労働審判 第三回期日

さて、いよいよ第三回期日を迎えました。基本的に労働審判は3回の調停で結論を出すことになっていますので、これが最後の調停の場になります。3回目までに両者が和解に至らなければ、審判団が審判を下します。要は審判団による和解案の提示です。この和解案に双方が異議を2週間以内に申し立てなければ、それで和解が確定します。もしどちらかが異議を申し立てれば和解は成立しません。その場合は訴訟など次のステップに進むか、あきらめるかになります。私の場合は幸い第三回期日で双方が和解案に合意しましたので、審判団による審判が下る前に双方による合意が成立したことになります。

ここまでは、いろいろと下調べをしていたので流れは理解していました。しかしながら、それ以降のプロセスについてはあまり情報がなかったのでちょっと注意不足でした。実はとても重要であったと後から気づきましたので、ここでシェアしたいと思います。

まず、合意内容に基づき和解文書の作成が行われます。どのようにその和解文書が作成されるかということですが、私はてっきり審判団がその雛型を用意して今回合意した個別の内容を反映して最終的な和解文書をつくるものと理解していました。おそらくそのように作成される場合も多々あるのだと思いますが、私の場合は相手方(会社側)が雛型を用意してきました。今考えれば我々はこの雛型の使用を安易に受け入れるべきではなかったと思っています。なぜなら、基本的にその雛型は相手方の都合のいいような書きぶりで書いてあるからです。合意内容そのものが変わることはありませんが、実は書きようによってニュアンスがだいぶ変わってしまうような内容もあるのです。例えば、申立人にとっては、「解雇は不当であり、したがって無効である」という文言は絶対に必要です。その上で、問題を解決する手段として解決金という解決法とその額に双方が合意したという書きぶりが望ましいです。にもかかわらず、会社側からの雛型にはそのような文言は入っていませんでした。それ以外にも、今回の件を口外しないこと、会社を悪く言わないこと等、口封じ的なことが沢山書いてありました。

次に問題なのは、審判官がその場で読み上げた文章が、そのまま最終的な文書になってしまい、あとから修正してもらえない、ということです。審判官が会社側から受け取った和解文書の雛型を、今回合意した内容を反映させながら読み上げていきます。内容に異議がある場合はその場で発言し、修正してもらわなければなりません。私はそんなことは全く知りませんでした。私はこれまでの仕事上の経験から、このような重要な文書というものを作る時には双方にレビューする時間が十分に与えられると思っていました。ですので、今回の場合も和解文書の案が後から書面で回ってきて、その時に意見が言えるものと信じ込んでいたのです。でも実際は、その場で審判官が読み上げた文書が最終のものだったのです。後日、私は調停による合意内容をより忠実に反映した内容に変更するように修正案を添えて裁判所にお願いしましたが却下されました。裁判所曰く、「審判官が読み上げた文書が最終のものになると弁護士が説明しませんでしたか?」と言っていましたが、私の弁護士からはそんな説明は一切ありませんでした。これには正直いってがっかりしました。なぜなら、今回の労働審判における私の一番の目的は名誉と地位の回復です。すなわち公式な、会社による解雇の撤回です。そのことが明記されていない和解文書では正直納得いきません。和解金さえとれればいいということではないのです。しかしながら、私の弁護士にとっては十分な和解金さえとれれば(すなわち彼にとっては十分な成功報酬)OKということだったのかもしれません。これではクライアントの気持ちを全く理解してない。。。。私は弁護士に、「私は、この文書だと、今回の解雇は有効だと会社は言えるのではないかと思いますが、先生はどう思いますか?」と聞いてみました。弁護士は、「いや、それは難しいと思います。なぜなら審判官は、解雇は無効であるとの心証をもっているとはっきり言っていました。」と言いました。なんともこちらとしては煮え切らないですが、仕方がありません。とても残念です。

また、税金にも注意が必要です。「解決金」って何ですか?実は、明確な定義がありません。人によって違います。私にとってはほぼ100パーセント慰謝料あるいは賠償金です。そのような性格のお金です。長年の勤務の労をねぎらう主旨の「退職金」ではありません。慰謝料であれば税金はかかりません。税務署に何か言われたら、自分が税務署にそう説明すればいいのです。これは会社にひどい目にあわされた事に対する慰謝料だと。ところが会社としてはこの解決金を「退職金」として扱いたいという思いがあります。おそらく税務調査で「この解決金」って何ですか?となったときのリスクヘッジをしたいのだと思います。「退職金」だと税金がたんまりかかります。ですので、百歩譲って「退職金」扱いにするのであれば、誰がその退職金に掛かる所得税を払うのかが問題になります。もし会社が「退職金」あるいは「特別退職金」という名称にこだわるのであれば、それを飲むかわりに所得税は絶対に会社に払わせましょう。つまり、所得税分を上乗せした額を和解金として支払ってもらう、つまり自分の銀行口座に振り込まれる金額で合意文書を作る、ということが非常に重要です。さもなければ相当な金額が所得税として控除されてしまい、実際に受け取る解決金がかなり目減りしてしまいます。

長くなりましたが、最後の最後で嫌な思いをしないためにも、是非心にとめておいてください。

フッツン

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