生々しく、現実そのものであったと想像できます。

 そこでモンテッソーリは問いかけます。
人類に調和は訪れるのか?
その答えはどこにあるのか?
人間が互いの正義を振りかざし、互いの非を咎め、攻撃する。その歴史は繰り返されるのか、それとも・・・?

 この「あとがき」を読まれている皆様は、すでに本書を読み終えられ、内容はしっかり胸に刻まれていることと思いますが、人類に未来はあるのか?と言わんばかりのモンテッソーリは、講演を進め、「モンテッソーリ教育で押さえるべき超重要なポイント」を語っています。

 それぞれの章の中で突出していると思われた点を、歌舞伎であれば「これぞモンテッソーリ!」と大向こうの掛け声がかかっている所だろうと思いながらここに挙げてみようと思います。

第一章
• 子どもたちを「教える」という上から目線で行うのは人類の未来を明るくする教育ではない。教育者が専門家としての知識を携えると同時に、目の前の子どもの姿を曇りない目で見守りながら、支えるという姿勢を貫くことが教育者たる姿勢である。
第二章
• 教育者たる者は、人間の本質から目を逸らしてはならない。浅ましい人間の欲や願望から派生する差別や争いを現実問題として認めると同時に、人間が非常に細かく複雑な網目構造を作り、種としての生存を確かにしている側面を掘り下げることに、平和教育の第一歩がある。

• 子どもたちに平和教育を実際に行うには、児童期が最適である。その実現には、人類が地球上で一チームとして機能している現実を「語る」能力のある大人と「わくわくしながらパン屋さんの社会的な役割について考察する」小学生の探究心が絶妙なバランス関係にある事が鍵となる。
第三章
• 大人になった時に「当たり前」だと思うことは、ほとんど幼少期に自然に身についたような事である。乳幼児は常に今現在の「最先端」を有り難いとも思わずに「当たり前」扱いするが、これこそが文化文明のたゆみない前進を請け負ってくれている子どもたちの隠れた功績である。

• 子どもたちが身につける「当たり前」は、大人から意図的に教えられた事ではなく、自らの経験で心と体に染み込んだことである。大人が自らの欲や勘違いに惑わされず、子どもたちの経験を豊かにすることに一心集中することで、教育の本来の意図が達成される。
第四章
• 平和を実現する一つの方法は、すでに大人になった人同士だけで解決を求めるのではなく、未来の大人チームのメンバーである子どもたちに目を向けることである。大人同士で、互いに「あなたは変わるべきだ」と責め合うのは無意味である。

• 子どもたちは日々成長し、当たり前のように「現代の常識」を身につけながら、将来新発見・新発明をする力を蓄え、発達させている。これを支える事こそが教育者の使命である。

 約1年にわたり、この本の制作チームの一員として、記録された講義の一語一句を紐解いていくという貴重な体験をさせて頂けました事に、心より感謝申し上げます。翻訳に膨大な時間を費やされた深津高子さん、青田恵さんを始め、風鳴舎の皆様に心より御礼申し上げます。
 マリア・モンテッソーリが他界する3年前に渾身の力で残した教育者へのメッセージが一人でも多くの方々の心に届きますように!
                                          小川直子

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