いぬじにはゆるさない 第6話「ヘビちゃん(3)」
一度だけ、ヘビちゃんと『そういう雰囲気』をニアミスした事がある。
友人経由でヘビちゃんの退院祝いのお声がかかり、再会を果たした時の事だ。
そろそろ二次会のカラオケにという流れが出来はじめた頃、翌日も仕事だった私は先に一人でおいとまする事にした。
お店の引き戸を開けると、夜特有の澄んだ空気に混じってタバコの煙が私を襲った。
「帰んの?」
店先の喫煙スペースでタバコの煙を吐いていたのは、飲み会の主役であり、数日前まで肺炎で入院していたハズの男だった。
肺を病んだばかり