〈鈴々ちゃんと人形の旅⑧〉

「鈴々、君は日田から来たね。君のこともよく知ってるよ。君が佐賀に来たのは巨人が怖かったからだけではない。

 君は昔人形を失くしたことがあったね。それも災害が原因だった。」

「そうなの? 鈴々ちゃん。」

 隆弘くんは驚いて聞いた。

「そうです。私は災害で人形を失くしました。」

「その時の話をみんなにしてあげるとよい。」

「私の家は昔、災害で火事になったの。それで大切にしてたお人形が焼けてしまって。泣く泣くお人形の燃えカスを求来里川に流したの。

 それがきっかけで私は日田や求来里川が嫌いになった。」

 文殊様はこう言った。

「鈴々が佐賀に来たのは偶然ではない。その時川に流した人形は、物質は壊れてしまったが魂は新しい人形に宿り隆弘に買われた。そして君は隆弘と出会って人形と再会したのだ。」

「そうだったの?」

 私は嬉しさが込み上げた。

「何で佐賀かというと、佐賀と日田にも繋がりがあるからだよ。

 君たちの住む川上峡の川は日田の求来里川と繋がっとる。」

「えっ? そうなんですか?」

 隆弘くんは驚いた。

「川上峡の嘉瀬川(かせがわ)を下って、分岐点から多布施川に入る。佐賀の市街地を通る水路を通って佐賀江川(さがえがわ)という人工の川を下り、城原川(じょうばるがわ)、筑後川(ちくごがわ)と合流したら、筑後川を遡っていくと日田に来て、求来里川に辿り着く。」

「そうか。嘉瀬川と求来里川って繋がってたんですね。」

「人生は思わぬ所で繋がっていることがある。予想外の出来事を怖がらず迎え入れると望んでおったものに出会うことが出来る。」

つづく

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