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014.【麻雀最強戦2024#3】因縁の絡まる猛者たち…ぶつかり合いの中で静かに場を圧倒した小さな天才に、ヘラクレスの角は届いたのか?

※この話は麻雀、および麻雀最強戦についてある程度知識のある方にしかわからない話がふんだんに含まれています。ご了承ください。
※長いです。どうかどうかお許しください。

どうも、風茶でございます。

2024年4月14日、麻雀最強戦の第3ラウンド、『因縁の傷跡』が行われました。今回もレポしていきます。

最強戦ファイナルの経験者、前回のファイナル決勝卓のメンバーも含まれた猛者たちが集結しました。


まずはA卓から。

堀慎吾プロ(協会)
石井良樹プロ(連盟)
和久津晶プロ(連盟)
鈴木たろうプロ(最高位戦)


東1局。

いきなり見せ場を作ったのは石井選手。

筒子の3面張の形が完成したところから、1索を暗槓。
後に3面張が埋まると単騎待ちになってしまう形でしたが(解説の渋川難波プロも指摘してました)、彼の二つ名『強引グマイウェイ』を体現するかのような強気の選択を見せます。

なんと嶺上から持ってきたのは雀頭を確定させる七萬。新ドラを放出する形になりましたが、このままリーチとします。

しかし、ここに反応したのが堀選手。

このポンでドラ4が確定。一気に大物手の一向聴になります。

さらにたろう選手も仕掛けて2600点のテンパイ。

いきなり手がぶつかります。

結果は……

ほどなく3筒をツモった石井選手が逃げ切り。
1索の暗槓が入って60符となっていたため、リーチ、ツモ、ドラ1の3翻で2000、4000の満貫となりました。


大物手が決まりましたが、さすがにそこは最強戦。ただで終わりません。

東2局で先ほどあがったばかりの石井選手からたろう選手が5200点を直撃すると、

東3局では堀選手が一発ツモで跳満とし、追い上げを図ったたろう選手が親かぶり。

序盤からバチバチの闘いが繰り広げられます。


東4局。

先制したのは石井選手。

カン8筒でのリーチ。

しかし直後、たろう選手が吸収し、8筒は山からなくなります。

さらにここまで大人しかった和久津選手から3筒の暗槓が入り、場が一気に沸騰します。

解説の渋川プロが「(和久津さんは)7筒引いた時だけ(は危ない)ですね、ホントに」と言った直後のことでした。

無情にもその手元に現れたのは、当たり牌の8筒を押し出してしまう7筒。

これをとらえた石井選手のあがりとなり、早くも南入となります。
ここまで押され気味の和久津選手はなんとか反撃したいところ。


南1局。

和久津選手が4面張の形を抱えます。

タンヤオの崩れる1索引きでしたが、ここで2、4、5、7筒待ちでリーチ。

ここで石井選手がチーで応戦。
チャンタを狙うならあたり牌の7筒が出る形でしたが……

打8筒で見事に放銃回避。白のみあがれる形にとります。

次巡、あたり牌のドラ2筒を持ってきた石井選手はいったん白で迂回。この段階では引き気味に打っていたことがうかがえます。

しかし、数巡後にドラが暗刻になると話が変わったか、役は無いものの持ち前の強引さで押しモードに。この局最後まで石井選手はテンパイをとり切ります。

一方の和久津選手は、

この手をツモれず。

キツイ展開が続きます。

さらに南2局。

たろう選手が3副露を入れてテンパイ。
1索、4索のシャンポンに構えます。

打たれた3索を和久津選手がチーして4、7筒待ちのテンパイ。

さらに他の選手も追いつきます。

東をすでにポンしていた親の石井選手もカン7索を引き入れ三、六萬待ちのテンパイ。

そして。

堀選手も追いつき、全員テンパイとなります。

結果は堀選手が次巡に伍萬をツモ。

ツモ、タンヤオの500、1000の1本場、600、1100のあがりで、大外から全員のテンパイをかわします。

南3局。

和久津選手がドラを引き入れテンパイ。
シャンポン形のため変化を求めダマテンとします。

やがて両面に変わり、リーチ。

たろう選手に追いつかれますが、3索をとらえ、3900点のあがり。やっとこの日初のあがりをものにします。

オーラス。
今回も最強戦の神はドラマを用意しているのか……

配牌で目を引いたのはこの人。

西家で西を暗刻にした石井選手。
すでに役があり、上家の堀選手のアシストも期待できます。2着以上勝ち抜けの予選卓でかなり有利な配牌を手にしたといえるでしょう。

一方、ラス目から追うたろう選手は遠いながらも清一色に向かいます。

しかし、軽い手の石井選手がテンパイ。

たろう選手も鳴きを駆使し、なんとかテンパイにこぎ着けます。

さらに堀選手もテンパイとなり、ラス親の和久津選手がかなり厳しくなったように見えました。

しかし。

なんと和久津選手も仕掛けを入れテンパイ。
カン七萬の待ちですが最後に追いついてみせます。

奇しくも全員萬子待ち。果たして結果は……

ほどなくして堀選手のあたり牌である八萬をたろう選手が掴みます。

ここは待ち替えの打四萬。放銃を回避します。

その直後でした。

ツモの声は最後にテンパイした和久津選手から。

連荘に成功し、意地で次局に望みを繋ぎました。
やはり最強戦、ただでは終わりません。

続くオーラス1本場。

石井選手の配牌にまたしても役牌が暗刻。
早い段階で仕掛けを入れていきます。

堀選手は3巡目で対子の六萬を落とすなど、アシスト気味に打ち回します。

しかし、最初にテンパイしたのはたろう選手。
三色への変化などもあるように見えましたが、このタイミングで石井選手からの直撃を狙ったリーチを敢行します。

ほどなく『サービスセンター』と化した堀選手から2つ目の仕掛けを入れた石井選手もテンパイ。

さらに親の和久津選手も追いついてリーチ。

終わらせたい堀選手と石井選手、一発逆転を狙うたろう選手、連荘したい和久津選手。

それぞれの思惑がぶつかります。

最後はたろう選手が3筒を掴みました。
これは石井選手のあたり牌。

たろう選手、和久津選手の怒涛の追い上げをかわし、石井選手が堀選手に続く2つ目の通過ポジションを守りました。


A卓の結果は堀選手と石井選手の通過。
なんと昨年ファイナルの決勝卓に座った2人が揃って敗退ということになりました。

うーむ、さすがは最強戦、厳しいですね……


この後のインタビューで、たろう選手が最後のリーチについて語りました。

「三色の可能性と直ウラの可能性どちらが高いかと思って、(他家を)止めることも考えて」とのこと。

三色への変化と即リーチの判断、それらを計算しながらの選択であったことを明かしました。
プロの方であれば当たり前なのかもしれませんが、常に卓上を見ながら一手一手の判断していることがわかる一幕でした。


続いてB卓。

内川幸太郎プロ(連盟)
浅井堂岐プロ(協会)
新井啓文プロ(最高位戦)
猿川真寿プロ(連盟)

東1局。
いきなり実況解説席から驚きの声があがります。

浅井選手が7索を引き入れて対子になりましたが、これをツモ切りとします。

これに親の内川選手がチーの声をかけ、混一色に向かいます。

これについて「おおっ!?」と声をあげたのは解説の渋川プロ。

「九萬切ればね、いろいろ…一向聴なんですが(中略)…7索を先に切っておきたかったんじゃないですかね、7索に(ドラの8索などを)くっつける前提みたいな」
「7、7って持っておくとやっぱりドラ表示牌なんで、誰かのリーチとかきた時に切れないんで、先に7索1個切っておいて、八萬、九萬っていう比較的安全なところを残そうっていう…」

と分析。
一見セオリーから外れたように見えた一打でしたが、それを聞いた実況の日吉辰哉プロも、浅井選手が7索を引き入れた時点で対子の形になっていた7索と六萬が場に1枚ずつ見えていることを受けた上で、

「バランスのとれた一打に感じます」

と返していました。

意外な一打にもしっかり意図があって、とても面白い局面だなと感じました。勉強になります。

早くも場がざわつく中、先にテンパイしたのは内川選手。

1索を対面の新井選手からポン。
ここはあえて目に見えて1枚しかない9索単騎で待ち構えます。

しかし直後、狙い通りの手順進行から絶好の3筒を引き入れた浅井選手が三色を完成させてのリーチ。ドラの8索をツモれば跳満からという大物手です。

さらに新井選手も追いつき、追っかけリーチとします。しかし三、六萬は残り全て浅井選手の手の中にあり、山には残っていませんでした。

直後、内川選手が5索を掴みますが、これは手替わりできるため打9索。2、5索のノベタンとします。

いきなり手がぶつかりましたが、結果は…

さらに5索をツモった内川選手のあがり。

浅井選手のあたり牌を2度吸収した上に大物手をかわし、2600オール。
点数以上に大きなあがりとなりました。

続く東1局1本場。

先制リーチは浅井選手。
リーチ、平和、タンヤオが確定した、俗に言う『メンタンピン』の形で攻め立てます。

そこにぶつけていったのが親の内川選手。
奇しくも同じ4、7筒待ちとなります。

今回は浅井選手の勝ちでした。
1300、2600の1本場、1400、2700のあがりで、通過圏内の2着目に上がり、内川選手を追っていきます。

東2局。

親番を迎えた猿川選手がリャンカンの形から有効牌の二萬を引き入れ、6索、6筒のくっつきの一向聴とします。

そこに浅井選手が仕掛けを入れテンパイ。

その後猿川選手があたり牌の9筒を吸収しテンパイ。そのままリーチとします。

再び手がぶつかりましたが、直後でした。

浅井選手が6筒をツモ。300、500ながらリーチを直後に潰す、効果的なあがりとなりました。


東3局は内川選手があがって差を広げ、ここまであがりのない新井選手と猿川選手にとってはどんどんキツい展開となってきます。
このあたりでひとあがり欲しいところ。


東4局。

一盃口を確定させて新井選手がリーチ。
すでに1万点以上離れた通過ラインを果敢に追っていきます。

一方、3着目の猿川選手の手牌がこちら。この時点で両面固定できる6筒が危険でした。

一向聴にとったところ、新井選手からロンの声。

放銃に回った猿川選手は突き放され、かなり厳しいポジションに立たされます。

南1局。

なんとか加点したい猿川選手はカン二萬を引き入れいい形。

そこに待ったをかけたのは…

浅井選手。
広い形から有効牌を引き入れ、一向聴にとります。

そしてほどなく雀頭ができ、そのままリーチ。

さらに自風の北をカンと、一気に攻め立てます。

猿川選手も切りづらい牌を掴んでたまらずオリを選択。
手が入るのに届かない、フラストレーションの溜まる展開となります。


そして局の最終盤に差し掛かり……

なんと浅井選手からツモの声が。
しかも裏が4枚乗り、リーチ、ツモ、北の手が跳満に。一気にトップ目に立ちました。

南2局。

親番を迎えたラス目の猿川選手の配牌はかなり良い手牌。

しかし、またしても先制はできません。

一度切った九萬を再度引き入れた内川選手が、後続を突き放そうとリーチ。

猿川選手もこの親番は大事と、広い形で応戦しますが……

内川選手が残り1枚になっていた4索をあっさりツモ。
猿川選手は親を早々と流され、通過ラインの2着にも26300点差と、かなり厳しい展開となります。

さらに南3局。
3着目の新井選手の親番ですが…

浅井選手がダブ南と2筒をポンしてテンパイ。
その直後…

内川選手から七萬が放たれ、浅井選手のあがり。

この2局、追いかける2人の親番が立て続けに流され、通過圏内の2人にとってかなり有利な展開でオーラスに入ります。

オーラスはかなり重い展開となりましたが…

3着目の新井選手が8索を切ればカン七萬のテンパイを入れますが、これは条件を満たしません。

打八萬とし、テンパイを外します。

しかし、最終的にはテンパイせず、全員ノーテンで終局。

結果、B卓は序盤からリードを奪った浅井選手と内川選手が通過となりました。

チャンスの少ない中でなんとかもがいたものの届かなかった新井選手は落胆を隠せず。

自団体のA1リーグに所属し、BEAST Japanextのオーディションでも菅原プロに肉薄した、確かな実力の持ち主。
次の出場チャンスがあるならば、ぜひともまたチャレンジしていただきたいですね。


……まーた長くなってしまいました。

ここでいったん深呼吸しつつ、あの方にご登場いただきましょう。

……はい、では。


決勝卓に参りましょう。

堀慎吾プロ(A卓1位)
石井良樹プロ(A卓2位)
浅井堂岐プロ(B卓1位)
内川幸太郎プロ(B卓2位)


東1局。
いきなり手がぶつかります。

先制リーチはドラを重ねた石井選手。
1、4筒でのリーチですが、これがこの早い巡目でまさかの残り1枚。

そこに追いついたのが、高目一盃口の手を携えて追っかけリーチの浅井選手。この時点で残り3枚。

しかしお互いツモが効かず、最終手番…

最後に石井選手が掴んだのが高目の伍萬。

リーチ、平和、タンヤオ、一盃口の12000点の放銃となり、石井選手にとってはかなり痛いスタートとなりました。

続く東1局1本場。

追いかけたい石井選手がテンパイ。
カン伍萬でダマテンとします。

しかし次巡にあっさり伍萬をツモ。
500、1000の1本場、600、1100のあがりとなりますが、仮にリーチしていれば一発もついて点数が跳ね上がっていたと思うと、少し悔しいあがりともいえそうです。

東2局。

石井選手が役牌の中を暗刻にして、中、チャンタ、ドラ1の手でダマテン。

發をポンしていた内川選手が追いつきます。

結果は石井選手が7筒を掴み、安目ながら内川選手のあがり。石井選手がかなりキツくなります。

東2局1本場。

先制リーチは浅井選手。
カン二萬を引き入れ絶好のリーチ。

しかし、ここまで大人しかった男がついに目を覚まします。

役牌の發を暗刻にした堀選手がメンホンを携えてリーチ。

さらに一発目で内川選手の手が止まります。

放たれたのは堀選手のあたり牌の1索。

リーチ、一発、發、混一色、裏1の12000点。
大きなあがりで、堀選手がわずかに浅井選手を捲ります。

さらに次局。

堀選手が高目一気通貫のリーチ。
その高目6索が浮いてるのが…

2着目の浅井選手。
この時点で解説席からも「危ない!」という声が飛びます。

その後、ほどなく堀選手がツモ切った4筒を浅井選手がチー。テンパイが入れば出ていくのは浮いていた6索。

これをとらえた堀選手が浅井選手から貴重な直撃をゲット。

リーチ、平和、一気通貫の8000点。独走体勢に入ります。


東4局は内川選手が石井選手から8000点、南1局は堀選手がまたも石井選手から2000点のあがり。

局が進むにつれ、堀選手の優勝が近づいてきます。
勝負に出ざるを得ない石井選手は放銃が増えてかなりキツい展開に……

南2局。

堀選手が仕掛けから混一色のテンパイ。

ほどなくツモ。

着々とライバル達の親を流していきます。
残るは大きく離れたラス目の石井選手の親と、悠々と最後に伏せることができそうな自身の親。


南3局。

親の石井選手はもう役満級のあがりが欲しいところ。大物手に向かって手を進めます。

一方、内川選手はテンパイを入れますが、タンヤオのみでは不満か。
フリテンリーチも視野に入れてダマテンとします。

石井選手から放たれた6筒にはロンの声はかけず。

やがて6筒を自分で引き入れ、2、3、5、8索待ちの4面張でフリテンリーチを敢行します。

しかし、この巡目の深さでテンパイ連荘の欲しい石井選手が宣言牌の2索をポン。一向聴にとり、全押しの『強引グモード』に。

すると、次巡に石井選手の手元に現れたのは、ポンがなければ内川選手が一発でツモるはずだった5索。

結果、内川選手はツモれず、石井選手もテンパイできず。

そして堀選手が最後の最後にテンパイを入れるという、なんとも皮肉な結果になりました。


オーラス。
ここまで堀選手のファイナル進出が濃厚になってきた状況で、最強戦の神は、またドラマを用意しているのか……

2着目の浅井選手の手は、四暗刻か混一色が狙える形。

白を引き入れ、混一色をキープしながらも、暗刻が2つの形になります。

さらに3筒ツモで打2筒。
『逆襲のヘラクレス』が、遠く離れた天才に対し、最後まで鋭く角を伸ばし続けます。

最終盤に引き入れたのは8筒。四暗刻は崩れますが、裏ドラ次第で奇跡の逆転が見える手になりました。この時点で3筒が1枚山にいる状況。

浅井選手にはこのままだと海底がまわってきて、リーチ、一発、海底、ツモ、白、混一色、三暗刻に裏1が乗れば三倍満となり、6000、12000のツモは奇跡の逆転となります。

しかし、ここはツモれず。

天才の背中に届きかけた意地の一振りは、実りませんでした。


この結果、『因縁の傷跡』優勝は堀慎吾選手となりました。
おめでとうございます!

これで堀選手は2年連続のファイナルとなりました。

さすがの強さです。(^^)


決勝卓は数字の上では堀選手の圧勝に見えましたが、個々の意図や強さも随所に見え、とても見応えのある一戦でしたね。


今回も素晴らしい闘いを見せてくださった皆様に拍手を送りましょう。
お疲れ様でした!


それでは。

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