『東大名誉教授がおしえる!建築でつかむ世界史図鑑』はじめに公開
はじめに 本村凌二
人はだいたい見た目で判断するのではないだろうか。視覚の印象は強烈であるから、物事はしばしば姿や形で思い出される。歴史をふりかえっても、形あるものこそ圧倒的な残像をなしている。
自分の経験をたどれば、はじめてミラノのドゥオモ(大聖堂)を見上げたときの衝撃は忘れがたい。およそこの世のものとは思えない絢爛華美さにあふれ、こんな建物を500年前に建造したイタリア人のデザイン感覚に度肝をぬかれたものだ。性能にすぐれた製品なら日本人にも作れるが、こ