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余白をゆるし、不安と友達になる。

一昨日、友人の翔太と恵比寿で食事をした。

都内の某外資系に勤める翔太は、半年に一度は近況報告をする、仲が良い友人だ。

ブログのファンだと連絡をくれたのが、出逢いのキッカケだったこともあり、わたしは彼から爆笑喝采のギャグセンスを買われているのだと思い、期待に応えられるようにと、とって置きのすべらない話を2,3個準備しては披露する、というのが定番であった。

しかし、これから訪れる生活の大きな変化もあり、一昨日は、とても彼を楽しませられるような精神的な余裕はなかった。「どうしたの?今日は、今まで会った中でも一番不安そうだね」と、翔太は笑った。

「最近こんなことがあってね…」翔太が口火を切る。むかつく上司をやり込めた、という話であった。眼の前のお兄さん、可愛い顔して、なかなかのやり手である。そして、今日は珍しく饒舌だ。

会話は続く。わたしは笑う。童顔の彼に尋ねる。「やり込めるなんて、翔太らしくないじゃない?」長い睫、色白で童顔、白いセーターが良く似合っていた翔太は、まるで天使みたいだと、ずっと思っていた。そんな天使の笑顔の裏側に、ブラックユーモアに溢れる一面を見つけて、わたしはとても驚いた。

「俺はもともと、計算高いよ。でも、今まで、こういう話をする機会もなかったからね。」

そうか。いままでは、翔太を楽しませることに必死で、価値が高い時間を提供することに必死で、彼の新たな一面を探ることを一切しなかった。「あなたはこういう人間だ。だから、○○を求めているに違いない」と、決めつけては、ひたすら供給することに精を出していた。

でも。

冷静に考えると、それはわたしの思い込みだったかもしれない。先入観かもしれない。

「みく、ひとには色々な一面がある。だから、誰かを知るためには、○○な人だと決めつけずに、余白を持つことが大事なんだ。きっと、まだ自分が知らない一面が有る、と。」

ずっと、余白は怖いものだと思っていた。会話が途切れて生まれる一瞬の間。親しい人の知らない顔。空白の予定帳。キャリアを中断させる空白の期間。

明確な目標を定め、それに向かって走ることは得意だったけれども、方向性がぼやけたときは、わたしは決まって、大きなストレスに押しつぶされるというパターンを繰り返した。

でも、これからわたしは会社を離れ、新しい環境に飛び込む。

余白どころか、膨大なる空白が眼の前に広がっていて、わたしは不安におびえていた。

「でも、余白って怖いよ。不確実な予定も、ひとも、将来も、余りにも不安過ぎる」

思いの丈を吐露した。翔太は、笑った。

「でもさ、たとえば、天使じゃなくて、悪魔のおれもなかなか面白いでしょ?」

わたしは頷いた。

「挑戦には、ドキドキと不安が必ずセットで付いてくるじように、余白にも、必ず、可能性と不安がセットで付いてくる。」

「挑戦する道を選んだのならば、みく、そろそろ不安をゆるそう。一生付き合っていく、友達になろう。」

翔太はグラスを上げた。

「不安と、余白。そしてみくの、新たな挑戦に、乾杯を。」


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