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未済は、亨る。小狐汔済る。其の尾を濡らす。利するところなし。[64䷿火水未済]

未濟。亨。小狐汔濟。濡其尾。无所利。
「未済」という概念は、川を渡りきっていない状態、すなわち何も成し遂げていない、未完成で未熟な状態を指します。この未熟さは、小狐が川を渡る様子に喩えられています。狐はふさふさした大きな尾を持っていますが、これが水を含むと重くなり、泳ぎにくくなります。成熟した狐は川を渡る際、尾を高く上げることでこの問題を避けますが、小狐はその知恵がなく、岸まであと少しのところで尾を濡らし、渡りきることができません。未熟者はしばしば蛮勇で物事に取り組みますが、成功には至らず、最後の一歩を踏み出すことができません。この小狐の失敗は、知恵や技術不足よりも、自己の未熟さを認識できないことに起因します。「未済は亨る」という言葉は、未完成が完成へと進む過程を示します。自己の未熟さを深く感じ、「これではダメだ」と認識した瞬間から、完成への道が開かれるのです。どれだけ多くの経験を積んでも、自分の未熟さを自覚することは、新たな希望への一歩となるのです。


未済は、亨る。小狐汔(しょうこほとんど)済(わた)る。其の尾を濡らす。利するところなし。
䷾既済卦の逆であり、陰陽が反転している。序卦伝によれば、「物事は完結すべきではない。だから、未済をもって終わりとする」と記されている。易経の六十四卦の中で、未完成の状態を象徴する火水未済卦を最後に置くことには、深い意味がある。完成をもって満足することなく、常に成長し続けるべきだと教えている。
人は未完成であることを認識すると謙虚になり、さらなる努力と成長を目指す。未完成であれば、無限に成長し続けることができる。既済卦は完成の極みを表すが、物事は完成した状態で止まることはない。そこで未済卦を最後に置くことで、易経は物事が常に進化し続けることを示し、教えを締めくくっている。
この卦は不完全であり、悪いように思えるが、王夫之によると、陰陽が整然と分離している点で既済卦に似ており、未来への可能性を秘めている。占いでこの卦が出れば、願いが叶う。小狐が川を渡る途中で尾を濡らして溺れない物語は、事が完了する直前の未完成の状態を示している。未完成であれば、進歩の余地が常に存在する。

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